「夢」探し

篠原愛紀

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「時」探し

歌 声

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眩しい光に包まれて、番人さんとまた別れてしまった。
最後に見た、番人さんは、光の眩しさに目を瞑っていた。

眩しい……。

――怖いぐらいに。

私も目を瞑ると、あの、狂った歌声が、した。誰かが、泣き声より哀しく歌を歌っていた。

誰かが?

本当は、絵描きさんに一度だけ、聞いて知っているはず。壊れたオルゴールのようなに、同じメロディで。

―――同じ、メロディなのは、同じ、言葉を言っているから。

狂った様に、泣き声より哀しい歌声で、ただ、ただ、愛しい名を呼び続けているんだ。

私は探さなければいけなくて。

誰にも会わない、会えない、場所にいる、あの、哀しい神の元へ。

『     』

『     』

探さなきゃいけなくて。

『     』

まだ、時の番人さえ滅多に会えない存在に。

『     』

狂った様に、同じメロディの、歌声。

『      』

歌っている時は思い出を忘れてるって言ってたのに、

『      』

『時』の神が、狂った様に、同じメロディで、歌う、言葉は、『愛しい人の名前』だから。

泣き声より哀しく壊れたオルゴールみたいに、同じメロディで同じ言葉で。

探さなきゃいけない。一人ぼっちの神……

誰にも会わないなら、自分から会いに行かなきゃって、そう思ってた、神が、
夢のような御伽話の存在がそこに、
私の目の前に、いる。

歌を、歌っている。

狂ったように。泣くのを止めないから、涙に浸かって。

狂った様に歌うから、その音で涙に波紋を広げる。

長く、艶やかな髪は、自身を守るように伸び、青い翼は、その手に抱くものを包むこむように広がっている。

私の存在に気にしないまま、ただ、ただ、泣く神。

その両腕で、必死に包みこむ物は、私たちの生きる大地。

私が探していた真実。
優しいけれど、神々しい存在。

ゆっくり、ゆっくりと、動けず立ち尽くす私を、神はちらりと見た。

嬉しそうに優しそうに哀しそうに微笑みながら、

また、視線を戻して両腕に抱えた愛しい物に頬を擦り付けた。

ただ、ただ、愛しく思いながら。
私と神は、何一つ言葉を交わさず、瞳を見る事もせず踏み込めない距離で、

忘れてしまいそうな細やかな『時』を共有しただけだ。

私がずっとずっと忘れなくても『時』の神はすぐに忘れてしまうだろう。

ただ、それだけの時間。

今、思えば、自分の『時』間を探しながら、素敵な人々と沢山出会った。

けれど、私は誰一人として、名前を知らなかった。

名前を知ると、夢から覚めてしまいそうで、夢から、引きずり出されそうで、怖かった。

でも、皆力強く生きていて、優しい思い出、『時』間があったから、辛くても負けなかった。

私は細やかな『時』間でも忘れない。

薔薇を見れば、夜空を見れば、流星を見れば、絵画を見れば、私はまた思い出すと思うよ。

辛くても、哀しくても、キラキラした宝石箱のように輝いているから。

もちろん、弱くて、怖がりで逃げてしまってばかりのちょっぴり泣き虫な番人さんの物語も。

 いつの間にか泣き声より哀しい声の人の歌声は、聴こえてこなくなっていた。

多分、私の存在なんて既に忘れてると思う。

歌う事に囚われすぎて。

でもあの人は今も、狂った様に歌いながら、名さえ知らない、存在さえ興味のない私たちを守っている。

ただ、ただ、愛しい人との約束の為に。

興味も関心も愛情も尊敬も敬愛も何一つない存在を、狂ったメロディで、愛しい名前を歌いながら、守って生きている。

たった一人で。

凄くすごく、探していた真実は悲しかった。

私、を呼ぶ声がする。

狂った歌声よりはっきりと私の為に私を思って。

り…‥

いり…‥

『愛理!』

自分の名前を思い出した瞬間、夢から覚めた。

気付けば私はベッドの上で。

私が目が覚めた事に、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが、涙を流して、大声で叫んだ。

私も泣いていたけれどこの涙は、何を思って流した涙なんだろう。
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