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日進月歩、進めよ乙女。
日進月歩、進めよ乙女。五
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幹太さんの言葉に、桔梗さんは屈託ない笑顔で応える。
後悔はしてないよ、大丈夫だよ、と。
言葉で伝えてくれない幹太さんの一言ぐらいで短くて。
それを桔梗さんは上手に汲み取り分かっている。
二人は幼馴染みだと言っていたがお互いの事をよく分かっている。
「似てるでしょ? 目元とか指先とか……クルクルの髪の毛とか」
桔梗さんがそう言って赤ちゃんに頬擦りすると、旦那さんの御両親だろうか。
優しそうなおばさんがわっと咳を切ったかのように泣き出しておじさんが肩を抱く。
その横で小百合さんも桔梗さんの御両親もハンカチで目頭を抑えていた。
「やだぁ。皆してそんなに泣かないでよ。泣くのは赤ちゃんだけで良いのよ」
ねーと優しい眼差しで笑う。
その姿は強い母親であると同時に繊細な女性の背中をしていた。
「悪い。もう言わない」
「謝るのも止めて。誰も悪くないよ。今はもう皆幸せでしょ? 晴哉が私たちにこんなに素敵な命を残してくれたんだから。ね、晴一」
ベットの柱にぶら下がっているネームプレイとに、桔梗さんの名前と、赤ちゃんの体重と名前『晴一』と書かれていた。
「うーーん、私が春月堂の家紋から名前をとったから子供にも春ってつけたかったんだけどね、晴哉(せいや) と私の子供なんだから、彼の名前を入れたかったの。だから読みだけはハルにしたよ」
にこにこ笑う桔梗さんには迷いは無かった。
もう彼女の中では決めているのだから、何を言っても揺るがないだろう。
「素敵な、名前です」
思わず涙ぐんだ私を、桔梗さんは抱き締めてくれた。
切なくなる。愛しくて胸を抉られる。
この先、私に待ち構えていることは想像以上に険しく、そして無謀なことかもしれない。
鳥籠から飛び出して、何も分からずにそれでも守って生きていかなくてはいけない。
晴一くんは、小さくて可愛らしかった。
あんなに小さな赤ちゃんでも、欠伸はするしお腹が空いたら泣くし。
私の気持ちは固まった。
晴一くんを見て、その気持ちを決して忘れないようにしようと決意する。
自分の勝手で、宿った命を消したくない。
きっと母に言ったら大反対で、もしかしたらその場で縁側にでも放り投げだされるかもしれない。
だったら、すぐに飛び出して一人で住む場所を探そう。
大きめのバックは何一つ持っていなかったはず。
財布しか入らないような小さなカバンか風呂敷ばかり。仕方なく、学生時代にノートを入れて通学していたカバンに、服を詰め込むだけ詰め込んで、こっそりと家を出よう。
考えは甘いかもしれない。
働き方も知らない私が一人で育てるのは無理かもしれない。
でも、あの家に居たら。絶対にこの子は守れない。階段から落とされて無理やり降ろされたりも考えられる。
病院に行って、まずは診察を受けて、そして母子家庭の援助を受けられるかを病院で聞いてみよう。そう思っていた。
やってみよう。あの人にも頼らずに、優しい人だから迷惑なんてかけられない。
同情で傍に居られたら、きっとこの先、お互いきついし。
決行は、お見合い後だ。
後悔はしてないよ、大丈夫だよ、と。
言葉で伝えてくれない幹太さんの一言ぐらいで短くて。
それを桔梗さんは上手に汲み取り分かっている。
二人は幼馴染みだと言っていたがお互いの事をよく分かっている。
「似てるでしょ? 目元とか指先とか……クルクルの髪の毛とか」
桔梗さんがそう言って赤ちゃんに頬擦りすると、旦那さんの御両親だろうか。
優しそうなおばさんがわっと咳を切ったかのように泣き出しておじさんが肩を抱く。
その横で小百合さんも桔梗さんの御両親もハンカチで目頭を抑えていた。
「やだぁ。皆してそんなに泣かないでよ。泣くのは赤ちゃんだけで良いのよ」
ねーと優しい眼差しで笑う。
その姿は強い母親であると同時に繊細な女性の背中をしていた。
「悪い。もう言わない」
「謝るのも止めて。誰も悪くないよ。今はもう皆幸せでしょ? 晴哉が私たちにこんなに素敵な命を残してくれたんだから。ね、晴一」
ベットの柱にぶら下がっているネームプレイとに、桔梗さんの名前と、赤ちゃんの体重と名前『晴一』と書かれていた。
「うーーん、私が春月堂の家紋から名前をとったから子供にも春ってつけたかったんだけどね、晴哉(せいや) と私の子供なんだから、彼の名前を入れたかったの。だから読みだけはハルにしたよ」
にこにこ笑う桔梗さんには迷いは無かった。
もう彼女の中では決めているのだから、何を言っても揺るがないだろう。
「素敵な、名前です」
思わず涙ぐんだ私を、桔梗さんは抱き締めてくれた。
切なくなる。愛しくて胸を抉られる。
この先、私に待ち構えていることは想像以上に険しく、そして無謀なことかもしれない。
鳥籠から飛び出して、何も分からずにそれでも守って生きていかなくてはいけない。
晴一くんは、小さくて可愛らしかった。
あんなに小さな赤ちゃんでも、欠伸はするしお腹が空いたら泣くし。
私の気持ちは固まった。
晴一くんを見て、その気持ちを決して忘れないようにしようと決意する。
自分の勝手で、宿った命を消したくない。
きっと母に言ったら大反対で、もしかしたらその場で縁側にでも放り投げだされるかもしれない。
だったら、すぐに飛び出して一人で住む場所を探そう。
大きめのバックは何一つ持っていなかったはず。
財布しか入らないような小さなカバンか風呂敷ばかり。仕方なく、学生時代にノートを入れて通学していたカバンに、服を詰め込むだけ詰め込んで、こっそりと家を出よう。
考えは甘いかもしれない。
働き方も知らない私が一人で育てるのは無理かもしれない。
でも、あの家に居たら。絶対にこの子は守れない。階段から落とされて無理やり降ろされたりも考えられる。
病院に行って、まずは診察を受けて、そして母子家庭の援助を受けられるかを病院で聞いてみよう。そう思っていた。
やってみよう。あの人にも頼らずに、優しい人だから迷惑なんてかけられない。
同情で傍に居られたら、きっとこの先、お互いきついし。
決行は、お見合い後だ。
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