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世間知らずの身の程知らず。
世間知らずの身の程知らず。六
しおりを挟む「ふむふむ。旦那さん、身長は何センチ?」
診察室に呼ばれて、第一声が私のことではなくデイビットさんのことだった。
若い女の人で、桔梗さんみたいにはきはきした口調。ちょっと淡々とした感じの話し方で身構えてしまう。
「191センチです」
「ええっ」
思わず出た言葉に、デイビットさんが照れたように後ろ頭を掻く。
褒めてないのに。
「で、貴方は?」
「156です」
そう答えると、『わかった』とすぐにカルテに何か書きだした。
そして四週目ではエコーで赤ちゃんが見えないかもしれないと説明しつつもエコー台に乗せられた。
先ほどトイレでまた検査したら陽性だったから間違いではないのだけど。
「ああ、見えるよ。ちゃんと見えている」
そう言って機械に映し出されたエコーの様子ではどこか分からなかった。
そのまま写真が印刷しれて出てくると、色々と説明が始まって緊張してきた。
あまり上手く頭に入って来なかったけれど、つまりは問題なく順調だということらしい。
エコー写真を見ながら、湧きあがる実感に手が震えてきた。
感動で身震いする私とは反対に、デイビットさんが質問した。
「さっきの身長を聞いた理由はなんですか?」
一瞬考えた先生は私を見る。そして、初妊婦さんに言うのはプレッシャーになるかもしれないが、と前置きしてから教えてくれた。
「臨月になったらレントゲンをとるように書き込んだんだ」
「レントゲンですか?」
「そ。外人の子供ってちょっと大きい場合があるからね。貴方、ちょっと腰が細いし小柄だから。赤ちゃんが産道を通れるか確認するの。ちゃんと開いてくれるなら通らないことは無いと思うんだけど。最悪、帝王切開も視野に入れとかないとね」
帝王切開。
感動で身震いしていた私も、一瞬我に帰ってしまった。
「分かりました。産めるならば、私は大丈夫です」
その言葉に、今度はデイビットさんが私にぎゅうぎゅう抱きついた。
「神よ! 美麗よ! ありがとう!」
神と同列に崇められた私は苦笑しかできなかった。
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