英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

篠原愛紀

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エピローグ。

エピローグ。二

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「お姉ちゃん、起きたよ」
「し。まだ寝かせておきなさい。今日は疲れているんだから」
「赤ちゃん、しわくちゃで可愛いね」

母と美鈴の声で目を覚ますと、空はもう茜色に染まっていた。

長い影が、私とデイビーの繋いだ手にも伸びている。
パイプいすに座り、ベットに突っ伏すように眠っている。
デイビーも徹夜だったのだから仕方ない。ほっとした幸せそうな寝顔だ。

「桜は?」

「今日は看護室預かりで、母とは明日から生活でしょ」

「そうだったね」

「はい、ジュース」

手元に桜が居なくなるのは寂しいけど、今日はぐっすり休んで明日から一緒に頑張ろう。

「幹太さんも桔梗さんも、あと佐和子さんも見に来ても大丈夫かと言っていたよ」
「もちろん」

「ちょっと、桜の様子を見て来てあげるわね」

母が落ち着かない様子で、看護室へ向かう。
美鈴によると、先ほどから何度も眠っている桜を見に行っているらしい。

そんな母をクスクス見送った後、美鈴が蕩けるような顔で言う。

「可愛い名前だね。桜色のほっぺだったしぴったりだよ」
「うん。これしかないって思ってたから」

母が色々言いだす前に名前は二人で決めたかったので美鈴たちは今日初めてその名前を知ったのに、納得した様子だった。
私たちも、ずっとそう決めた名前だ。私たちが出会うきっかけになってくれたあの日の桜から。もしイギリスに帰還したいと桜が言えば、イギリスは二重国籍できるので22歳までに自分で国籍を選択できるらしい。だから、ミドルネームもちゃんと考えている。


「あ、ぬいぐるみ! 持って来たよ。三体飾っていい? それと、銀のスプーンも」

袋から取り出したのは、私が作った殷紅色の着物と真っ赤なリボンのデデイベア、美鈴が作ったカラフルな継ぎ接ぎだらけのデデイベア、そして二周りほど私たちのベアより大きなベアは、デイビー作の可愛い桜柄だ。

同じ型紙から作ったのに、彼だけどうしてこう大きくなったのか分からないけど、三体並ぶと可愛い。桜の居ない代わりにと、私の枕元に並べた。

「美鈴、カメラ持ってきて」
母がノックもなしに部屋を開けて美鈴を呼ぶ。

「んん」

母の扉の開閉の雑な音のせいで、美鈴が居なくなったタイミングと同時にデイビーも起きた。




おはようの意味を込めて鼻にキスをすると、デイビーは唇へキスを落とす。


彼の眼は輝いていて、今にも甘い賭けを言いだしてきそうな幸せそうな表情をしていた。





Fin
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