とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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ニ、結婚×仕込み

ニ、結婚×仕込み②

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「じゃあ、スケジュールを決めましょう。顔合わせはいつにしましょうか」
「そうだなあ。一矢、お前いつ休めそうか」
「えーっと、俺より、先生の方が時間作るの大変でしょ」

 私の意見は全く聞かないで進んでいくのは、もはやホラーでしかない。
 グラスにワインを注いで、踊る姿を眺めながら、踊らされているのは私ではないかと冷静に考えて、少し背中に悪寒が走る。

「ごめん、不安にさせた?」
 ワインをくるくるしていた私を覗き込んできた喬一さんに、私はどんな顔をしていいのか分からず固まる。
 文句なんてないし、素敵な人だし、手掴みできゅうりを食べても引かない人だし、憧れに近い人だけど、でもこんな結婚しましょ、いいですよーって簡単に決まっていいのかな。

 私が最近やり込んでいるゲームよりも簡単に進んでいるように思う。
 現実は小説より奇なりと言ったものだけど、私は今すぐ両頬を抓りたい。
 それかセーブポイントがあるなら、保険でセーブさせてほしい。
 私のぐるぐるした思考回路を覗き込むように、彼の瞳の中に哀れな私が浮かんでいる。

「早く捕まえたくて焦ったけど、まずは一年ぐらいお付き合いしてみる?」
「えーっと」
「じゃあ、半年!」
 なんで短くなってるの。
 困っていたら、お兄ちゃんが不思議そうに喬一さんに言ってはいけない質問をする。

「でも久しぶりに会ったのに、早急ですよね。うちの妹のどこが良かったの?」
「お兄ちゃん!」
「え。君の勉強を見ている時から、この子、綺麗になるなあとは思ってたよ。でもそうだね、生ハムきゅうりかな」
クスッと笑って私に意味ありげな視線を向ける。
終わった。今、この場で、暴露するんだ。脅す気だ。

「生ハムきゅうり?」
「冷蔵庫に何もなかったのに、パパっとツマミを作ってくれるところ。ご両親の躾が良かったんだろうなって動きの端々に品もあるし」
「ひどい! 嫌みでしょ!」

 さっきの足で冷蔵庫を締めたことを、そんな風に言わなくていいのに。
 ケラケラ笑う喬一さんを見て、テーブルの向こうの二人はポカンとしている。


「私の仕事は激務です。命も預かります。なので家に帰ってホッとできる相手が欲しいなって思って、今日の彼女を見たらほぼ一目ぼれみたいなものです。彼女なら毎日一緒にいたいなって」
「聞いた俺の方が、恥ずかしくなってきた」

「喬一くん、娘のことをこんなに分かってくれる若者に出会ったことはなかった。うちの娘をよろしくお願いする。今なら外国車二台くらいつける!」
「お父さん!」

 娘を車と一緒に売る親なんて、親じゃない。
 お父さんが何か言うたびに、喬一さんも笑ってるし。

 お兄ちゃんの家庭教師をしていた時も、確かに夜ご飯食べながら仲良く話してたかもしれないけど、外堀が完全に埋められてしまった。
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