とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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四、蜜月×調理

四、蜜月×調理③

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「腸が煮えくりかえったよ。それ以降、姉を跡取りと認めていない親戚には店の敷居も跨がせていない。うちからの援助は全て絶った。大体古いんだよ。分家とか本家とか」

 だから私たちの式は、誰にも見せないように両家だけで行ったんだ。
 挙式も彼の親戚は来なかったからきっと結婚式自体も知られていないんだろう。
 豪快でさっぱりしたお姉さんだったけど、とても苦労されていたんだと思うと胸が痛む。

「まあ関わらなくていいけど、もし近づいてきたら全力で守るから安心して」
「私も自衛できます」
「と言っても姉の結婚式以降、全く連絡もしていない。今更、すり寄ってこないだろうけど、念のためな」

 そんなに長子であるお姉さんが店を継ぐのは駄目なのかな。能力的にもお姉さんは申し分ないのに。でも確かに、それならば私も許せないな。

 もしうちの兄が会社を継ぐのを、親戚が文句言ってきたら――。私が生ハムきゅうりを持って追い出すより早く、父が塩を投げつける。いや、塩を持った手で殴りかかりそうだ。
 そんな、彼の歴史ある老舗の看板がない私たちみたいな能天気な親子だからこそ、喬一さんは選んでくれたのかもしれない。

「さて、やっぱり一緒にお風呂にはいろっと」
「ええ? 無理ですよ。無理」
「教えたんだから、ご褒美だよ。ほら、行くよ」

 最後のお皿を拭いて、食器棚に並べ終える。夜勤明けだというのが信じられないほど手馴れた手つきで、私をお風呂に浚ってしまった。
 私を守ってくれると言ってくれた彼のために、私ももし親戚が何か言ってきたら、絶対に守って見せると誓う。




 それからお互いのお弁当を作ったり、彼が忙しそうなときは私がご飯を作るようになってから、ちょくちょく一緒にお風呂に入るようになり二人の時間が増えた気がする。

 彼が医学書を読む隣で、私がケーキの本を読む。
 喬一さんに、「これとこれ、甘さ控えめみたいですよ」というと、「ん?」って優しい声で聞き返してくれて、どっちがいいか答えてくれるのが嬉しい。

「最近、すれ違い生活じゃなくなりましたね」
「ああ、日色さんがお子さんの行事で忙しくて、色々交代したり時間を配慮してたから。今は落ち着いたよ」
「ええ、日色先生ってご結婚されてたんですか」
「ん。それで前の職場で出世コースから外されたから、うちに引き抜いた。お子さんが居たら、前の職場ではやっていけなかったから、彼女も喜んできてくれたよ」
「受付の方が、日色さんのことを古女房って言ってました」
「ぷ。女性はすぐに勘繰るよな。ベテランの彼女には助けられたけど、俺は昔から紗矢一筋だし」

 また照れもせずにそんなことを言う。一向に彼の甘い言葉に慣れない。すぐに真っ赤になる頬を押さえながら、料理本をめくった。平常心。平常心だ。

「あ、これ美味しそうです」
「作ろうか?」
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