とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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四、蜜月×調理

四、蜜月×調理⑨

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 兄の家庭教師だった人。私にはいつも優しかった人。
 けれど、冷たくクールだと周りに印象付けるように、壁がある人。
 私が知らないような苦労をしてきただろうに、私には極上に甘い人。

「紗矢の言動ならなんでも嬉しいけどね。その荷物、こっちに置きなよ」
「あ、いや、これは」

 明日貴方に渡したいものです、と言えるわけもなく挙動不審になってしまった。

「ん?」

 駄目だ。私、明日まで誤魔化せる器用さがない。前日なのは申し訳ないけど、徐に紙袋を差し出してしまった。中身を出した方がいいんだろうけど、でも恥ずかしくてそのままテーブルに乗せて喬一さんの方へ押した。

「は、ハッピーバスデー、です。あ、いや、ハッピーバースデー、イブ?」
 何を言ってるのか自分でも、バカな発言だなと思いつつも彼の胸に押し付けた。
「え、俺に?」
 喬一さんの視線が紙袋の中へ向けた後、私の方へ再び向ける。
 その蕩けんばかりの、くしゃくしゃの顔を見たら、私は全身の熱が顔に集中してしまうほど真っ赤になっていた。

「困ったな。家だったら抱きしめられたんだけど。抱きしめていい?」
「いや、他にお客さんもいるから無理です、中身なんですが、本当普通の――」
「いや、自分で開けて確かめたい。ここで開けいい?」
「はい」

 外国では、包装を豪快にびりびり破って開けるのが贈ってくれた人への感謝の意味になるらしいけど、喬一さんは丁寧に開ける。喬一さんの長い指先が丁寧にゆっくり開いていくのが、私には大切にしてくれているようで本当に嬉しかった。

「……可愛いね」
 笑いを含みながら、取り出したお弁当箱を見て彼が言う。

 もうゴムパッキンもよれよれで、使い込んでいるようだったあのお弁当箱。一度、新しいのにしないのかと聞いたら、私があげたものだからと言っていた。

 可愛いお弁当箱の方が、妻がいるとアピールになるとも言っていた。

 高級時計だって、ブランド物のスーツだって、持っている物は全て極上でいいものばかりなのに、だ。

 なので今度は、アンティークショップで見つけた洋書の形をしたお弁当箱。有名な外国のデザイナーの作った人気商品らしい。

「ありがとう。お弁当が楽しみになるね」
「いえ。ほんと細やかですが。あと、もう一個……」

 まだ紙袋の中に大きな包みがある。こっちは私の願望がつまってる。

「これは、重箱?」
「はい。喬一さんの御節が食べたいんです。お姉さんが自分より喬一さんの方が上手って言ってました」

「あの人は全く」
 と言いつつまんざらでもなさそうだ。うちは母が好きな割烹料理屋に頼んでいるので、手作りは初めてだったりする。

「甘いデザートがあるなら頑張って作るけど、どうかな」

「えー、喬一さん甘いもの苦手ですよね」
「紗矢は特別に決まってるだろ」
 お弁当箱を大事そうに持ちながら、こっちを見てにやけている。
 だが大事そうに仕舞いながら、少し残念そうに溜息を吐いた。

「でもちょっと残念だよなあ」
「何が、ですか」
「誕生日だと黙っていて、当日焦った紗矢を見るのも悪くないなと思っていたんだ」
「ええ、酷いです」
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