とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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五、溺愛×賞味

五、溺愛×賞味⑪

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「ええ。麗一さんが息巻いて客間に行ったけど、格好の獲物が来たといじめられるんじゃないかしら」
「助けに行かないのか」
「今は行ったら怒られるの」

 喬一さんは上着を脱ぐと、そのまま客間の方へ向かおうとする。
 どうやら撃退しに行くようだ。

「あの、お仕事は大丈夫ですか?」
「ああ。実家にいると言ったら、一番近い人物に打診してもらようにした。正月を楽しむのは良いのだが、新年早々骨を折る事故は、本人も辛いだろうに」
 どんな怪我の内容だったが知らないけど、依頼内容を聞いただけでげんなりしている様子だ。
 少し仕事モードのぴりっとした緊張感もあったけどそのままで親戚の方に会って大丈夫なのかな。

「あそこは閉店した他店を買い取ってから借金が回らなくなったって聞いたから、足掻くだろうし追い払っておくか」
「麗一さん助けてきて。塩の塊はそこ」
「ああ」

 本当に二袋持って行ったので驚いた。
 姉弟の連携プレイに拍手したい。
 いや感心してる場合ではなく、止めるべきなのかな。

「弟、貴方の前ではあんなこと言うのね。幸せそう」
「幸せです。本当に喬一さんはいつもいつも優しくて、頼りがいもあるし、料理も上手だし、格好いいし」

「うへえ。優しい! 喬一の親戚のおっさんたちへと対応は、塩どころじゃないからね」

 お姉さんが驚いたのち、「台所は寒いから、私の部屋に非難しよっか」と蜜柑の入った袋とお茶を持って立ち上がる。この後、鰻が待っているのに蜜柑なんてとてもじゃないけど食べれない。が、お姉さんに重いものを持たせたくなくて、急いで奪った。

 蜜柑の数も私が制御しなければいけない。

「おい、酔った。水を持ってこい」

 二人で台所から出たら、たぬきみたいなお腹のおじさんが千鳥足でこちらにやってくる。
 頭皮まで真っ赤な茹でタコみたいな人は、お姉さんの表情から見ても、先ほどから怒鳴っているおじさんだとわかる。

「おい、お前、女中を雇ったのか」
「女中じゃありません。こんな可愛らしい子、お客様に決まってるでしょう」

 つんっとそっぽを向くお姉さんの代わりに、曖昧に微笑んでおく。
 お姉さんは私を喬一さんの嫁だとは紹介したくなさそうだった。空気を読んでなるべく下をむくけれどその男性はわざわざ顔を覗き込んできた。

「お前の客ということは、お前ぐらい身分がある人やな。どうや、うちの息子と」
「じろじろ失礼ですよ」
「あの、お水持ってきますね」

 勝手に冷蔵庫を開けて水を探す。すると、喬一さんが戻ってきて、露骨な溜息を吐いていた。

「叔父さん、困ります。勝手に歩き回らないでくれます?」
「実家を歩き回って何が悪いんだ」

「敷居を跨がないでほしいぐらい、あなた方の存在に迷惑してるんです」

 思わず水を注いでいた手が止まる。
 私を甘やかす言葉を吐くその唇から、相手を突き放す冷たい言葉が出るとは思わなかった。私の前とは別人の冷たい彼の言動に、少しひやりとする。

「ごめんな、喬一。ほら、オヤジ、車に乗れよ。ほら」
「離せ。自分の兄を客間で待つだけだ。何が悪い」
「金目当てなんだから、迷惑に決まってるだろ。喬一、車まで手伝ってくれ。昨日からずっと飲んでるんだよ」
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