とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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五、溺愛×賞味

五、溺愛×賞味⑩

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「仕事の電話みたいで、裏の駐車場の方で話してます」
「お医者さまも大変ねえ。家にはちゃんと帰ってきてる?」
「はい。最近は時間があるようです。あ、お茶、私がします。座っててください」

 置いてあった椅子をお姉さんに促して、ポットに水を入れてお湯を沸かす。

 お姉さんは少しだけ放心した様子で私を両肘ついてみている。

「喬一は、私の結婚式後、ほとんど家に帰ってこない子になっちゃったのよね。貴方の家とか、一矢くんが一人暮らしはじめたら彼の家とか。最初、弟は一矢くんが好きなのか不安になったのよ」

「ぶっ。お兄ちゃんは、喬一さんを本当の兄のように思ってるんですよ」

「そうよね。でも私が、結婚について弟の夢を壊したんじゃないかなって後悔しちゃったの。はっきり聞いたら、新婚の私たちに遠慮して一人暮らししようと場所を探していただけらしいけど。あの子、良い子よね、腹黒いし不器用だけど」

 ポットの湯気を眺めながら、少しだけお姉さんは嬉しそうに微笑んでいる。

 お姉さんから見たら、喬一さんは不器用なのかな。私には完璧に見えるのに。

「喬一さんは、お姉さんの結婚式が壊されたことに胸を痛まれてましたよ」

「あー……あれね。でも仕方ないのよ。分家は本家と婚姻関係を結ぶことで安心する部分あるし。私は左京と小さな頃から婚約婚約言われてうんざりして、恋愛結婚したことで、分家は不安になっちゃったみたいでね。今も左京の親は私に難癖つけにきてるの。うざったいたらないわ」

 お姉さんは立ち上がると湯のみを取り出した。お正月用なのか鶴と亀が金箔で飾られてた縁担ぎの湯飲み。それにお茶を注ぎながら、客間から聞こえてくる怒鳴り声に嘆息する。
 いくら気丈にふるまっていても、お正月だしお腹に赤ちゃんもいるのに、気の滅入る人物には疲れてしまうんだろう。

「本家の跡取りになるならば、何かを我慢しないといけない。それが恋愛なんですって。面白いわね。女性が好きな人と結婚できないなんて。長子が全部我慢しないといけないなんて。私は強く戦うわよ。お腹の子が安心して、出会う人、出会う人、好きになれるような環境をね。ほんと悪習は滅びるべき」

 苦労されてるのが嫌というほどわかるので、お姉さんとお兄さんに同情してしまう。

「……私も近づいてくる人がほぼ兄とか父へのすり寄りだったせいか、恋愛できる自信なかったので、喬一さんに出会えて本当に感謝してます。喬一さんが我慢せず、自由にできたのはお姉さんの努力があったと、彼もちゃんと気づいているんですよ」
 お茶のいい香りに目を閉じつつ、二人の苦労を想い、そう伝える。
 お姉さんは、少しほっとした様子で湯飲みを置くと隣に並んだ。

「紗矢さん……私、本当は妹が欲しかったのよ。うんと甘えて頂戴ね」
「へへ。喬一さんに甘えすぎてるのに、お姉さんにも甘えていいのかな」
「全然足らない。もっと俺に甘えてほしい」

 ちょうど台所へ入ってきた喬一さんに、ばっちり聞かれていたらしい。恥ずかしくて一気に耳まで真っ赤になってしまった。

「叔父さんと左京が来てるのか」
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