とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀

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六、過去×余韻

喬一視点①

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 実家は、室町時代から続く呉服店である。

 ただそれだけの事実に、幼少時代振り回されてきた。自分は、会ったこともない祖父の生き写しのような容姿で、そのせいで親戚たちは自分に期待をむけてくる。

 祖父は双子で生まれたようで、妹がいたらしい。祖父もその方も俺が生まれた時にはもうなくなっていたけど、祖父は呉服店の拡大や事業拡大を成し遂げた偉大な人物らしい。
 そのせいで俺への期待は大きかったのだろう。
 双子とはいえ、男である祖父が長子として存在していたことも、姉の長子としての跡取り問題に難色を示していることなのかもしれない。
 両親はそんな親戚の言葉は全て握りつぶしているし、聞いても静かに説教するのだが、全く止まない。
 両親と親戚の言い争いも気持ちが良いものではなかったな。

 着物の帯が体を縛るのが窮屈で、息苦しいと感じていた。
その窮屈な着物を着るとき、堅苦しい行事であることが多かった。

 車の開閉の音と共に、同じように息苦しそうな着物を着た大人たちが集まってくる。
正月と盆、そして呉服屋本店の創立記念日、年三回のこの行事は退屈だった。

 そして姉に聴こえるように浴びせられる、大人たちの自分たちの利益を見通した暴言に強い嫌悪を感じざる得なかった。

 親戚を『分家』と呼ぶようになったのは、姉の結婚式のあとからだ。
 昔から、姉は負けん気が強く男の子と喧嘩しても負け知らず。はねっ返りで可愛げがない上に、自分をよく見せたり取り繕うことをしない不器用な人だった。

 そんな姉が結婚式の日、いつもの口うるさい姿を吹き飛ばし、美しい姿で立っていた。

 はっきり言って、口では勝てない上にいつも母親のようにうるさく、やたら張り合ってきた姉が、初めて女性だったのかと気づいた日。

 埋まらない席を見て、『来ない人の分は、私たちで食べちゃおっか』と麗一さんと豪快に笑っていた。
 姉は俺と違い、家の歴史を重んじ、その歴史のほれ込み、熱心に勉強してきた人だ。
 その人の努力を、その人の人生で一番綺麗な瞬間を、土足で踏み荒らし嘲笑った親戚を、どうしても許したくなかった。

 謝罪してきた人たちも多くいたし、行くなと脅迫されたと告げ口してくる輩もいた。でも、本心からなのか、うちと縁を切るリスクを恐れての謝罪なのか分からず許せなかった。

 許せないものは見なければいい。そう思っていたんだ。
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