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参、被害者で加害者で、今はただの恋に溺れた美形魔王で。
一
しおりを挟む昔の昔、別の世界でのお話。
代々魔王たちは魔力の強い女性と結婚し、子孫を残し魔力を増大させてきた。
蓄積された魔力をすべて浴びて生まれたかのような、最恐にして最高の魔力を持つジャス・セメセメ・アーリーレッド・リバムリ・サリチルは、魔力を持たない平民には絶望的な存在だった。
立ち会った勇者たちは、ことごとく無残にも殺された。
ただ、リーヤー・ル・シャルル率いる聖者たちのパーティーだけは殺されることなく互角に戦う。
人々の希望となったその者たちの中に、カミーユという魔術師がいた。
そのカミーユは魔王に自分たちが勝てないのをいち早く理解し分析した。
知識人であるカミーユは、こうするしかなかったと土下座しながら俺に何度も何度も繰り返し言ったのだ。
何度も、本当に何度もこう言った。
「魔王に惚れ薬を飲ませて、勇者の虜にするしかなかったんだ」
世界一の魔術師と謳われたカミーユは、その絶大的な魔術で惚れ薬を作っていたらしい。
それを魔王に飲ませることに成功し、虜になった魔王を、それでも魔力が増大で封印することもできないと悟り、異世界に飛ばしたと。
「えーっとぉ、このおじさんカミーユどうする? 車に括りつけて都内一周しちゃうかんじぃ?」
放心する俺に変わり、土下座しているカミーユに水をかけている美鈴を、ユージンが止めた。
「こら、老人をいじめるんじゃない」
「だってえ、最悪の権現じゃん」
「俺はどうも惚れ薬だの異世界だの、ピンとこなくてね」
「まあ、かみーゆのおかげでぜんせのせかいは、すくわれたにちがいないしな」
「……合法じゃないショタ、天使か」
ユージンがゲイガーを見て、興奮を抑えられていなかったが、放心している俺にはどうすることもできなかった。
俺が通う都内の端に存在するしがない私立大学。そんなに偏差値も高くなければ、指定校推薦、推薦入学で合格できる。
そんなパッとしない大学内の学食で、パーティーがそろった。
ゲイガーも間宮さんの仕事が終わるまでと俺のところにわざわざ来てくれた。
前世で死線をくぐりぬけたパーティーのメンバーが、そろった。
それなのに俺の口からは半分魂が出てしまっている。
つまり魔王が昨日、俺にあんなに求愛行動をしてきたのは、カミーユの惚れ薬で俺に惚れたまま転生したせいと。
転生した先で、どうにか惚れ薬の無効化を計ったが、魔力を持たず生まれたカミーユは無理だったと。
可能性があるのは、魔力を持って生まれた魔王が自ら消すことぐらい。らしい。
「つまりぃ、あんなに勇者を特別扱いしてたのは、カミーユの惚れ薬のせいでしょ。それでこのまま惚れ薬の効果が切れなかったら、リンリンは一生童貞のまま処女だけ散らすんでしょお」
「俺は、童貞……」
「可哀そうに。でも女性に興味がもてないなら」
「むちゃくちゃあるに決まってる」
「申し訳ございませんっつ」
ああ。これ以上カミーユを土下座させていたら、老人をいじめている大学生って炎上してしまう。
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