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参、被害者で加害者で、今はただの恋に溺れた美形魔王で。
二
しおりを挟むでもつまり俺に魅力がなかろうとあろうと、魔王にはどうでもいいんだ。
こんな半端者を嫁にしたいってあたおかな事を言い出した理由がようやく理解できたよ。
かわいそうに。魔王は完全に被害者じゃないか。
瞳に精気がなく死んではいるものの、それ以外は完璧。女性にモテる要素しかない。
だが前世で惚れ薬を盛られたまま転生し、その薬が効いたまま。平凡で何も取り柄がなくて、マッチングアプリでサクラするような俺にプロポーズなんてあんまりだ。
「なんとかして魔王の目を覚めさせるしかないのか」
「でもお、今の方が幸せは幸せよね。リンリン以外は」
「ゲイガーくん、お兄さんのお膝に座ってくれたらほしいもの買ってあげるよ」
「ほんとうか。おれ、トレーニングセットがほしい」
「うーん。本物のショタの肌、やっばい」
とりあえず、ユージンさんはさっさと都内で行われるというコンサートに向かってほしい。ゲイガーもショタっ子を演じるな。元は二メートルある戦士だろ。
魔王は本当の愛を知らず、俺に惚れたと思い込み、あんな行動をしたのであれば色々と納得がいく。
「大丈夫です。ここまで生きれただけ感謝します。僕はもうわずかの命を惜しまず正直に魔王に話して命を散らします」
「それでリンリンの童貞も散らせるなら、いいかもね」
美鈴もだんだんと話しに飽きてきたらしい。携帯をいじりながら適当に相槌を打ち出した。
だが俺は誰一人、犠牲は出したくない。
「大丈夫だ。俺が魔王に嫌われればいい」
前世と違ってパッとしない俺と同居なんてすれば、三日で飽きてくれるはずだ。
それじゃなければ、わざと風呂に入らず不潔にしてみたり、顔の前で屁をしてみたり、下品で呆れるような行為を沢山すれば、魔王も愛想をつかすはず。
「君は危険じゃないか」
心配そうに聞いてくれるユージンに、俺は胸を叩く。
「前世勇者の俺だ。なんとかなるって」
「もし身の危険を感じたら、うちの神社でかくまってあげるからね。25歳まで」
大丈夫だ。惚れ薬で惚れてくれているとる以上、そうそう魔王が俺に手荒いことをしないとわかった。ゆっくり時間をかけて愛情を枯渇させてもいい。
「でもぉ、心配だから私もリョーナホテルに就職してあげるよ」
「なんで」
「心配だから。リンリンのコネで就職するー」
まあ美鈴はなんだかんだ言って、現在いろんな男を手玉に取ってるし、男の扱いに長けている。
「美怜こそどうなんだ。魔王を自分に惚れさせたら、一生安定だぞ!」
そうだ。美鈴が魔王と恋に落ちれば、俺はお役目ごめん。めでたしめでたし。
「いや、魔王って変態プレイしそうだからむり」
その言葉に、昨日の三角木馬が思い出された。
いや、視界の隅で今にも自殺しそうなカミーユを見て、いまさら怖いなんて言えない。
今は安心させるしかない。
「じゃあやっぱり俺はしばらく魔王と同居するよ。大丈夫。心配いらない」
なんて見栄を張って笑ってみたが、誰一人俺を心配してくれなかった。
美鈴はさっそく誰かとデートに消え、ケイビーとユージンは春を売り、カミーユは安心したのか食堂で呑気にご飯を始めた。
バイト代が振り込まれているので、これでしばらく海外へ逃げたいけど、仕方ない。
魔王も被害者なのだから、俺だけは辛いわけではない。一番つらいのは、どうでもいい俺なんかに惚れ薬で惚れてしまった魔王なのだ。
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