40 / 62
五 届け
五 届け 三
しおりを挟む
そう声を張り上げたのに裏返って震えてしまって、なんだかとっても自分が情けなくてダサすぎる。
でも、なんだか有沢さんの発言は、昨日の部長との夜を全否定するような発言で。
繋いだ手や、部長の煙草の匂い、夜景。
次から次へと泥を塗られた気分だ。
せめて有沢さんが人間的にも信頼できる人ならば、ちょっとは心が揺れたかもしれない。
でも、部長が忙しい人だったのは私はよく知っているし、売上だって常にトップで表彰されていた分私の倍以上努力していたんだから。
「あは。もう橘さんにハマっちゃったんだ。やっぱ経験少ない子は、簡単でいいね。
あ、もしかして産婦人科にピルでも貰いに来たの?」
本当に爽やかに悪びれもせずに毒を吐く。
こっちは苛々させられているのに。
この人もしかして人を傷つけてる自覚がないのかもしれない、一番性質の悪い人なのかも。
――関わりたくないな。
「真、あーゆーのが女の子に優しくない奴だ。女の子が帰りたがってるのに、つまらない話で引き留めてるだろ」
え……?
「うん。みなみせんせいかわいそうだね」
!?
振り返ると、手を繋いで真君と部長が立っていて、こっちを指さしている。
えっ
てか、真くんと有沢さんって会って大丈夫なの?
「えほんやさん、みなみせんせいがこまってるからやめなさいね?」
「――帰るぞ、みなみ」
「えっ? あの、」
検査しに行くとはメールしたけど、なんで此処って分かったんだろう?
なんで、真くんまで?
頭の中は?マークが一杯飛び交い、パニックのまま、真君と部長に手を握られて車が止まっているのが見える駐車場まで誘導された。
真君は有沢さんを『絵本屋さん』と言ってたのは、絵本の納品や営業に来るのをお残りしていたから見ていたんだ。
なのに、何も知らないし、有沢さんも表情一つ変えないなんて。
「余計なことは気にすんな。真は何も知らない。それでいい」
耳元でそう囁くと、部長は助手席のドアを開けてくれた。
真君をチャイルドシートに乗せながら、その隣にはお菓子やら洋服やらが置いてある。
「えんそくようのおかしと、かばんとすいとうもかったよ」
なるほど。お買いものして遅くなってたんだ。
「真、ばーばと先にお風呂入って寝ててくれるか?」
「うん。いいよ」
「みなみ先生送って行くから」
そう言われると、胸がドキッと高鳴る。別に真君だって居てもいいのに。
「そう言えば、私の原因の一つにストレスがあるらしいです」
「うっわ。繊細」
ぷっと笑った後、何故か車をバックさせて、電話をしている有沢さんの前で窓を開けた。
「じゃあ、言っちゃえよ。代わりに俺が言ってもいいけど」
そう言われて、心臓がドキドキしたが部長は私の表情から、何を考えていたのか分かったのだろう。
「あの、真君の耳、塞いでて下さいね」
「ああ」
きょとんとする真君の耳を両手で塞いで貰い、こっちに気づいた、これまたきょとんと見てくる有沢さん目掛けて声を張り上げた。
「女の敵! これからは気易く話しかけないでください!」
「ぶっ」
部長は慌てて横を向いたけど、しっかり聞こえていましたからね
――よくも笑ってくれたな。
でも、なんだか有沢さんの発言は、昨日の部長との夜を全否定するような発言で。
繋いだ手や、部長の煙草の匂い、夜景。
次から次へと泥を塗られた気分だ。
せめて有沢さんが人間的にも信頼できる人ならば、ちょっとは心が揺れたかもしれない。
でも、部長が忙しい人だったのは私はよく知っているし、売上だって常にトップで表彰されていた分私の倍以上努力していたんだから。
「あは。もう橘さんにハマっちゃったんだ。やっぱ経験少ない子は、簡単でいいね。
あ、もしかして産婦人科にピルでも貰いに来たの?」
本当に爽やかに悪びれもせずに毒を吐く。
こっちは苛々させられているのに。
この人もしかして人を傷つけてる自覚がないのかもしれない、一番性質の悪い人なのかも。
――関わりたくないな。
「真、あーゆーのが女の子に優しくない奴だ。女の子が帰りたがってるのに、つまらない話で引き留めてるだろ」
え……?
「うん。みなみせんせいかわいそうだね」
!?
振り返ると、手を繋いで真君と部長が立っていて、こっちを指さしている。
えっ
てか、真くんと有沢さんって会って大丈夫なの?
「えほんやさん、みなみせんせいがこまってるからやめなさいね?」
「――帰るぞ、みなみ」
「えっ? あの、」
検査しに行くとはメールしたけど、なんで此処って分かったんだろう?
なんで、真くんまで?
頭の中は?マークが一杯飛び交い、パニックのまま、真君と部長に手を握られて車が止まっているのが見える駐車場まで誘導された。
真君は有沢さんを『絵本屋さん』と言ってたのは、絵本の納品や営業に来るのをお残りしていたから見ていたんだ。
なのに、何も知らないし、有沢さんも表情一つ変えないなんて。
「余計なことは気にすんな。真は何も知らない。それでいい」
耳元でそう囁くと、部長は助手席のドアを開けてくれた。
真君をチャイルドシートに乗せながら、その隣にはお菓子やら洋服やらが置いてある。
「えんそくようのおかしと、かばんとすいとうもかったよ」
なるほど。お買いものして遅くなってたんだ。
「真、ばーばと先にお風呂入って寝ててくれるか?」
「うん。いいよ」
「みなみ先生送って行くから」
そう言われると、胸がドキッと高鳴る。別に真君だって居てもいいのに。
「そう言えば、私の原因の一つにストレスがあるらしいです」
「うっわ。繊細」
ぷっと笑った後、何故か車をバックさせて、電話をしている有沢さんの前で窓を開けた。
「じゃあ、言っちゃえよ。代わりに俺が言ってもいいけど」
そう言われて、心臓がドキドキしたが部長は私の表情から、何を考えていたのか分かったのだろう。
「あの、真君の耳、塞いでて下さいね」
「ああ」
きょとんとする真君の耳を両手で塞いで貰い、こっちに気づいた、これまたきょとんと見てくる有沢さん目掛けて声を張り上げた。
「女の敵! これからは気易く話しかけないでください!」
「ぶっ」
部長は慌てて横を向いたけど、しっかり聞こえていましたからね
――よくも笑ってくれたな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる