2 / 3
はじめましての、動揺
しおりを挟む
「いま……、なんて?」
俺は首をかしげる。
いましがた言われた言葉を理解できなかったからだ。
そんな俺の視線の先で、異性でありながら親友という存在である――白石 亜里沙は、肩にかかるほどのショートの髪をかきながら、ベッドの上におもむろに立ち上がると、
「だから、嗅がせてあげよっか? って、言ってるんだけど」
どうするの、と。
丈の長いニットの服をす、っとお持ちあげる。
すると、ちらりとオレンジっぽいショーツがみえ――というか、下、はいてなかったのか……。
俺はてっきり、ショートのデニムでも履いているとばかり思っていたのだが、どうやらちがうようで。
長めのシャツの類なのか、ワンピース系の上着なのか、よくわからないような、その際どさに、思わずどきっとしながら「まじか……」と、それだけの言葉を絞り出した。
どうも、脳の処理が鈍い。
脈が速くなり、思考がぼやけ、なんだか、軽めの麻酔でもかけられているかのようだ。
俺がそんな風に、ぼんやりとしてると、
「まじ、なんだけど……。うーん、けどやっぱ、やめよっかなぁ……」
亜里沙はそう言って、少し恥ずかしそうに持ち上げた服を下ろしてしまった。
その様子に、俺は複雑気分になる。
なぜだかはわからないが、彼女は俺の願望をかなえようと、答えようとしてくれていたようで。
いつもどおり。本当にいつもどおりの、親友のような様子で、彼女はそうしてくれたのだ。
だが、俺が変な空気を作ってしまったせいだろう。
それを感じ取った亜里沙は、今になって羞恥心を覚えたかの様子で。
俺はそのことに反省をしつつ、どんな言葉を口にしたらいいのかわからずにいた。
願望を叶えてしまいたい気持ちと。
果たして、本当にそれをしてしまってもいいのだろうかといった気持ちが、ごちゃとしてしまっているのだ。
ちなみに、その願望の内容なのだが――。
『女性のおならのニオイを嗅いでみたい』、というものだった。
ある日を境に、そういった興味を抱いてしまい。
なんとなく、今。
親友である、亜里沙に打ち明けてしまったのだ。
彼女なら、聞いてくれると思ったのだ。
それほどまでに、俺のなかで、彼女に対する信頼は厚く――。
しかし、亜里沙の返答は俺の予想を超え。
予想を超えるほど――あっさりと受け入れようとしてくれていた。
だが、俺の返答しだいでは、それは台無しになってしまうだろう。
チャンスを失ってしまうことになってしまうだろう。
とはいえ、欲望に身を任すのはあ嫌だった。
ぼんやりとした頭で行動を決めてしまうのが、嫌だったのだ。
そこで、俺は呼吸をゆっくり整えてから、いつも通り笑うと、
「わるい。今、何か変だったよな。けど、誰だってびっくりするって……」
俺はそういいながら、激しく振動する脈を落ちつかせながら口を開いた。
「引かれるんじゃないかなって。ちょっとは、覚悟してたんだぜ? それを即答って……。なんだか、すげぇなって……」
「いやぁ、まあそういわれてみれば、そうだけど……。でもさ、人間誰しも、そういう変わったどころがあるもんじゃないの?」
「まあ……。いや、そうか?」
首をかしげる俺。
亜里沙はそんな俺の返事に、「まあ、知らんけど」と苦笑いを浮かべると、
「じゃあ。蘭太は、私に変な部分があったら、引くの?」
そんは、俺への問いに。
「いや、引かないな」
言いながら、俺は気づく。
さっきの、亜里沙の気持ちに。
悩んでいたことが、いかに些細なことだったのかと、今ようやく気づいた。
客観視してみれば、たいしたことないなと、思ったのだ。
そして、すっと肩の荷が下りたような心地で、俺が安堵していると、
「ほら。蘭太だって、即答じゃん」
亜里沙はそう言って柔らかく笑うと、再びニットの裾を持ち上げて訊いた。
「で、どうする? 今、すごく出そうなんだけど」
「おお、まじか……。それなら頼むわ。何でかは、知らないんだけど……、すごく気になるんだ」
俺がそう応えると、亜里沙は愉快そうに笑い、
「じゃあ。ニットの中に、顔入れていいよ」
「まじか……。まじで、いいんだな?」
「いいからいいから。早くしないと、漏れちゃうよー」
にしし、と愉快そうな表情を浮かべる亜里沙。
そんな彼女の言葉に、俺は「わかった」と返事し、頭をニットの中に入れた。
すると、後頭部をその生地の弾力で包まれ、鼻先が、亜里沙の尻の間に収まっていく。
そして、そうなってから、俺は唐突に疑問を覚える。
俺、なにやってるんだろう、と。
ふと、そんなふうに思い、ながら――、
「それじゃあ、でるよー」
亜里沙はそう言って、「ふんっ……」と腹に力を込めた。
そして――、
ぷう~……
と、小さな屁が、彼女の尻から出てきた。
そしてそれは、わずかな量でありながら――思いのほか強烈で。
ほんのりと、脳がくらっとくるような、卵系のニオイが、俺の鼻腔を抜け――。
俺はそんなニオイを感じながら。
なぜか、安心感に似た心地よさを覚えた。
わけはわからないが、落ち着くような、そんなニオイだ。
俺はそんなニオイを、鼻に感じながら――もっとほしい、と。思った。
だが、
「ああ……、だめだ。なんか引っ込んじゃったぁ……」
亜里沙はそう言い、俺の顔をニットの外にだすと、「ねえ」と俺に問うた。
「どんな、ニオイだった?」
「ああ……。なんていうか、安心するっつーのかな……。とにかく、いい感じのニオイだったよ」
「ほんとー? こないだは、毒ガスとかいってたような気がするけど?」
「いやいや、あれは冗談でいったんだって」
首をかしげる亜里沙に、俺が肩をすくめて返事をすると、
「そう、なんだ……。まあ、それだったら、また出そうになったら嗅がせてあげよう、かな?」
「おお。それは、まじで助かるよ……。っていうか……、ありがとうな」
「えへへ。じゃあ、また出そうになったら言うから。楽しみにしてて」
そう言って笑う亜里沙に、俺はもう一度「ありがとう」と礼を言い。
なんだかんだで、俺のわりと一世一代な感じのカミングアウトの瞬間は、平和的に過ぎ去ったのだった――。
俺は首をかしげる。
いましがた言われた言葉を理解できなかったからだ。
そんな俺の視線の先で、異性でありながら親友という存在である――白石 亜里沙は、肩にかかるほどのショートの髪をかきながら、ベッドの上におもむろに立ち上がると、
「だから、嗅がせてあげよっか? って、言ってるんだけど」
どうするの、と。
丈の長いニットの服をす、っとお持ちあげる。
すると、ちらりとオレンジっぽいショーツがみえ――というか、下、はいてなかったのか……。
俺はてっきり、ショートのデニムでも履いているとばかり思っていたのだが、どうやらちがうようで。
長めのシャツの類なのか、ワンピース系の上着なのか、よくわからないような、その際どさに、思わずどきっとしながら「まじか……」と、それだけの言葉を絞り出した。
どうも、脳の処理が鈍い。
脈が速くなり、思考がぼやけ、なんだか、軽めの麻酔でもかけられているかのようだ。
俺がそんな風に、ぼんやりとしてると、
「まじ、なんだけど……。うーん、けどやっぱ、やめよっかなぁ……」
亜里沙はそう言って、少し恥ずかしそうに持ち上げた服を下ろしてしまった。
その様子に、俺は複雑気分になる。
なぜだかはわからないが、彼女は俺の願望をかなえようと、答えようとしてくれていたようで。
いつもどおり。本当にいつもどおりの、親友のような様子で、彼女はそうしてくれたのだ。
だが、俺が変な空気を作ってしまったせいだろう。
それを感じ取った亜里沙は、今になって羞恥心を覚えたかの様子で。
俺はそのことに反省をしつつ、どんな言葉を口にしたらいいのかわからずにいた。
願望を叶えてしまいたい気持ちと。
果たして、本当にそれをしてしまってもいいのだろうかといった気持ちが、ごちゃとしてしまっているのだ。
ちなみに、その願望の内容なのだが――。
『女性のおならのニオイを嗅いでみたい』、というものだった。
ある日を境に、そういった興味を抱いてしまい。
なんとなく、今。
親友である、亜里沙に打ち明けてしまったのだ。
彼女なら、聞いてくれると思ったのだ。
それほどまでに、俺のなかで、彼女に対する信頼は厚く――。
しかし、亜里沙の返答は俺の予想を超え。
予想を超えるほど――あっさりと受け入れようとしてくれていた。
だが、俺の返答しだいでは、それは台無しになってしまうだろう。
チャンスを失ってしまうことになってしまうだろう。
とはいえ、欲望に身を任すのはあ嫌だった。
ぼんやりとした頭で行動を決めてしまうのが、嫌だったのだ。
そこで、俺は呼吸をゆっくり整えてから、いつも通り笑うと、
「わるい。今、何か変だったよな。けど、誰だってびっくりするって……」
俺はそういいながら、激しく振動する脈を落ちつかせながら口を開いた。
「引かれるんじゃないかなって。ちょっとは、覚悟してたんだぜ? それを即答って……。なんだか、すげぇなって……」
「いやぁ、まあそういわれてみれば、そうだけど……。でもさ、人間誰しも、そういう変わったどころがあるもんじゃないの?」
「まあ……。いや、そうか?」
首をかしげる俺。
亜里沙はそんな俺の返事に、「まあ、知らんけど」と苦笑いを浮かべると、
「じゃあ。蘭太は、私に変な部分があったら、引くの?」
そんは、俺への問いに。
「いや、引かないな」
言いながら、俺は気づく。
さっきの、亜里沙の気持ちに。
悩んでいたことが、いかに些細なことだったのかと、今ようやく気づいた。
客観視してみれば、たいしたことないなと、思ったのだ。
そして、すっと肩の荷が下りたような心地で、俺が安堵していると、
「ほら。蘭太だって、即答じゃん」
亜里沙はそう言って柔らかく笑うと、再びニットの裾を持ち上げて訊いた。
「で、どうする? 今、すごく出そうなんだけど」
「おお、まじか……。それなら頼むわ。何でかは、知らないんだけど……、すごく気になるんだ」
俺がそう応えると、亜里沙は愉快そうに笑い、
「じゃあ。ニットの中に、顔入れていいよ」
「まじか……。まじで、いいんだな?」
「いいからいいから。早くしないと、漏れちゃうよー」
にしし、と愉快そうな表情を浮かべる亜里沙。
そんな彼女の言葉に、俺は「わかった」と返事し、頭をニットの中に入れた。
すると、後頭部をその生地の弾力で包まれ、鼻先が、亜里沙の尻の間に収まっていく。
そして、そうなってから、俺は唐突に疑問を覚える。
俺、なにやってるんだろう、と。
ふと、そんなふうに思い、ながら――、
「それじゃあ、でるよー」
亜里沙はそう言って、「ふんっ……」と腹に力を込めた。
そして――、
ぷう~……
と、小さな屁が、彼女の尻から出てきた。
そしてそれは、わずかな量でありながら――思いのほか強烈で。
ほんのりと、脳がくらっとくるような、卵系のニオイが、俺の鼻腔を抜け――。
俺はそんなニオイを感じながら。
なぜか、安心感に似た心地よさを覚えた。
わけはわからないが、落ち着くような、そんなニオイだ。
俺はそんなニオイを、鼻に感じながら――もっとほしい、と。思った。
だが、
「ああ……、だめだ。なんか引っ込んじゃったぁ……」
亜里沙はそう言い、俺の顔をニットの外にだすと、「ねえ」と俺に問うた。
「どんな、ニオイだった?」
「ああ……。なんていうか、安心するっつーのかな……。とにかく、いい感じのニオイだったよ」
「ほんとー? こないだは、毒ガスとかいってたような気がするけど?」
「いやいや、あれは冗談でいったんだって」
首をかしげる亜里沙に、俺が肩をすくめて返事をすると、
「そう、なんだ……。まあ、それだったら、また出そうになったら嗅がせてあげよう、かな?」
「おお。それは、まじで助かるよ……。っていうか……、ありがとうな」
「えへへ。じゃあ、また出そうになったら言うから。楽しみにしてて」
そう言って笑う亜里沙に、俺はもう一度「ありがとう」と礼を言い。
なんだかんだで、俺のわりと一世一代な感じのカミングアウトの瞬間は、平和的に過ぎ去ったのだった――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる