異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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新たな始まり

ダンジョンの奥で見つけたもの

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 一体目のボーンナイトが現れた後、次々にアンデッドが出てきた。
 先を行くアデルとハンクが魔法を駆使してそれらをなぎ倒していく。
 俺の近くにも飛び出てくるやつがいて魔法で跳ねのけた。

 亡者の群れを突破して道なりに進むと開けた場所に出た。
 ホーリーライトの光で大まかな地形を把握することができた。
 高さのある広い空間で真ん中に祭壇のようなものが見受けられる。
 祈りの場あるいは他の何かなのか。

 ハンクは少しだけ立ち止まっていたが、周りを警戒しながら進み始めた。
 彼の動きに合わせて遅れないように後に続く。
 今のところアンデッドの気配は皆無。どこからか水滴の落ちる音が聞こえた。
 
 ハンクは中心部に着いたところで足を止めた。
 彼が指先で示した先を目で追えば朽ち果てた木箱が置かれていた。
 年月の経過が著しい外見。かろうじて原型を留めているようだ。
 ハンクが再び動き出して木箱に近づこうとしたその時だった。
 突然、周囲の空気が冷たくなったような気がした。

「――気をつけろ。何かが現れた」

 ハンクの真剣な声に緊張が高まる。
 前方に影のようなものが浮かび上がり、実体となって像を結んだ。

「うわぁ、リッチ!?」

 アデルと出会ってから初めて悲鳴のような声を聞いた。
 彼女の言葉通りの存在が目の前に現れている。
 一見するとボロ布を纏った骸骨にしか見えないが、ただならぬ気配を発していた。

『我が眠りを妨げる者……その命を以て……償うがいい――』

 リッチは宙に浮いた状態で手にした杖を掲げた。
 直感的に魔法が放たれようとしていると判断した。
 攻撃を回避するべく即座に体勢を整える。
 一方、他の二人はリッチと相対したままだった。

「――冒険者たる者、敵の攻撃を見てから避けるようでは遅い」

 ハンクは誰にともなく口にして、そんな格言があるんだっけなと言った。
 リッチが放った氷塊は当たることなくハンクの魔法で跳ね返されていた。
 反撃体勢に入ったアデルも回避するつもりはないようだ。

「アンデッドは嫌いだから、早く終わらせましょう」

 彼女は心底不快そうに声を発すると前方を見据えた。

「おれたちがこいつを始末する。ボーンナイトが来たら、適当に追い払ってくれ」
「分かりました!」

 リッチは二人に任せることにした。
 彼らが距離を詰めると敵の焦点は向こうに絞られた。
 俺には見向きもしていない。
 ただ、安心できるわけでもなさそうだ。
 二体のボーンナイトがどこからともなく現れて接近している。
 ハンクたちの邪魔をさせるわけにはいかない。   

 俺はファイアボールを放って一体目を吹き飛ばした。
 二体目も同じように狙うが、攻撃を読まれたようで回避された。
 これ以上近づけないためにショートソードを手にして構える。
 
 間合いが離れている間に横目でハンクたちの方に視線を向けた。
 リッチに物理攻撃は効かないため魔法中心で戦っている。
 俺の実力ではリッチを倒せず、与えられた役割に徹するだけ。
 
 ボーンナイトは俺の剣戟を予想するように間合いを詰めていた。
 敵の虚を突くように引きつけたところでファイアボールを放つ。
 近距離で火球を浴びたボーンナイトは粉々に砕けた。

「ふぅ、久しぶりの実戦はけっこうきついな」

 そのまま一息つこうとしたが、また別の場所にボーンナイトが現れた。
 今度も二体同時の出現だった。

「休ませてくれそうにないな」

 再び剣を構えてハンクたちから遠ざけようとしたところだった。
 二人の方からまぶしい光が生じた。

「やったぜ、マルク!」

 ハンクが握りこぶしを突き上げていた。
 リッチを倒せたようで消滅していくところだった。
 
「……あっ、しまった」

 慌てて視線を戻すとボーンナイトはどこにも見当たらなかった。
 遺跡の主がいなくなったことで消えたのだろう。
  
「こんなに魔法を使ったのはいつぶりかしら」 
 
 アデルを見ると多少労力を要したようで手を振って頬に風を送っていた。

「あの木箱に目当てのワインがあるんですか?」
「箱自体はワインを保存するものだから、間違いなさそうよ」
「トラップもなさそうだし、あんたが開けていいぜ」
「ふふっ、それじゃあ」

 アデルがゆっくりと木箱に近づき、俺とハンクは後ろから見守る。

「さあ、開くわよ――」

 彼女は慎重な手つきで蓋を開くと箱の内側に手を入れた。
 おそるおそるといった様子でくすんだ色の瓶を取り出す。

「あった! ワインよ」
「おれの情報は間違いなかったな」

 ハンクは誇らしげな顔をしていた。

「すごいですね。こんなところにワインがあるなんて」
「ここは宗教が禁止される前の修道院みたいだな。ワインの醸造もしてたってところか」 

 信仰が禁じられる前となるとずいぶん大昔に遡ることになる。

「それじゃあ、回収して帰ろうかしら――」

 と、ふいに瓶に亀裂が入った。

「えっ、どうなってるの!?」

 彼女が混乱している間に瓶は無残に砕け散った。
 
「どうやら、どれも同じみたいだな」 

 ハンクが箱から瓶を持ち上げた後、少し指で触れると亀裂が走った。

「そんな……ありえない」

 アデルは気高さをどこかに置き忘れてきたかのように肩を落とした。
 彼女にかけるべき言葉が浮かばず、その背中を見守ることしかできなかった。
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