異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

文字の大きさ
23 / 555
新たな始まり

海辺の町への招待

しおりを挟む
 俺とエスカは長老の頼みを受けてそれぞれの役割をこなすことになった。
 焼肉に近い調理法についてはエスカが解体した残りの豚肉を使いながら、簡単で再現しやすい料理を教えた。
 長老の要望ということもあってか料理番のゴブリンは素直に覚えてくれた。
 ゴブリンに調理法を教えてからキャンプの中心に向かうと解体の仕方を教え終えたエスカも戻ってきたところだった。

「そっちの望みは希望は叶えた。元いた場所に帰ってくれよ」
「うむいいだろう。数日もあれば撤収は完了するじゃろう」

 長老がハンクの要望を受け入れたので今回の件は解決するだろう。
 俺たちは荷物を撤収してシルバーゴブリンのキャンプを後にした。
 帰り道はハンクに先導してもらいつつ、各々でホーリーライトを唱えた。
 もうシルバーゴブリンは敵ではないので、夜の森を明るくしても危険ではない。
 野営地に到着すると篝火が立てられており、冒険者たちは警戒態勢だった。

「エスカ、無事だったのね」

 エリルはエスカに駆け寄ってがっちりと抱きしめた。
 それに続いて他の冒険者たちも集まった。

「逃げてしまって、ごめんなさい」

 冒険者の一人が申し訳なさそうに頭を下げた。
 その話しぶりからエスカと偵察をしていた冒険者だろう。

「ううん、わたしは大丈夫だから、気にしないで――」
「仲間を置いてくなんて冒険者失格だ。二度とすんなよ」

 エスカは明るく振る舞っていたが、ハンクが真面目な様子で言った。
 
「すみません、もうしません……」
「シルバーゴブリンを侮らなかった点は将来性がある。頑張れよ」

 ハンクは少年のように見える冒険者の頭をそっと撫でた。
 その冒険者は無双のハンクと話せて光栄ですと言って涙ぐんでいた。
 冒険者を引退した俺が見ても微笑ましい光景だった。
 そんなこともありながら野営地の夜は更けていった。


 翌日。近くの沢で顔を洗って朝食は冒険者たちに分けてもらった。
 森がすぐ側にあるおかげでさわやかな朝だった。

 俺とハンクは乗ってきた馬で戻り、エスカはギルドの馬車で戻ることになった。
 冒険者たちに別れを告げて二人で来た道を引き返した。
 野営地を離れてしばらくすると目の前には広大な草原が広がっていた。
 往路では必死で気づかなかったものの、大地に抱かれるように壮大な光景で空の青と草原の緑の対比が美しい。

 俺たちの馬は草原の間を伸びる街道を走り続けた。
 馬を休ませながら移動するうちに昼頃にはバラムの町に着いた。
 ギルドの係留場で職員に馬を返してからハンクと二人で俺の店に向かった。

「……あれっ、誰もいない」

 丸一日近く経過しているわけだが、アデルの姿はなかった。

「七色ブドウの仕分けは済んでるみたいだな」

 ハンクが示した容器を見ると七色ブドウが色別に分けられている。
 丁寧な作業であることが窺えるように余分な枝やゴミが取り除かれていた。 

「どこに行ったんですかね」
「おれもよく分からん」

 二人で探すうちに店の机の上に何かが置かれているのを発見した。

「これは……」

 普通の封筒のように見えるが、備えつけられた宝石から魔力の気配を感じる。

「こいつはコードだな。魔法を暗号化した鍵みたいなものだ」

 ハンクはそう話しながら封筒を手に取った。
 封筒の宝石はアデルの髪のような赤い輝きだったが、ハンクが触れて少し経過するとその光が失われた。

「――よしっ、解錠成功」
「これはまたすごい仕組みですね」  
「高位の魔法使いが秘伝を守るのに使ったりするもんだ。アデルはおれに開けさせるつもりだったんだろう」

 ハンクが封を開けると中から一枚の便箋が出てきた。

「なになに……海鮮料理が食べたくなったのでガルフールに行きます。よければ皆さんも来てください」
「アデルに慣れたつもりでしたけど、予想外の行動で驚きました」
「ワインの工程は残ってるのにな」

 俺とハンクは互いの顔を見合わせて笑った。
 興味本位で封筒を手に取ると思いのほか重みを感じた。
 その中身を机に広げてみたら金貨が十枚ほど出てきた。

「さらっと大金を置いてきましたね」
「これが鍵をかけた理由か」
 
 俺は金貨にドキドキしたが、現金持たない派のハンクは興味なさげだった。

「うーん、ガルフールは観光地だからな。おれはワイン作りを進めるぞ」
「一人で行くのもなんだし、エスカ辺りを誘いましょうかね」
「いいんじゃないか。あそこは海鮮が美味いから土産を頼む」

 ハンクは親指を立ててにっこりと笑った。

 
 急遽ガルフール行きが決まったものの、店を連日閉めていたことは無視できない。
 出発するまでの数日間は営業してから行くことにした。
 次の定休日が来るまでの間、ハンクは店の奥でワイン作りを進めていた。

 そんなこんなでガルフールへ行く日を迎えた。
 すでにバラムにいるエスカには声をかけてあり、馬車乗り場で待ち合わせることになっている。
 出発前に店の様子を確認してワイン職人さながらのハンクに挨拶を済ませた。
 
 店を離れて少し歩いたところで見覚えのある人影が道の向こうから歩いてきた。
 水色の長い髪と軽やかな身のこなしに携えた長槍――Bランク冒険者のフランだ。 

「あら、店主。お姉さまはどこですの?」
「アデルはガルフールにいるみたいです。今から出発ですけど、一緒に行きます?」
「もちろんですわ!」
「これから馬車に乗るので、ついてきてください」

 予定にはなかったもののフランが合流した。
 俺は彼女と共に馬車乗り場へ向かった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

処理中です...