異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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王都出立編

王都に向かう旅路

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 俺はジェイクに見送られながら、自分の店を離れた。
 ブルームは先を歩き、方向的に馬車乗り場へ向かっているように思われた。
 
 町の中を通って移動すると、いつもの馬車乗り場に到着した。

「わしが乗ってきた馬車で王都に向かう。途中でいくつか町を経由して、二日ほどで到着する予定だ」

「王都はだいぶ遠い印象だったんですけど、二日で着くんですね」

「この馬が健脚故、移動する速度が並の馬の何割か増しでな」

 ブルームは停めてある馬車に近づくと、繋がれた馬を撫でた。
 その馬は毛並みが整って体格がよく、客車は要人が乗りそうな堅牢な作りだった。

「では、そろそろ出発するとしよう」

「はい」

 先に客車に乗って待っていると、ブルームと護衛らしき人物が入ってきた。
 彼らが席に腰を下ろすと、馬車がゆっくりと動き出した。

 俺は何気なく、窓から見える景色に目を向けた。
 生まれ育ったバラムを離れ、王都に向かうことを考えると感慨深いものがあった。

 馬車が町を出て街道に入る辺りで、見慣れた人たちの姿が目に入った。

「おーい、マルク。王都に行っても元気でやれよ」

「マルクさーん、また一緒に焼肉を食べましょうー」

「王都で腕を上げて帰ることを楽しみにしているわ」

 ハンク、エスカ、アデルの三人が並んで、見送ってくれていた。

 俺は馬車の窓を上げると、左右に大きく手を振った。

「行ってきます! みんな、元気にしていてください」

「またなー」

「マルクさんもお元気で」

 ハンクとエスカは声を上げて、アデルは微笑みを浮かべて手を振ってくれていた。

 俺はしばらく手を振った後、三人の姿が小さくなったところで窓を下げた。
 思わず、涙がこぼれてしまいそうだったが、ブルームと素性を知らない人物がいるため、泣いてしまわないようにした。

「……いいものだね。大臣に料理を出した後は必ず帰れるようにするから、その点は安心してくれたまえ」

「……はい」

「そういえば、紹介するのが遅くなったが、彼女はわしの護衛のリリア。国内の治安やモンスターの状況を考えれば、護衛などなくともよいだろうが、近頃は暗殺機構の情報も入っておってな」

「マルク殿。私はリリアと申します。ブルーム様の護衛ですが、道中で危険が迫った際はお助けします」   

 リリアは目深に被っていたフードを外して、こちらに挨拶をした。
 彼女は金色の髪を一本に結んでおり、凛とした面持ちと碧眼が印象的だった。
 腰に剣を携えており、その雰囲気から腕は立つように感じられた。

「よろしくお願いします。俺は冒険者でしたけど、今は現役ではないので、何かあった時は頼みます」

「はい、かしこまりました」

 リリアは取っつきにくい性格かと思ったが、柔らかい笑顔で頷いた。

「よしっ、挨拶は済んだな」

「ところで、何とお呼びしたらよかったですか?」

「大臣を呼び捨てにされては困るが、わしは城勤めのしがない年寄りだ。好きに呼んでくれて構わぬ」

「では、ブルームとお呼びしても」

「うむ、問題なかろう」

 王都までは長旅なので、ブルームが偉ぶらないでいてくれるのは安心材料だった。
 三人の会話が終わると、馬車の中は静かになった。 
 窓の外を街道沿いの景色が流れていく。

「今日は天気がよいから、馬車は順調に進みそうだ」

 ブルームは窓の外を見て、独り言のように呟いた。
 俺も同じようにいい天気だと思った。



 馬車は快調に進み、時刻は昼頃になっていた。
 時折、ブルームやリリアと会話をしながら馬車に揺られていると、どこかの町の近くで馬車が停止した。

「――ブルーム様。馬を休ませるために、しばしお時間を頂きます」

「そうか、その間に我らは昼食でも取るとするか」

 ブルームとリリアが馬車を下り、俺も続けて下りた。
 外に出ると、吹き抜ける風が心地よく感じた。

「バラムへ向かう時に通ったが、ここはトランの町だな」

「あまり来る機会がないので、印象が薄いところです」

「のどかでいいところだが、食事ができるのは一軒しかないぞ」

「そこで昼食ですか」

「そうだ」

 ブルームとリリアが歩き出したので、二人についていく。
 人気のまばらな通りを進むと、一軒の食堂が目に入った。

「可もなく不可もなくといった店だが、他に選択肢はないのだ」

 ブルームが残念そうに言った気がしたものの、聞き直すほどではなかった。

 それから、彼が店の扉を開いて中に入り、俺とリリアも店に入った。

 素朴な雰囲気の食堂だった。
 店主は二十代半ばぐらいの男で、一人でこの店を切り盛りしているようだ。

 彼はいらっしゃいませとは言ったが、席の案内はなかった。
 空いている席に適当に座ればいいということのようだ。

「あそこの席にしよう」

 ブルームが窓際の席を指して言った。

 俺とリリアはそれに同意して、三人でそれぞれの椅子に座った。
 トランは静かな農村といった雰囲気で、窓の向こうに畑がちらほらと見える。

「……どうも、ここは地元客が中心のようで、我が道を行くような様式なのだ」

 ブルームは声を潜めて話し始めた。

「そういえば、注文を聞きに来ませんね」

「注文の仕方が分からぬから、何が出せるかたずねてみたが、日替わりでパスタを出しているだけだと」

 ブルームの様子から、この店の料理はパッとしないことが予想された。
 さすがにパスタがまずいということはないだろう。

 俺とブルームの会話が途切れたところで、リリアが立ち上がった。

「私が注文してきます」

「あっ、お願いします」

 リリアが話しかけると、店主は頷いて調理を開始した。

 たどたどしい手つきが目に入り、パスタの仕上がりに一抹の不安を覚えた。
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