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王都出立編
和やかな夕食
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「どれどれ……ジャガイモ料理が多いか」
メニューを眺めてからの第一印象がそれだった。
他の料理名も書かれているが、ジャガイモを使ったものが多いようだ。
記憶の中にある日本の料理店に比べると種類が少なく感じられるが、ランス王国の料理店では一般的である。
「王都では見かけない料理もあります。コロッケとジャガイモのグラタンは知っていますが、刻んだジャガイモの卵とじというのはどんな料理か気になりますな」
「わたしはどうしようかなー。珍しい料理よりも無難な方にするか、あえて冒険してみるか」
エドワルドとエステルは興味津々な様子で、メニューを見ていた。
ちなみに俺は昼に食べすぎてしまった反省もあるので、軽めの料理にしようと思っている。
「俺は決まったので、二人とも決まったら注文しましょうか」
「私も決まりました」
「うん、わたしもいいよ」
「それじゃあ、店の人を呼びますか。すいませーん」
俺が呼びかけると、先ほどの女が呼びかけに反応した。
店内はそこまで広くないので、給仕は彼女が一人で切り盛りしているようだ。
「はいはい、注文は決まった?」
「えーと、俺はポトフとパンを」
「私はジャガイモの卵とじとポトフを一つずつ。この卵とじの量はどれぐらいですか?」
「わりとボリュームがあるから、パンやパスタを頼むと多いだろうね」
「それでは、最初に言った二つでお願いします」
今日は移動のみで運動をする時間もなかったので、エドワルドは普通の量で足りるようだ。
「はいね。そこのお嬢ちゃんは?」
「わたしもポトフを一つ、それから……コロッケってどんな食べ物なの?」
エステルはコロッケを見たことがないようだ。
質問を受けた女はどう答えるべきかと、考えこむような表情を見せた。
「ジャガイモとひき肉を団子にしたものに、衣をつけて揚げた料理だね。食感がサクサクして美味しいと思うね」
「じゃあ、コロッケを一つ」
「ありがとね。うちはファルガ周辺で採れた新鮮な野菜を使っているから、どの料理も美味しいと思うよ」
女は注文を受けた後、厨房の方へと歩いていった。
「そういえば、ファルガに着く頃は日が暮れかけていましたけど、周りに畑が多かった気がしますね」
「農産物が豊かとは素晴らしい。王都は物流が充実していますが、畑は近くにありません」
「エステルの故郷はどうですか?」
せっかくなので、エステルにも話を振ってみた。
なるべく、三人で会話をしたいと思った。
「わたしの故郷も畑はけっこうあるかな。ここよりも田舎だから、土地はたくさんあるし」
「へえ、なるほど。俺の地元のバラムだと、郊外に出ないと畑はないですね」
「その土地土地によって、違いがありますな」
エドワルドが愉快そうに言った。
「王都に行く前に色んなところに行きましたけど、その土地によって料理の種類も変わりますよ」
「ほう、それは興味深い」
俺たちは料理が出てくるまでの間、会話を楽しみながら待った。
しばらくして、三人が注文した料理がテーブルの上に揃った。
俺の前には湯気の上がるポトフが置かれている。
パンはライ麦パンのような見た目で、添えられたナイフで切り分けると小麦の美味しそうな匂いがした。
「それじゃあ、食べましょうか」
俺たちはそれぞれの料理に手を伸ばした。
スプーンとフォークを使いながら、スープを飲みつつぶつ切りの具を口に運ぶ。
ごつごつした具が入っていても煮こみ野菜が中心なので、消化の負担になりにくいだろうと考えていた。
薄い色のスープはコンソメ風味で飲みやすく、肉や野菜などの具材は適度な柔らかさで味がついており、ほどよいしょっぱさを感じた。
ちなみにこの世界にコンソメスープの素は存在しないと思うので、調味料を組み合わせた味であることが想像できる。
食事を進めながら、正面に座るエドワルドの様子が目に入った。
器用にナイフとフォークを使って、ジャガイモの卵とじを食べている。
日本の記憶がベースの俺からすれば、卵とじ=親子丼のような料理を想像していたが、丸く整えられたオムレツのような形をしていた。
そして、斜め前に座るエステルはコロッケを興味深そうに見ながら、ゆっくりと切り分けて食べ進めている。
お腹が空いていたようだが、初めて目にする料理を味わっているように見えた。
二人の様子に目を向けた後、自分の料理に意識を向けた。
ポトフはそれなりボリュームがあったものの、食べやすい味つけだったため、瞬く間に減っていった。
煮こみ料理とパンの相性は良好で、パンもどんどん食べ進んだ。
「――というわけで、完食です」
「私も食べ終わりました」
エドワルドも同じタイミングで食事が済んだようだ。
「もう少しで食べ終わるから」
エステルはポトフのスープを口に運びながら、一口ごとに堪能しているようだった。
その後、少しの時間差でエステルも食べ終わった。
俺たちは食後も会話を楽しんだ後、会計を済ませて店を出た。
「一人当たり銀貨一枚とは少しお高めですな」
「地域密着型の食堂に見えたんですけど、旅人や行商人向けの値段ですね」
エドワルドの意見に同意できる部分はあるものの、うちの店も同じぐらいの値段で焼肉を出しているので、この話題を深掘りするのはやめておこう。
「二つとも美味しかったし、満足満足ー」
エステルは上機嫌な様子だった。
ポトフとコロッケがお気に召したらしい。
「はははっ、値段が気になっただけで、もちろん味はよかったです」
「それならよかった」
俺たちは並んで話しながら、宿屋に向かった。
メニューを眺めてからの第一印象がそれだった。
他の料理名も書かれているが、ジャガイモを使ったものが多いようだ。
記憶の中にある日本の料理店に比べると種類が少なく感じられるが、ランス王国の料理店では一般的である。
「王都では見かけない料理もあります。コロッケとジャガイモのグラタンは知っていますが、刻んだジャガイモの卵とじというのはどんな料理か気になりますな」
「わたしはどうしようかなー。珍しい料理よりも無難な方にするか、あえて冒険してみるか」
エドワルドとエステルは興味津々な様子で、メニューを見ていた。
ちなみに俺は昼に食べすぎてしまった反省もあるので、軽めの料理にしようと思っている。
「俺は決まったので、二人とも決まったら注文しましょうか」
「私も決まりました」
「うん、わたしもいいよ」
「それじゃあ、店の人を呼びますか。すいませーん」
俺が呼びかけると、先ほどの女が呼びかけに反応した。
店内はそこまで広くないので、給仕は彼女が一人で切り盛りしているようだ。
「はいはい、注文は決まった?」
「えーと、俺はポトフとパンを」
「私はジャガイモの卵とじとポトフを一つずつ。この卵とじの量はどれぐらいですか?」
「わりとボリュームがあるから、パンやパスタを頼むと多いだろうね」
「それでは、最初に言った二つでお願いします」
今日は移動のみで運動をする時間もなかったので、エドワルドは普通の量で足りるようだ。
「はいね。そこのお嬢ちゃんは?」
「わたしもポトフを一つ、それから……コロッケってどんな食べ物なの?」
エステルはコロッケを見たことがないようだ。
質問を受けた女はどう答えるべきかと、考えこむような表情を見せた。
「ジャガイモとひき肉を団子にしたものに、衣をつけて揚げた料理だね。食感がサクサクして美味しいと思うね」
「じゃあ、コロッケを一つ」
「ありがとね。うちはファルガ周辺で採れた新鮮な野菜を使っているから、どの料理も美味しいと思うよ」
女は注文を受けた後、厨房の方へと歩いていった。
「そういえば、ファルガに着く頃は日が暮れかけていましたけど、周りに畑が多かった気がしますね」
「農産物が豊かとは素晴らしい。王都は物流が充実していますが、畑は近くにありません」
「エステルの故郷はどうですか?」
せっかくなので、エステルにも話を振ってみた。
なるべく、三人で会話をしたいと思った。
「わたしの故郷も畑はけっこうあるかな。ここよりも田舎だから、土地はたくさんあるし」
「へえ、なるほど。俺の地元のバラムだと、郊外に出ないと畑はないですね」
「その土地土地によって、違いがありますな」
エドワルドが愉快そうに言った。
「王都に行く前に色んなところに行きましたけど、その土地によって料理の種類も変わりますよ」
「ほう、それは興味深い」
俺たちは料理が出てくるまでの間、会話を楽しみながら待った。
しばらくして、三人が注文した料理がテーブルの上に揃った。
俺の前には湯気の上がるポトフが置かれている。
パンはライ麦パンのような見た目で、添えられたナイフで切り分けると小麦の美味しそうな匂いがした。
「それじゃあ、食べましょうか」
俺たちはそれぞれの料理に手を伸ばした。
スプーンとフォークを使いながら、スープを飲みつつぶつ切りの具を口に運ぶ。
ごつごつした具が入っていても煮こみ野菜が中心なので、消化の負担になりにくいだろうと考えていた。
薄い色のスープはコンソメ風味で飲みやすく、肉や野菜などの具材は適度な柔らかさで味がついており、ほどよいしょっぱさを感じた。
ちなみにこの世界にコンソメスープの素は存在しないと思うので、調味料を組み合わせた味であることが想像できる。
食事を進めながら、正面に座るエドワルドの様子が目に入った。
器用にナイフとフォークを使って、ジャガイモの卵とじを食べている。
日本の記憶がベースの俺からすれば、卵とじ=親子丼のような料理を想像していたが、丸く整えられたオムレツのような形をしていた。
そして、斜め前に座るエステルはコロッケを興味深そうに見ながら、ゆっくりと切り分けて食べ進めている。
お腹が空いていたようだが、初めて目にする料理を味わっているように見えた。
二人の様子に目を向けた後、自分の料理に意識を向けた。
ポトフはそれなりボリュームがあったものの、食べやすい味つけだったため、瞬く間に減っていった。
煮こみ料理とパンの相性は良好で、パンもどんどん食べ進んだ。
「――というわけで、完食です」
「私も食べ終わりました」
エドワルドも同じタイミングで食事が済んだようだ。
「もう少しで食べ終わるから」
エステルはポトフのスープを口に運びながら、一口ごとに堪能しているようだった。
その後、少しの時間差でエステルも食べ終わった。
俺たちは食後も会話を楽しんだ後、会計を済ませて店を出た。
「一人当たり銀貨一枚とは少しお高めですな」
「地域密着型の食堂に見えたんですけど、旅人や行商人向けの値段ですね」
エドワルドの意見に同意できる部分はあるものの、うちの店も同じぐらいの値段で焼肉を出しているので、この話題を深掘りするのはやめておこう。
「二つとも美味しかったし、満足満足ー」
エステルは上機嫌な様子だった。
ポトフとコロッケがお気に召したらしい。
「はははっ、値段が気になっただけで、もちろん味はよかったです」
「それならよかった」
俺たちは並んで話しながら、宿屋に向かった。
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