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ダークエルフの帰還
ヒイラギへの来訪
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今後に向けた話し合いを経て翌朝を迎えた。
早朝は移動に向かない寒さであるということで、日が高くなってから馬車に乗ってカルンの街を出発した。
クリストフが御者を担うことが多かったため、今度はリリアが手綱を握っている。
移動を開始して少し経った後、遠くから見たカルンの街は白い雪と歴史を感じさせる建物が組み合わさり、美しさと荘厳さを醸し出していた。
昨日からは粉雪が舞う程度の状況が続いており、雪の心配は必要がないようだ。
トローサよりも標高が低いことで、積もる雪の量が少ないことも幸いしている。
周辺の地理に明るい人に宿屋で確認したところ、目的地までは馬車を使えば半日もかからない距離ということが分かった。
そこへ行くつもりだと伝えても止められるようなことはなく、ヒイラギは危険なところではないと予想できた。
街道を移動する馬車に揺られながら、ヒイラギについて思いを馳せる。
リーダー的な役割に人がミズキのように接しやすい人であればいいのだが、実際に会うまでどうなるか分からない。
彼らが日本人に近い外見ということで親近感を抱く一方で、実際に力を貸してくれるかどうかは別である。
以前はアデルが仲介役を担ってくれたので、ミズキと親しくなるのにあまり時間はかからなかった。
しかし、今回はほぼゼロからの始まりなのだ。
ミズキやアカネが同行しているのならともかく、 サクラギの縁者は一人もいない。
いきなり訪ねていって力を貸してくれということが無茶なのは分かっている。
何かヒイラギの人たちに利することができるのなら、それを条件に力を貸してもうらことはできるかもしれない。
彼らがどんな生活を送っていて、何を提供すれば喜ぶのか。
次第にそんなことを考えるようになっていた。
移動の最中、俺を含めて三人とも口数は多くなかった。
きっと自分と同じようにこの後のことを考えていたのだろう。
やがて馬車が停まり、客車の扉が開いてリリアが顔を見せた。
「ヒイラギの入り口に到着しました」
外では少し雪が降っていたので、金色の髪に雪粒が見えた。
御者をするのは寒かったはずだが、リリアに不満げな様子はなかった。
「お疲れ様です」
「リリア、ありがとう」
俺とクリストフはいたわりの言葉をかけて、順番に下車した。
少し遅れてラーニャが出てきた。
考えなければいけないことが増えたせいか、彼女の顔には疲れの色がにじんでいた。
四人が揃ったところでヒイラギの特区へと向かう。
エスタンブルクという国の中にある、サクラギに与えられた地域。
どんなふうになっているのか、全く想像できなかった。
地図では線で括られているだけで、詳しいことは何も分かっていない。
馬車を下りた場所から雪の残る街道を歩く。
今日は日差しが出ているため、そこまで寒さは感じない。
「そろそろ、ヒイラギだと分かる目印があってもいい頃だけれど……」
いくらか進んだ後、手にした地図を眺めていたクリストフが口を開いた。
道沿いに背の高い針葉樹林が生えていることで、周囲の状況を確認しづらいことも影響しているようだ。
四人で進み続けると林に切れ目があり、進行方向の視界が開けていた。
そこで思わず目を奪われるような建物が見えた。
「――おおっ、城だ!」
サクラギにあるものほど大きくはないものの、和風な外観の城が建っている。
雪に囲まれた景色に佇むそれは完成度が高く、絵になるような光景だった。
その一方で異世界――さらに言えば異国にあることで何とも不思議な感覚を抱かせる。
「サクラギにも同じような城があるんですよ」
「なるほど、サクラギの城はああいったかたちなのですね」
「ふーむ、興味深い。あれで守りは大丈夫なのかな」
ランス王国の精鋭二人は城に釘づけになっており、俺からの説明に何度か頷いた。
彼らの立場を思えば、自国の王城と比較してしまう気持ちも理解できる。
小さいながらも立派な城に感動しながらさらに歩を進める。
徐々に城との距離が近づいたところで、城の近くで待機している兵士がこちらの気配に気づいた。
二人の兵士が和風の装備を身につけていることで、彼らがヒイラギに属していることが判断できる。
この距離では表情まで読み取れないものの、警戒の色が見て取れた。
得体の知れない者が近づけば当然の反応と言えるだろう。
用事がなければ身構えた状態の兵士に近づきたくはないが、助力を頼むためには無視するわけにもいかない。
四人で会話ができる距離まで近づくと、兵士の一人が鋭い眼光を向けながら話しかけてきた。
「――ここはヒイラギの敷地内。おぬしたちは何用か?」
「実は責任者の方に頼みたいことがあるんですけど……」
こちらの申し出を聞いた後、兵士は固い表情でもう一人の兵士に声をかけた。
少し距離があるので、二人の会話の内容は聞き取れない。
彼らは怪訝そうな様子を変えることはなかったが、話し合いの後に片方の兵士がこの場を離れてどこかに向かった。
「マルクくん、あの感じだと誰かを呼んでくるみたいだ」
「俺たちを追い払うつもりなのか、対話に応じるのか読めませんね」
「ここは待つとしよう。案外、前向きに応じてくれることだってあるさ」
クリストフは楽観的な見解を示した後、涼しげな笑みを浮かべた。
彼の視線は兵士が離れていった方向に向いていた。
作者解説
ヒイラギは剣術指南役を赴任させるかわりにエスタンブルク内に設けられたサクラギの特区のようなものです。
鉱物の採掘、その他資源の収集を目的に活動しています。
早朝は移動に向かない寒さであるということで、日が高くなってから馬車に乗ってカルンの街を出発した。
クリストフが御者を担うことが多かったため、今度はリリアが手綱を握っている。
移動を開始して少し経った後、遠くから見たカルンの街は白い雪と歴史を感じさせる建物が組み合わさり、美しさと荘厳さを醸し出していた。
昨日からは粉雪が舞う程度の状況が続いており、雪の心配は必要がないようだ。
トローサよりも標高が低いことで、積もる雪の量が少ないことも幸いしている。
周辺の地理に明るい人に宿屋で確認したところ、目的地までは馬車を使えば半日もかからない距離ということが分かった。
そこへ行くつもりだと伝えても止められるようなことはなく、ヒイラギは危険なところではないと予想できた。
街道を移動する馬車に揺られながら、ヒイラギについて思いを馳せる。
リーダー的な役割に人がミズキのように接しやすい人であればいいのだが、実際に会うまでどうなるか分からない。
彼らが日本人に近い外見ということで親近感を抱く一方で、実際に力を貸してくれるかどうかは別である。
以前はアデルが仲介役を担ってくれたので、ミズキと親しくなるのにあまり時間はかからなかった。
しかし、今回はほぼゼロからの始まりなのだ。
ミズキやアカネが同行しているのならともかく、 サクラギの縁者は一人もいない。
いきなり訪ねていって力を貸してくれということが無茶なのは分かっている。
何かヒイラギの人たちに利することができるのなら、それを条件に力を貸してもうらことはできるかもしれない。
彼らがどんな生活を送っていて、何を提供すれば喜ぶのか。
次第にそんなことを考えるようになっていた。
移動の最中、俺を含めて三人とも口数は多くなかった。
きっと自分と同じようにこの後のことを考えていたのだろう。
やがて馬車が停まり、客車の扉が開いてリリアが顔を見せた。
「ヒイラギの入り口に到着しました」
外では少し雪が降っていたので、金色の髪に雪粒が見えた。
御者をするのは寒かったはずだが、リリアに不満げな様子はなかった。
「お疲れ様です」
「リリア、ありがとう」
俺とクリストフはいたわりの言葉をかけて、順番に下車した。
少し遅れてラーニャが出てきた。
考えなければいけないことが増えたせいか、彼女の顔には疲れの色がにじんでいた。
四人が揃ったところでヒイラギの特区へと向かう。
エスタンブルクという国の中にある、サクラギに与えられた地域。
どんなふうになっているのか、全く想像できなかった。
地図では線で括られているだけで、詳しいことは何も分かっていない。
馬車を下りた場所から雪の残る街道を歩く。
今日は日差しが出ているため、そこまで寒さは感じない。
「そろそろ、ヒイラギだと分かる目印があってもいい頃だけれど……」
いくらか進んだ後、手にした地図を眺めていたクリストフが口を開いた。
道沿いに背の高い針葉樹林が生えていることで、周囲の状況を確認しづらいことも影響しているようだ。
四人で進み続けると林に切れ目があり、進行方向の視界が開けていた。
そこで思わず目を奪われるような建物が見えた。
「――おおっ、城だ!」
サクラギにあるものほど大きくはないものの、和風な外観の城が建っている。
雪に囲まれた景色に佇むそれは完成度が高く、絵になるような光景だった。
その一方で異世界――さらに言えば異国にあることで何とも不思議な感覚を抱かせる。
「サクラギにも同じような城があるんですよ」
「なるほど、サクラギの城はああいったかたちなのですね」
「ふーむ、興味深い。あれで守りは大丈夫なのかな」
ランス王国の精鋭二人は城に釘づけになっており、俺からの説明に何度か頷いた。
彼らの立場を思えば、自国の王城と比較してしまう気持ちも理解できる。
小さいながらも立派な城に感動しながらさらに歩を進める。
徐々に城との距離が近づいたところで、城の近くで待機している兵士がこちらの気配に気づいた。
二人の兵士が和風の装備を身につけていることで、彼らがヒイラギに属していることが判断できる。
この距離では表情まで読み取れないものの、警戒の色が見て取れた。
得体の知れない者が近づけば当然の反応と言えるだろう。
用事がなければ身構えた状態の兵士に近づきたくはないが、助力を頼むためには無視するわけにもいかない。
四人で会話ができる距離まで近づくと、兵士の一人が鋭い眼光を向けながら話しかけてきた。
「――ここはヒイラギの敷地内。おぬしたちは何用か?」
「実は責任者の方に頼みたいことがあるんですけど……」
こちらの申し出を聞いた後、兵士は固い表情でもう一人の兵士に声をかけた。
少し距離があるので、二人の会話の内容は聞き取れない。
彼らは怪訝そうな様子を変えることはなかったが、話し合いの後に片方の兵士がこの場を離れてどこかに向かった。
「マルクくん、あの感じだと誰かを呼んでくるみたいだ」
「俺たちを追い払うつもりなのか、対話に応じるのか読めませんね」
「ここは待つとしよう。案外、前向きに応じてくれることだってあるさ」
クリストフは楽観的な見解を示した後、涼しげな笑みを浮かべた。
彼の視線は兵士が離れていった方向に向いていた。
作者解説
ヒイラギは剣術指南役を赴任させるかわりにエスタンブルク内に設けられたサクラギの特区のようなものです。
鉱物の採掘、その他資源の収集を目的に活動しています。
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