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女だけが暮らす奇妙な村で犯人探し
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しおりを挟む思い切り殴りつけたせいか、治療を終えた後も、リリアンは目覚めなかった。
「もしかして死んじゃった?」
『強いショックを受けたせいで気を失っているだけよ。ほっときなさい』
とりあえず食堂へ移動し、熱々のお茶を淹れて一息つく。
「絶対に村長に化けていると思ったのに」
『考えが甘かったわね』
「でもこの近くにいる気がするんだよね」
『……なぜそう思うの?』
「なんとなく」
栗鼠から猫の姿に変わったコヤは、ピンと尻尾を立てると、
『聖女の勘ってやつね』
嬉しそうに言った。
『以前よりもドラゴンの気配に敏感になっているみたい』
「そうかな」
『成長したわね、アネーシャ』
なんだかよくわからないが、コヤが喜んでいるので良しとしよう。
再び手がかりを捜しに居間へ戻ると、
「きゃー、ママっ」
十四、五歳くらいの少女がリリアンに取りすがり、泣いていた。
「しっかりして、ママっ。誰がこんなことをっ」
大変きまりが悪い。
あまりの居心地の悪さに、普通なら逃げ出すところだが、
「あなた、リリアンさんの娘さん?」
勇気を出して、少女に近づいていく。
娘がいるというのは驚きだ。
昨日は見かけなかったので、用心して隠れていたのかもしれない。
「リリアンさんなら無事よ。気を失っているだけだから」
「だったら、どうしてこんなに血が――」
床や服に飛び散った血を指摘されて、アネーシャは「あー」と視線を逸らす。
「そんなことより、あなたに訊きたいことがあるんだけど……」
「よそ者に話すことなんて何もないわっ」
キっと睨まれて、それもそうだよねと苦笑いする。
「この家からさっさと出て行ってっ」
「悪いけど、そういうわけにもいかないんだよね」
内心、困ったなと思いつつ、魔石のブローチをいじっていると、
「……それ、綺麗な宝石ね」
少女の目の色が変わるのを感じて、アネーシャはにっこりした。
「いいでしょ? これ。気に入ってるんだ」
「それをくれたら、質問に答えてあげてもいいけど」
「この宝石じゃないとダメ? お金も持ってるんだけど」
「その宝石じゃないとダメよっ」
違和感を覚えたのはその時だ。
少女の目が、一瞬だけ不気味に光った気がした。
ちらりとコヤのほうを見ると、なぜか高いところに上って、文字通り高みの見物を決め込んでいる。
――コヤ様のヒゲがひくひくしている……ってことは。
アネーシャはあることを確信した。
そろそろと移動して、再び火かき棒を手に取ると、
「このドラゴンめっ。退治してくれるっ」
少女目がけて振り下ろす。
けれど今度はあっさりと攻撃を弾かれてしまい、火かき棒が後ろの壁に突き刺さってしまった。
「よくぞ我の正体を見破ったなっ」
地面に激しい揺れを感じて、アネーシャは息を止めた。
周りの壁や天井が歪んで見えたかと思えば、ぐにゃぐにゃと形を変え始める。すると突然、薄ピンク色の肉の壁や天井が現れて、アネーシャは「おえっ」と吐きそうになった。
まるで巨大な生き物の胃の中にいるみたいだ。
上からぬるぬるした液体が滴り落ちていて、気持ちが悪い。
「あのまま逃げておけばよかったものを。ここは我の体内、メスの肉は好まぬが、このままお前を消化してやる」
この館そのものがドラゴンの本体だったらしい。
道理で、ドラゴンハンター三人があっさりと捕まったわけだ。
「イケメン三人はどこにいるのっ」
「保存用の胃袋の中さ。我の胃袋は四つあるのでな」
まだ無事だとわかって、ほっとした。
「どうした、恐怖のあまり声も出ないか」
さっきから、身体にまとわりつくネバネバが気持ち悪くてしょうがない。それに空気も悪いし、胃液の酸っぱい臭いが辺りに充満していて、いよいよ吐き気がこみ上げてくる。
もう耐えられないとばかりに、アネーシャは叫んだ。
「コヤ様っ、私をここから出してっ」
『もちのろんよ、アネーシャ』
楽しげなコヤの声が聞こえた直後、アネーシャは外にいた。
温かな太陽の日差しが眩しい。
「……ところでドラゴンはどこに行ったの? イケメンたちは?」
『あの三人のお望み通り、ドラゴンスレイヤーのところへ転移させたわ』
ということは、今頃ウルスやシアたちに、ボコボコにやられていることだろう。
胸がすっとした。
「っていうか、私もウルスさんのところに送ってくれれ良かったのに」
『あなたはまだやることがあるでしょうが』
ん? と首をひねると、
「きゃあっ、村長が血まみれで倒れているわっ」
「村長っ、しっかりしてくださいっ」
「村長の家は――館はどこ?」
「空き地になってて、何もないわよっ」
「あいつもいないわっ」
「あの恐ろしい魔女はどこ? 村長に取り付いていた娘は……」
集まってきた村人たちの姿を見て、アネーシャはぽんと手を叩く。
「危険が去ったことを皆に教えないとね」
『その前に、村長に謝りなさい』
それから仲間たちと再会できたのは、二日後のことだった。
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