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二章 ―少年から青年へ― (読み飛ばしOK)
閑話 ―着せ替えドラゴン―
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騎士見習いとなってしばらく経ったある日、ドラゴンは騎士見習いの制服であるベストを大急ぎで仕立ててくれた仕立て屋に、お礼の挨拶をしに街に出ていた。
「それで? なんでセンパイ達まで付いてきてるんですか?」
しかし、街に出てきていたのはドラゴン一人ではなかった。ドラゴンの側には三人の先輩騎士が私服に身を包んでドラゴンに付いてきていた。
「俺は団長の代理で礼を言いに行く」
「俺は~、んー、じゃあ、副団長の代理!」
「あ、ずるい! じゃあ俺は~」
「エレンとティトニーはただ暇だから付いてきただけだろう」
団長の代理で来た中隊長のマルコスが、百人隊長のエレンとティトニーに呆れた様子でツッコミを入れると、エレンとティトニーはカラカラと笑って「まあな~」と答えてティトニーが「ということだ」とドラゴンの肩に腕を乗せた。
この三人は階級こそ違うが同期で近衛騎士団に入団し、さらに同い年ということもあって入団当時から仲がいいと有名な三人組だった。さらに三人とも若いながらも多くの功績を残している期待の星で、マルコスに至ってはあの魔狼討伐で生き残った猛者である。
そしてこの三人は近衛騎士団に入団したドラゴンを特に気にかけていて、今日のようにドラゴンに絡んだり、街に連れ出して一緒にご飯を食べたりすることもしばしばあった。なのでドラゴンにとってこの三人は近衛騎士団に入って初めてできた友達のような存在だった。
「ティトニーさん、腕重い」
「ハハッ、この程度どうってことないだろう! 俺だったらお前を抱えて店まで走れるぞ!」
「この往来の中でそれは止めて下さいね?」
「そうだよ、ティトニー。やるなら訓練場でやらなきゃ」
「いやいやエレンさん、どんな所でも抱えられて走られるのは嫌ですよ!?」
「じゃあ、ドラゴンがこいつらを抱えて街中を走ってやれ」
「いやいやいや、おかしいですよね!? なんで俺が二人を抱えて街中を走らなきゃいけないんですか!? 今日は休みなんですから訓練じみた事を俺にやらせないでくださいよ!」
とまあ、いつもこのような会話を交わしており、ドラゴンはいつの間にかツッコミ役が定着してしまっていた。そして三人はドラゴンに冗談を言うことが楽しくて仕方がないと言わんばかりに笑いながらドラゴンとやり取りをしていて、ドラゴンもまた、このやり取りを心から楽しんでいた。
そんな風にじゃれ合いながら街中を歩いていると目的地である仕立て屋、『マジカルレッド』に到着した。
マジカルレッドは近衛騎士団御用達の仕立て屋で、腕のいい職人夫婦が弟子たちと一緒に一着一着丁寧に制服を仕立ててくれる。そのため二百年の間、ずっとこのマジカルレッドで近衛騎士団の制服が作られていた。
カランカランと軽やかにドアベルが店内に響くと、カウンターで店番をしていた女の子の顔にパッと笑顔が咲いた。
「いらっしゃいませー! ご用件を伺います!」
「あれ? もしかしてケイティちゃん? 何年か見ないうちに大きくなったね!」
「おお、ケイティちゃんか! こんなに小さかったのに、随分と背が伸びたな! 今、いくつになったんだ?」
エレンとティトニーが店番をしていた女の子、ケイティに笑顔で話しかけると、ケイティは笑顔で「七歳になりました!」と愛想よく答え、ティトニーに抱っこされてキャッキャと喜んだ。すると三人のにぎわう声に気付いたのか、工房からこの店の次期オーナーである若旦那のモロロフと、妻のニケが店に顔を出した。
「おや、近衛騎士団の方達でしたか。いらっしゃいませ」
モロロフが笑顔で四人を迎えるとマルコスが「お邪魔します」と笑顔で答え、ニケがティトニーの腕から下りてきたケイティの頭をなでると、三人の一歩後ろにいるドラゴンを見つけた。
「あら? 後ろにいる子は初めて見るお顔ね。新人騎士かしら?」
ニケに声をかけられると、エレンがドラゴンの背を押してマルコスの隣に立たせて、マルコスが微笑みながらドラゴンを紹介した。
「彼が今回、騎士見習いとして近衛騎士団に入団したドラゴン・ロディアノスです。このたびは俺達の新たな仲間、ドラゴンのために制服を仕立ててくださりありがとうございます。ラエル近衛騎士団長に代わって御礼申し上げます」
「わざわざありがとうございます。団長殿には今後ともごひいきにとお伝えください」
互いに折り目正しく腰を折って礼を言うと、モロロフは隣に立つドラゴンの方を向いて丁寧に頭を下げた。
「君が噂の騎士見習いですね。初めまして、私はこのマジカルレッドのオーナー代理を務めさせてもらっております、モロロフ・マーティンと申します。以後、お見知りおきください」
「ご丁寧にありがとうございます。騎士見習いとして先日近衛騎士団に入団しました、ドラゴン・ロディアノスと申します。このたびは、私のために立派な制服を仕立ててくださりありがとうございます。本日はそのお礼を言いに参りました」
「あらあら、丁寧な子ねぇ~。それに……」
ニケがジーッとドラゴンを上から眺める様子に、ドラゴンは少し居心地悪そうに身じろいだが、ニケはすぐにニコッと笑ってパンと手を叩いた。
「すごく綺麗な子ね! すごく創作意欲がわいてくるわ♪ そう思わない? あなた」
「あぁ、確かにそうだね。ドラゴン君といったね。もし、時間があるようなら少し私たちの手伝いをしてくれないかな?」
ドラゴンの手を取りどこかキラキラとした眼差しで頼むモロロフに、ドラゴンはチラリと三人を見た。
「俺達は別に構わないぞ。ベストを作ってもらった礼として付き合えばいい」
マルコスの言葉にドラゴンは心置きなく礼ができると、モロロフに視線を戻して笑顔で頷いた。
「分かりました。私に出来ることであれば、お手伝いさせていただきます」
「じゃあ、俺達はとりあえず昼食を買いに行ってくるから、ドラゴンはモロロフさんとニケさんの手伝いをして待ってろ」
「俺はドラゴンが粗相をしないか見張ってよ~っと」
「俺が粗相なんてするわけないじゃないですか」
エレンの言葉にムッとするドラゴンに、ティトニーがカラカラと笑って「怒るなって~」とドラゴンの背中をバシバシと叩き、マルコスも笑顔で「エレン、ドラゴンを頼んだぞ」と楽し気に笑いながらそう言うと、マジカルレッドを出ていった。
「ふふ、仲がいいのね。じゃあ、さっそくで悪いけど店の奥に来てくれるかしら? エレン君も一緒にどうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔しま~す」
「お邪魔します」
「どうぞ~!」
エレンとドラゴンをケイティが明るい笑顔で迎えると、自然とその場は和やかな空気に包まれ、誰もに笑顔がこぼれた。
店の奥に通されたドラゴンとエレンの目に飛び込んできたのは色とりどりのドレスで、そこはまるでカラフルな森の中のように思えた。しかし店名にあるように、この店は赤系の商品を多く取り揃えているため、赤いドレスが若干多いように感じた。
「さて…どれを着てもらおうかしら~」
ニケが呟いたその言葉にドラゴンは「ん?」と首を傾げ、カラフルなドレスの森の中に入っていくニケとモロロフに恐る恐る声をかけた。
「…あの、私の勘違いだったらいいのですが、もしかして、ここにあるドレスを私が着るのですか?」
「えぇ、そうよ。そのキリッとした目元や綺麗な鼻筋、健康的で血色のいい肌、キュッと引き結ばれた唇。引き締まっているけれどあからさまに付けられていない筋肉は、細くてとてもしなやか。だから、あなたには細身の女性に似合うドレスを着てもらうわ」
「お、俺は男ですよ!? なんで手伝いがドレスを着ることなんですか!?」
「あなたの顔立ちと体つきが素敵すぎるからよ! さあ、まずはこれを着て頂戴!」
ニケの熱烈な言葉にエレンは思い切り噴き出して笑い転げ、ニケにズイッとワインレッドのマーメイドドレスを渡されたドラゴンは思い切り顔を引きつらせて一歩下がった。
「イヒヒヒヒ! ドラゴン、おまっ、ニケさんに随分好かれたなぁ! くくっ、一度手伝うと言ったんだ、ちゃんと付き合えよ~」
「…エレンさん、後で鍛錬に付き合ってくださいね?」
完全に面白がっているエレンにあとで仕返しをすることを決意し、いったん引き受けてしまったため断ることもできないドラゴンは、笑顔でドレスを差し出すニケから渋々ドレスを受け取った。
「着替えはあそこでしよう。私が着替えを手伝うから心配はいらないよ。あと、次はこれを着て欲しい」
モロロフが深緑のスレンダードレスを見せながら、右手にある広めの試着室に渋るドラゴンを案内してカーテンを閉めた。
そして着替えを済ませたドラゴンは正直女装をしている感が半端なく、鏡に映る自分を見てげんなりした。しかし、なぜかニケとモロロフは目を輝かせて「似合ってる!」と一気にテンションを上げ、ドラゴンは本気で、この店は大丈夫なのだろうかと二人の感性を疑った。
そこからはドラゴンの単独ファッションショーが繰り広げられた。
着替えを終わらせて試着室を出るとニケとモロロフの指示によりポーズを取らされ、ポーズを決める姿にエレンが爆笑する。さらに昼食の買い物を済ませたマルコスとティトニーが合流すると、彼らにも爆笑されるという恥辱に耐えなければならなくなった。
笑ってという注文に顔が引きつってしまうのは、もはや仕方が無い事ではないだろうかとドラゴンは内心思いながら精一杯注文に応えて、ベストを仕立ててくれたお礼を遂行していた。
そして昼食も食べずに何十着とドレスを着せられ、陽が山の向こうに沈んでいく時間になるとようやくこの店のオーナー夫婦が帰ってきて、死んだ目をしてポーズを取っていたドラゴンを助け出してくれた。ようやく解放されたドラゴンはもはや疲れ切って放心状態となっており、目に涙を浮かべて笑っていた三人に担がれて城に戻ったのだった。
後日、お礼と謝罪として普段使いもできる上品な洋服一式と手紙がドラゴンの所に届けられた。しかしすでに近衛騎士団の中では、ドラゴンが着せ替え人形のようにドレスを何着も着せ替えられて、ポーズを取らされていたことが知れ渡っていて、からかわれるようになっていた。そのため、着せ替えられた時のことを否応なしに思い出しながらお礼と謝罪の手紙を読むこととなり、何とも言えない気持ちでお礼と謝罪の品を受け取ったのだった。
「それで? なんでセンパイ達まで付いてきてるんですか?」
しかし、街に出てきていたのはドラゴン一人ではなかった。ドラゴンの側には三人の先輩騎士が私服に身を包んでドラゴンに付いてきていた。
「俺は団長の代理で礼を言いに行く」
「俺は~、んー、じゃあ、副団長の代理!」
「あ、ずるい! じゃあ俺は~」
「エレンとティトニーはただ暇だから付いてきただけだろう」
団長の代理で来た中隊長のマルコスが、百人隊長のエレンとティトニーに呆れた様子でツッコミを入れると、エレンとティトニーはカラカラと笑って「まあな~」と答えてティトニーが「ということだ」とドラゴンの肩に腕を乗せた。
この三人は階級こそ違うが同期で近衛騎士団に入団し、さらに同い年ということもあって入団当時から仲がいいと有名な三人組だった。さらに三人とも若いながらも多くの功績を残している期待の星で、マルコスに至ってはあの魔狼討伐で生き残った猛者である。
そしてこの三人は近衛騎士団に入団したドラゴンを特に気にかけていて、今日のようにドラゴンに絡んだり、街に連れ出して一緒にご飯を食べたりすることもしばしばあった。なのでドラゴンにとってこの三人は近衛騎士団に入って初めてできた友達のような存在だった。
「ティトニーさん、腕重い」
「ハハッ、この程度どうってことないだろう! 俺だったらお前を抱えて店まで走れるぞ!」
「この往来の中でそれは止めて下さいね?」
「そうだよ、ティトニー。やるなら訓練場でやらなきゃ」
「いやいやエレンさん、どんな所でも抱えられて走られるのは嫌ですよ!?」
「じゃあ、ドラゴンがこいつらを抱えて街中を走ってやれ」
「いやいやいや、おかしいですよね!? なんで俺が二人を抱えて街中を走らなきゃいけないんですか!? 今日は休みなんですから訓練じみた事を俺にやらせないでくださいよ!」
とまあ、いつもこのような会話を交わしており、ドラゴンはいつの間にかツッコミ役が定着してしまっていた。そして三人はドラゴンに冗談を言うことが楽しくて仕方がないと言わんばかりに笑いながらドラゴンとやり取りをしていて、ドラゴンもまた、このやり取りを心から楽しんでいた。
そんな風にじゃれ合いながら街中を歩いていると目的地である仕立て屋、『マジカルレッド』に到着した。
マジカルレッドは近衛騎士団御用達の仕立て屋で、腕のいい職人夫婦が弟子たちと一緒に一着一着丁寧に制服を仕立ててくれる。そのため二百年の間、ずっとこのマジカルレッドで近衛騎士団の制服が作られていた。
カランカランと軽やかにドアベルが店内に響くと、カウンターで店番をしていた女の子の顔にパッと笑顔が咲いた。
「いらっしゃいませー! ご用件を伺います!」
「あれ? もしかしてケイティちゃん? 何年か見ないうちに大きくなったね!」
「おお、ケイティちゃんか! こんなに小さかったのに、随分と背が伸びたな! 今、いくつになったんだ?」
エレンとティトニーが店番をしていた女の子、ケイティに笑顔で話しかけると、ケイティは笑顔で「七歳になりました!」と愛想よく答え、ティトニーに抱っこされてキャッキャと喜んだ。すると三人のにぎわう声に気付いたのか、工房からこの店の次期オーナーである若旦那のモロロフと、妻のニケが店に顔を出した。
「おや、近衛騎士団の方達でしたか。いらっしゃいませ」
モロロフが笑顔で四人を迎えるとマルコスが「お邪魔します」と笑顔で答え、ニケがティトニーの腕から下りてきたケイティの頭をなでると、三人の一歩後ろにいるドラゴンを見つけた。
「あら? 後ろにいる子は初めて見るお顔ね。新人騎士かしら?」
ニケに声をかけられると、エレンがドラゴンの背を押してマルコスの隣に立たせて、マルコスが微笑みながらドラゴンを紹介した。
「彼が今回、騎士見習いとして近衛騎士団に入団したドラゴン・ロディアノスです。このたびは俺達の新たな仲間、ドラゴンのために制服を仕立ててくださりありがとうございます。ラエル近衛騎士団長に代わって御礼申し上げます」
「わざわざありがとうございます。団長殿には今後ともごひいきにとお伝えください」
互いに折り目正しく腰を折って礼を言うと、モロロフは隣に立つドラゴンの方を向いて丁寧に頭を下げた。
「君が噂の騎士見習いですね。初めまして、私はこのマジカルレッドのオーナー代理を務めさせてもらっております、モロロフ・マーティンと申します。以後、お見知りおきください」
「ご丁寧にありがとうございます。騎士見習いとして先日近衛騎士団に入団しました、ドラゴン・ロディアノスと申します。このたびは、私のために立派な制服を仕立ててくださりありがとうございます。本日はそのお礼を言いに参りました」
「あらあら、丁寧な子ねぇ~。それに……」
ニケがジーッとドラゴンを上から眺める様子に、ドラゴンは少し居心地悪そうに身じろいだが、ニケはすぐにニコッと笑ってパンと手を叩いた。
「すごく綺麗な子ね! すごく創作意欲がわいてくるわ♪ そう思わない? あなた」
「あぁ、確かにそうだね。ドラゴン君といったね。もし、時間があるようなら少し私たちの手伝いをしてくれないかな?」
ドラゴンの手を取りどこかキラキラとした眼差しで頼むモロロフに、ドラゴンはチラリと三人を見た。
「俺達は別に構わないぞ。ベストを作ってもらった礼として付き合えばいい」
マルコスの言葉にドラゴンは心置きなく礼ができると、モロロフに視線を戻して笑顔で頷いた。
「分かりました。私に出来ることであれば、お手伝いさせていただきます」
「じゃあ、俺達はとりあえず昼食を買いに行ってくるから、ドラゴンはモロロフさんとニケさんの手伝いをして待ってろ」
「俺はドラゴンが粗相をしないか見張ってよ~っと」
「俺が粗相なんてするわけないじゃないですか」
エレンの言葉にムッとするドラゴンに、ティトニーがカラカラと笑って「怒るなって~」とドラゴンの背中をバシバシと叩き、マルコスも笑顔で「エレン、ドラゴンを頼んだぞ」と楽し気に笑いながらそう言うと、マジカルレッドを出ていった。
「ふふ、仲がいいのね。じゃあ、さっそくで悪いけど店の奥に来てくれるかしら? エレン君も一緒にどうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔しま~す」
「お邪魔します」
「どうぞ~!」
エレンとドラゴンをケイティが明るい笑顔で迎えると、自然とその場は和やかな空気に包まれ、誰もに笑顔がこぼれた。
店の奥に通されたドラゴンとエレンの目に飛び込んできたのは色とりどりのドレスで、そこはまるでカラフルな森の中のように思えた。しかし店名にあるように、この店は赤系の商品を多く取り揃えているため、赤いドレスが若干多いように感じた。
「さて…どれを着てもらおうかしら~」
ニケが呟いたその言葉にドラゴンは「ん?」と首を傾げ、カラフルなドレスの森の中に入っていくニケとモロロフに恐る恐る声をかけた。
「…あの、私の勘違いだったらいいのですが、もしかして、ここにあるドレスを私が着るのですか?」
「えぇ、そうよ。そのキリッとした目元や綺麗な鼻筋、健康的で血色のいい肌、キュッと引き結ばれた唇。引き締まっているけれどあからさまに付けられていない筋肉は、細くてとてもしなやか。だから、あなたには細身の女性に似合うドレスを着てもらうわ」
「お、俺は男ですよ!? なんで手伝いがドレスを着ることなんですか!?」
「あなたの顔立ちと体つきが素敵すぎるからよ! さあ、まずはこれを着て頂戴!」
ニケの熱烈な言葉にエレンは思い切り噴き出して笑い転げ、ニケにズイッとワインレッドのマーメイドドレスを渡されたドラゴンは思い切り顔を引きつらせて一歩下がった。
「イヒヒヒヒ! ドラゴン、おまっ、ニケさんに随分好かれたなぁ! くくっ、一度手伝うと言ったんだ、ちゃんと付き合えよ~」
「…エレンさん、後で鍛錬に付き合ってくださいね?」
完全に面白がっているエレンにあとで仕返しをすることを決意し、いったん引き受けてしまったため断ることもできないドラゴンは、笑顔でドレスを差し出すニケから渋々ドレスを受け取った。
「着替えはあそこでしよう。私が着替えを手伝うから心配はいらないよ。あと、次はこれを着て欲しい」
モロロフが深緑のスレンダードレスを見せながら、右手にある広めの試着室に渋るドラゴンを案内してカーテンを閉めた。
そして着替えを済ませたドラゴンは正直女装をしている感が半端なく、鏡に映る自分を見てげんなりした。しかし、なぜかニケとモロロフは目を輝かせて「似合ってる!」と一気にテンションを上げ、ドラゴンは本気で、この店は大丈夫なのだろうかと二人の感性を疑った。
そこからはドラゴンの単独ファッションショーが繰り広げられた。
着替えを終わらせて試着室を出るとニケとモロロフの指示によりポーズを取らされ、ポーズを決める姿にエレンが爆笑する。さらに昼食の買い物を済ませたマルコスとティトニーが合流すると、彼らにも爆笑されるという恥辱に耐えなければならなくなった。
笑ってという注文に顔が引きつってしまうのは、もはや仕方が無い事ではないだろうかとドラゴンは内心思いながら精一杯注文に応えて、ベストを仕立ててくれたお礼を遂行していた。
そして昼食も食べずに何十着とドレスを着せられ、陽が山の向こうに沈んでいく時間になるとようやくこの店のオーナー夫婦が帰ってきて、死んだ目をしてポーズを取っていたドラゴンを助け出してくれた。ようやく解放されたドラゴンはもはや疲れ切って放心状態となっており、目に涙を浮かべて笑っていた三人に担がれて城に戻ったのだった。
後日、お礼と謝罪として普段使いもできる上品な洋服一式と手紙がドラゴンの所に届けられた。しかしすでに近衛騎士団の中では、ドラゴンが着せ替え人形のようにドレスを何着も着せ替えられて、ポーズを取らされていたことが知れ渡っていて、からかわれるようになっていた。そのため、着せ替えられた時のことを否応なしに思い出しながらお礼と謝罪の手紙を読むこととなり、何とも言えない気持ちでお礼と謝罪の品を受け取ったのだった。
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