19 / 65
一章 -幼少時代-
―悠久の友、信頼の臣の始まり― 6
しおりを挟む
そして、まだ少し肌寒いが全てがリセットされたような澄んだ朝の空気が包む街の中を二人は駆け抜けていたが、目的の場所に到着したのかリオが唐突に止まった。
「うわぁっ!?」
「ここだ…うぎゃっ!」
…まあ、突然止まったリオに反応しきれずドラゴンが思い切りリオに突っ込んで、二人もろとも地面にダイブしたのは当たり前の結果であろう。
しかし二人とも盛大に転んだにも関わらず、顔を見合わせるとケタケタと可愛らしく笑いはじめ、最終的には何が面白かったのか二人で大笑いしていた。
「アハハッ! あー、面白い。急に止まってごめんね」
「ううん、僕こそぶつかってごめんね」
笑いの余韻を残しつつお互いに謝るともう一度クスクスと笑い、そのあとに二人ともしっかりとした足取りで立ち上がり、ホコリをはらうと当たり前のように手を繋ぎ直した。
「じゃあ、行こう!」
「おー!」
「ニシシッ! ドラゴンも慣れてきたね! それでここはね、結婚してない人が住んでいる寮でね、寝坊する人がいるから僕が直々に起こしてあげるんだ~」
ルンルンと楽しそうに説明をするリオだが、ドラゴンは王子が直々に兵士を起こすものなのかと驚いた表情で話を聞いていた。
勿論、王子の仕事にそんな事は含まれていないので単なるリオの趣味であり日課なのだが、この時ドラゴンは、王子の仕事に寝坊した兵士を起こす事も含まれているのだと思い込んでいた。
そんな勘違いをしながら建物の中に入ると、まだ私服姿の衛兵達がおのおの食事を取っていたり眠気覚ましのコーヒーを飲んでいたりと朝の一時を過ごしていた。
「みんなおはよー!」
「おや、おはようございます。リオ殿下」
「おー、おはようございますリオ殿下! 今日も楽しそうですなぁ!」
「おはようございます、リオ殿下。今日もうちの寝坊助を叩き起こしてくれるんですか?」
「あったり~!」
リオの元気な挨拶に、衛兵達は笑顔で挨拶に応えて朝早くから訪れるリオを歓迎した。
一方、人見知りが激しいドラゴンは、たくさんの大人達に圧倒されてリオの後ろに隠れてしまい、リオのように挨拶をすることが出来なかった。そんなドラゴンを見かねたリオは、勇気付けるようにキュッと繋いだ手に力を込めて、チラッと後ろにいるドラゴンを見るとニッと笑った。そんなリオに勇気を貰ったドラゴンは、リオの手を握り返してから一歩リオの横にずれ、すぅっと息を吸う。
「お、おはよう、ございます…!」
決して大きな声とは言いがたいが、一生懸命声を出したのだろうと裏返った声と真っ赤になった顔が教え、衛兵達はそんなドラゴンの努力を微笑ましく見ながらドラゴンの挨拶にも応える。
「おう、おはようさん! リオ殿下の友達ってお前さんの事だな? お前さん達が城に来てからリオ殿下が話す話題と言えば『ザギとドラゴンがね』から始まるものばかりだったぜ」
「ハハッ、確かに。リオ殿下が自慢する友人に実際に会えて嬉しいよ。君はザギ? それともドラゴン?」
「ど、ドラゴン・ロディアノスです! よろしく、お願いします…!」
バッと頭を下げて名乗るドラゴンに、衛兵達は「いい子だな」と笑いながら褒めて、一人がドラゴンの頭を優しく撫でた。ドラゴンは一瞬ビックリしたように身体を震わせたが、叩かれた訳ではないと理解すると照れ臭そうにしつつも嬉しそうに笑った。
その様子をリオは嬉しそうにしながら見守っていたが、「あっ」と声を上げて寮を取り仕切る寮長を視線で探し、トレードマークである眼帯を着けた細身の男性を見つけるとニィッと笑ってその男性に声をかける。
「ドーベル! 寝坊してる人いる?」
「あぁ? あー、そうだな…」
ドーベルと呼ばれた寮長は、ザッとこの場にいる衛兵達を見回して小さくため息をつく。その表情に呆れが見えることから、リオはいつもの人が寝坊しているのだと見当をつけた。
「今日はガディアとレアーロンの二人だ。殿下の手を煩わせて悪いが、起こしてきて欲しい」
ドーベルはそう言うと管理室から二つの鍵を持ってきて、リオに渡した。リオはその鍵を嬉しそうに受け取ると「りょーかい!」と見よう見まねで覚えた敬礼をドーベルに向けた。そんなリオの敬礼にドーベルは生真面目に正しい敬礼を返し、リオとドラゴンはそんなキリッとした敬礼に憧れの眼差しを向けてから部屋が連なる廊下へと向かった。
「えーっと、じゃあまずはレアーロンの方から起こしに行こう! レアーロンの方が部屋が近いからね!」
鍵と一緒に付いているプレートの番号を確認したリオはドラゴンに教えると、意気揚々と廊下を進む。
「広い家だね。廊下ばかりだけど、迷わないの?」
リオの手をしっかりと握ってはぐれないようにしているドラゴンが、キョロキョロと辺りを見回しながら少し不安げにそう言うと、リオは自慢げにニシシッと笑う。
「大丈夫だよ! ほら、ここに文字が書かれてるでしょう? これを目印にすれば迷わないよ」
リオは壁に貼り付けられているアンティーク調のプレートを指差してドラゴンに見せると、ドラゴンは「へぇ」と綺麗な装飾が施されたプレートを見つめた。
ちなみに、寮は華美ではないが所々に細やかな彫りがあったり貴族の邸に使っても差し支えのない上品な壁紙が張られていたりと、綺麗な印象を受ける内装である。外観も洋館を思わせる造りになっていて、パッと見では寮とは思えないくらい綺麗な邸になっている。
衛兵は、実力、最低限の礼儀、一般常識の三つがあれば誰であろうともなれるので、学校に通う事が出来る家の子は大抵衛兵に憧れ、綺麗な寮に入ることを夢見る。外観、内装が綺麗なのはそんな夢見る子供達の夢を壊さないためと、王家管轄の寮が安宿のような造りでは体面が悪いからという意味が込められていた。
そんな話をしながらリオとドラゴンは目的であるレアーロンの部屋に到着すると、リオは借りた鍵で遠慮なく鍵を開け、ドアを開けた瞬間にタッと駆け出した。相変わらずの唐突な動きにドラゴンは付いていけず、思い切りバランスを崩して敷いてあった絨毯の上に転んでしまったが、リオは気にすることなくあっさりとドラゴンの手を離し、部屋の奥にあるベッドの上で気持ち良さそうに眠っている男性に向かってダイブした。
「とうっ!」
「グフッ! な、んだ…?」
「あっははははは! おっはよー! レアーロン、寝坊だよ☆」
うっすらと目を開けて自分の上にのしかかってきた重さの正体を見ようとするレアーロンに、リオは馬乗りになって甲高い声で笑ってから挨拶をした。その声と言葉にレアーロンはぎょっとなって飛び起き、慌ててリオに頭を下げる。
「おはようございます、リオ殿下! お手を煩わせてしまい申し訳ありません!」
「あはっ。別にいいよー、楽しいし! ほら、早く行かないと、食堂が閉まっちゃうよ~」
リオはレアーロンから下りてからかうような口調でそう言うと、レアーロンはバッとベッドの上に置いてある時計を見てサッと顔を青ざめさせた。
「朝食抜きはキツい…! リオ殿下、失礼します!」
そう言うやレアーロンはドタバタと部屋を出ていき、リオはのんびりと「いってらっしゃーい」と手を振った。
「リオ君…走るなら言ってよぉ~……」
打ったところをさすりながら、放置されて寂しかったと言わんばかりにしょんぼりとした様子でリオに声をかけた。そんなドラゴンにリオはハッとして慌てて謝る。
「ご、ごめんね! いつも一人だったから、つい一人で行っちゃった。ケガはない?」
「うん、大丈夫」
「良かった。じゃあ、次は一緒にベッドに飛び乗ろうね! 楽しいから!」
特に怪我が無いと分かってホッとしたリオは、パッと明るい表情に切り替えてドラゴンにそう提案すると、ドラゴンは嘘でしょと言わんばかりの表情で目を見開いた。
「え、いいの? そんなことして怒られない?」
「怒られないよ。だって、寝坊する人が悪いんだもん。特にガディアは最近よく寝坊してるから慣れてるよ。だから大丈夫!」
リオはドラゴンの手を握り直すと「行こ!」と満面の笑顔でドラゴンを誘った。ドラゴンはそんな自信満々なリオの様子を見て『リオと一緒なら大丈夫かな』と絆され、リオの手を握り返して「うん!」と大きく頷いた。
「じゃあ、走って行こー!」
「おー!」
そして二人は次の部屋に向かって走り出した。
いくつかの曲がり角を曲がるとリオは走る速度を落として目的のガディアの部屋の前で止まった。
「ここ?」
「そうだよ。じゃあ、鍵を開けるね~。ドアを開けたら走るから準備しててね!」
そう言うとリオは鍵穴に鍵を差し込み、カチャリと鍵を開けるとドアを開けて先ほどと同じように駆け出した。今度は予告をされていたのでドラゴンも一緒に駆け出すことができ、リオと一緒に部屋の奥で気持ち良さそうに眠っている男性に向かってダイブした。
「とうっ!」
「えいっ!」
「グエッ! ……くっ…闘牛王子め……」
「あっははははは! おっはよー! ガディア~、今日も寝坊だよ!」
のしかかってきた重さに、思い切り眉間にシワを刻むガディアにリオは笑いながら馬乗りになり、ドラゴンはすぐに脇に退けた。
「相変わらず、朝から元気だな。ふあぁ…ん? こっちの子供は誰だ? 見慣れないな」
欠伸をしながら起き上がって上にいるリオを脇に下ろすと、視界にドラゴンの姿が映り、ガディアは首をかしげてドラゴンを見つめた。
「あ、えっと、僕はドラゴン・ロディアノスです! よろしくお願いします!」
「ドラゴンはね、僕の友達なんだよ!」
「あー、殿下が最近よく言ってたやつか。よろしくな、ドラゴン」
ガディアはそう言って笑うとベッドから下りて、軽く身体を伸ばした。
「うっし。んじゃ、いってくるわ~」
「いってらっしゃーい! たいちょーにお説教受けないようにね~」
「おー、善処するわー」
からからと笑いながらガディアは急ぐ様子もなく部屋を出ていき、リオとドラゴンもそんなマイペースなガディアの後に続いて部屋を出ると、鍵を返しに管理室に向かった。
そして鍵をドーベルに返すと、リオはドラゴンの手を引いて寮を出ていき相変わらず楽しそうにドラゴンに話しかける。
「次は近衛騎士団の所に行こう! さすがに近衛騎士で寝坊してる人はいないけど、暇な人が遊んでくれるよ!」
「へぇ~、そうなんだ! 行く!」
行く気満々でそう言った刹那『くうぅぅ~……』とドラゴンのお腹の虫が切なげに空腹を知らせ、その音にドラゴンは恥ずかしくなって顔を赤く染めた。
「ドラゴン、お腹空いたの?」
「……う、うん」
「なーんだ! それなら先に言ってよー。じゃあ、ザギも起こして一緒に朝ごはん食べに行こ!」
「うん!」
朝ごはんと聞いてドラゴンは恥じらいの表情からパッと嬉しそうな表情に変わって大きく頷き、二人はどちらともなく城の方へ駆け出した。
「うわぁっ!?」
「ここだ…うぎゃっ!」
…まあ、突然止まったリオに反応しきれずドラゴンが思い切りリオに突っ込んで、二人もろとも地面にダイブしたのは当たり前の結果であろう。
しかし二人とも盛大に転んだにも関わらず、顔を見合わせるとケタケタと可愛らしく笑いはじめ、最終的には何が面白かったのか二人で大笑いしていた。
「アハハッ! あー、面白い。急に止まってごめんね」
「ううん、僕こそぶつかってごめんね」
笑いの余韻を残しつつお互いに謝るともう一度クスクスと笑い、そのあとに二人ともしっかりとした足取りで立ち上がり、ホコリをはらうと当たり前のように手を繋ぎ直した。
「じゃあ、行こう!」
「おー!」
「ニシシッ! ドラゴンも慣れてきたね! それでここはね、結婚してない人が住んでいる寮でね、寝坊する人がいるから僕が直々に起こしてあげるんだ~」
ルンルンと楽しそうに説明をするリオだが、ドラゴンは王子が直々に兵士を起こすものなのかと驚いた表情で話を聞いていた。
勿論、王子の仕事にそんな事は含まれていないので単なるリオの趣味であり日課なのだが、この時ドラゴンは、王子の仕事に寝坊した兵士を起こす事も含まれているのだと思い込んでいた。
そんな勘違いをしながら建物の中に入ると、まだ私服姿の衛兵達がおのおの食事を取っていたり眠気覚ましのコーヒーを飲んでいたりと朝の一時を過ごしていた。
「みんなおはよー!」
「おや、おはようございます。リオ殿下」
「おー、おはようございますリオ殿下! 今日も楽しそうですなぁ!」
「おはようございます、リオ殿下。今日もうちの寝坊助を叩き起こしてくれるんですか?」
「あったり~!」
リオの元気な挨拶に、衛兵達は笑顔で挨拶に応えて朝早くから訪れるリオを歓迎した。
一方、人見知りが激しいドラゴンは、たくさんの大人達に圧倒されてリオの後ろに隠れてしまい、リオのように挨拶をすることが出来なかった。そんなドラゴンを見かねたリオは、勇気付けるようにキュッと繋いだ手に力を込めて、チラッと後ろにいるドラゴンを見るとニッと笑った。そんなリオに勇気を貰ったドラゴンは、リオの手を握り返してから一歩リオの横にずれ、すぅっと息を吸う。
「お、おはよう、ございます…!」
決して大きな声とは言いがたいが、一生懸命声を出したのだろうと裏返った声と真っ赤になった顔が教え、衛兵達はそんなドラゴンの努力を微笑ましく見ながらドラゴンの挨拶にも応える。
「おう、おはようさん! リオ殿下の友達ってお前さんの事だな? お前さん達が城に来てからリオ殿下が話す話題と言えば『ザギとドラゴンがね』から始まるものばかりだったぜ」
「ハハッ、確かに。リオ殿下が自慢する友人に実際に会えて嬉しいよ。君はザギ? それともドラゴン?」
「ど、ドラゴン・ロディアノスです! よろしく、お願いします…!」
バッと頭を下げて名乗るドラゴンに、衛兵達は「いい子だな」と笑いながら褒めて、一人がドラゴンの頭を優しく撫でた。ドラゴンは一瞬ビックリしたように身体を震わせたが、叩かれた訳ではないと理解すると照れ臭そうにしつつも嬉しそうに笑った。
その様子をリオは嬉しそうにしながら見守っていたが、「あっ」と声を上げて寮を取り仕切る寮長を視線で探し、トレードマークである眼帯を着けた細身の男性を見つけるとニィッと笑ってその男性に声をかける。
「ドーベル! 寝坊してる人いる?」
「あぁ? あー、そうだな…」
ドーベルと呼ばれた寮長は、ザッとこの場にいる衛兵達を見回して小さくため息をつく。その表情に呆れが見えることから、リオはいつもの人が寝坊しているのだと見当をつけた。
「今日はガディアとレアーロンの二人だ。殿下の手を煩わせて悪いが、起こしてきて欲しい」
ドーベルはそう言うと管理室から二つの鍵を持ってきて、リオに渡した。リオはその鍵を嬉しそうに受け取ると「りょーかい!」と見よう見まねで覚えた敬礼をドーベルに向けた。そんなリオの敬礼にドーベルは生真面目に正しい敬礼を返し、リオとドラゴンはそんなキリッとした敬礼に憧れの眼差しを向けてから部屋が連なる廊下へと向かった。
「えーっと、じゃあまずはレアーロンの方から起こしに行こう! レアーロンの方が部屋が近いからね!」
鍵と一緒に付いているプレートの番号を確認したリオはドラゴンに教えると、意気揚々と廊下を進む。
「広い家だね。廊下ばかりだけど、迷わないの?」
リオの手をしっかりと握ってはぐれないようにしているドラゴンが、キョロキョロと辺りを見回しながら少し不安げにそう言うと、リオは自慢げにニシシッと笑う。
「大丈夫だよ! ほら、ここに文字が書かれてるでしょう? これを目印にすれば迷わないよ」
リオは壁に貼り付けられているアンティーク調のプレートを指差してドラゴンに見せると、ドラゴンは「へぇ」と綺麗な装飾が施されたプレートを見つめた。
ちなみに、寮は華美ではないが所々に細やかな彫りがあったり貴族の邸に使っても差し支えのない上品な壁紙が張られていたりと、綺麗な印象を受ける内装である。外観も洋館を思わせる造りになっていて、パッと見では寮とは思えないくらい綺麗な邸になっている。
衛兵は、実力、最低限の礼儀、一般常識の三つがあれば誰であろうともなれるので、学校に通う事が出来る家の子は大抵衛兵に憧れ、綺麗な寮に入ることを夢見る。外観、内装が綺麗なのはそんな夢見る子供達の夢を壊さないためと、王家管轄の寮が安宿のような造りでは体面が悪いからという意味が込められていた。
そんな話をしながらリオとドラゴンは目的であるレアーロンの部屋に到着すると、リオは借りた鍵で遠慮なく鍵を開け、ドアを開けた瞬間にタッと駆け出した。相変わらずの唐突な動きにドラゴンは付いていけず、思い切りバランスを崩して敷いてあった絨毯の上に転んでしまったが、リオは気にすることなくあっさりとドラゴンの手を離し、部屋の奥にあるベッドの上で気持ち良さそうに眠っている男性に向かってダイブした。
「とうっ!」
「グフッ! な、んだ…?」
「あっははははは! おっはよー! レアーロン、寝坊だよ☆」
うっすらと目を開けて自分の上にのしかかってきた重さの正体を見ようとするレアーロンに、リオは馬乗りになって甲高い声で笑ってから挨拶をした。その声と言葉にレアーロンはぎょっとなって飛び起き、慌ててリオに頭を下げる。
「おはようございます、リオ殿下! お手を煩わせてしまい申し訳ありません!」
「あはっ。別にいいよー、楽しいし! ほら、早く行かないと、食堂が閉まっちゃうよ~」
リオはレアーロンから下りてからかうような口調でそう言うと、レアーロンはバッとベッドの上に置いてある時計を見てサッと顔を青ざめさせた。
「朝食抜きはキツい…! リオ殿下、失礼します!」
そう言うやレアーロンはドタバタと部屋を出ていき、リオはのんびりと「いってらっしゃーい」と手を振った。
「リオ君…走るなら言ってよぉ~……」
打ったところをさすりながら、放置されて寂しかったと言わんばかりにしょんぼりとした様子でリオに声をかけた。そんなドラゴンにリオはハッとして慌てて謝る。
「ご、ごめんね! いつも一人だったから、つい一人で行っちゃった。ケガはない?」
「うん、大丈夫」
「良かった。じゃあ、次は一緒にベッドに飛び乗ろうね! 楽しいから!」
特に怪我が無いと分かってホッとしたリオは、パッと明るい表情に切り替えてドラゴンにそう提案すると、ドラゴンは嘘でしょと言わんばかりの表情で目を見開いた。
「え、いいの? そんなことして怒られない?」
「怒られないよ。だって、寝坊する人が悪いんだもん。特にガディアは最近よく寝坊してるから慣れてるよ。だから大丈夫!」
リオはドラゴンの手を握り直すと「行こ!」と満面の笑顔でドラゴンを誘った。ドラゴンはそんな自信満々なリオの様子を見て『リオと一緒なら大丈夫かな』と絆され、リオの手を握り返して「うん!」と大きく頷いた。
「じゃあ、走って行こー!」
「おー!」
そして二人は次の部屋に向かって走り出した。
いくつかの曲がり角を曲がるとリオは走る速度を落として目的のガディアの部屋の前で止まった。
「ここ?」
「そうだよ。じゃあ、鍵を開けるね~。ドアを開けたら走るから準備しててね!」
そう言うとリオは鍵穴に鍵を差し込み、カチャリと鍵を開けるとドアを開けて先ほどと同じように駆け出した。今度は予告をされていたのでドラゴンも一緒に駆け出すことができ、リオと一緒に部屋の奥で気持ち良さそうに眠っている男性に向かってダイブした。
「とうっ!」
「えいっ!」
「グエッ! ……くっ…闘牛王子め……」
「あっははははは! おっはよー! ガディア~、今日も寝坊だよ!」
のしかかってきた重さに、思い切り眉間にシワを刻むガディアにリオは笑いながら馬乗りになり、ドラゴンはすぐに脇に退けた。
「相変わらず、朝から元気だな。ふあぁ…ん? こっちの子供は誰だ? 見慣れないな」
欠伸をしながら起き上がって上にいるリオを脇に下ろすと、視界にドラゴンの姿が映り、ガディアは首をかしげてドラゴンを見つめた。
「あ、えっと、僕はドラゴン・ロディアノスです! よろしくお願いします!」
「ドラゴンはね、僕の友達なんだよ!」
「あー、殿下が最近よく言ってたやつか。よろしくな、ドラゴン」
ガディアはそう言って笑うとベッドから下りて、軽く身体を伸ばした。
「うっし。んじゃ、いってくるわ~」
「いってらっしゃーい! たいちょーにお説教受けないようにね~」
「おー、善処するわー」
からからと笑いながらガディアは急ぐ様子もなく部屋を出ていき、リオとドラゴンもそんなマイペースなガディアの後に続いて部屋を出ると、鍵を返しに管理室に向かった。
そして鍵をドーベルに返すと、リオはドラゴンの手を引いて寮を出ていき相変わらず楽しそうにドラゴンに話しかける。
「次は近衛騎士団の所に行こう! さすがに近衛騎士で寝坊してる人はいないけど、暇な人が遊んでくれるよ!」
「へぇ~、そうなんだ! 行く!」
行く気満々でそう言った刹那『くうぅぅ~……』とドラゴンのお腹の虫が切なげに空腹を知らせ、その音にドラゴンは恥ずかしくなって顔を赤く染めた。
「ドラゴン、お腹空いたの?」
「……う、うん」
「なーんだ! それなら先に言ってよー。じゃあ、ザギも起こして一緒に朝ごはん食べに行こ!」
「うん!」
朝ごはんと聞いてドラゴンは恥じらいの表情からパッと嬉しそうな表情に変わって大きく頷き、二人はどちらともなく城の方へ駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる