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 翌日、予定通りの時間に港に入港し、貴族に扮したジゼルが入港料を港の管理者に支払うと、買い出し組は船内で念入りに変装し始めた。
 そして、一時間ほど時間をかけて変装したアリアナ以外の四人は、もはや別人だった。
 ロゼはアリアナの母をイメージしているのか、メイクで少し顔を老けさせて上品な貴婦人に変身しており、港町に似合う白いドレスと大きなつばの帽子が良く似合っていた。
 ネオもまた、ロゼの夫をイメージしているのか、地毛の短髪ではなく髪質がサラサラなカツラをかぶってオールバックにし、付け髭をしてクリーム色のタキシードに身を包んでいた。
 ソヴァンとテトはどうやら付き人をイメージしている様子で、二人もまた髪をオールバックにして黒のタキシードに身を包んでいた。ソヴァンの眼帯はいつもの物より上質でオシャレな革の眼帯に変わっており、テトは伊達メガネをしてやんちゃな印象をかき消した。
 そんな四人の変身ぶりを見たアリアナはポカンと口を開けて驚き、ただ服を着てメイクをしただけの自分を見て急に不安になった。
「えっ、皆さん素敵すぎませんか? 私、釣り合いませんよね? 隣を歩いていいんですか?」
「アリアナだって可愛いし素敵よ。ソヴァンなんて抱いて歩き回りたいんじゃないかしら?」
 ロゼのからかうような視線と声に、ソヴァンは表情こそ変えないもののどこか居心地の悪そうな気配を出して黙り込んでしまう。
「……」
「あ、もしかして図星なんですか? ソヴァンさんがアリアナちゃんに一目惚れしたって本当だった…イッタ!」
「えっ、一目惚れ?」
 テトの発言にギョッとしたソヴァンが慌ててテトの頭を殴り、アリアナはテトの言葉に信じられないと言うように目を見開いてソヴァンを見た。ソヴァンはその視線を受けてさらに居心地悪そうにアリアナから目をそらして頭を掻いたあと、決心したようにグッと自分の手を握りしめるとアリアナの前に来て跪いた。
「一目惚れは…本当だ。俺はアリアナを好いている。だから、俺にエスコートさせてくれないか」
 そう言って手を差し伸べるソヴァンの真剣なまなざしに、アリアナは驚きつつも笑顔で「はい」とソヴァンの手を取った。
「えっ、僕はただのキューピット役なんですか? えー、それはあんまりですって。僕だってアリアナちゃんとデートしたい~!」
「じゃあ、略奪すればいいのよ。まだ正式にソヴァンのものになったわけじゃないんだし。ね、ネオ」
「さすが海賊王のロゼ様だな」
 すねた子供のような声でそう言うテトに、ロゼはシレっと悪知恵を吹き込み、ネオは笑いながらそんなロゼも受け入れていた。
「へへっ、略奪かぁ。それも楽しそうですね」
 ロゼの悪知恵にテトはなるほどと納得した表情をした後、小悪魔のような悪い顔で笑った。
「簡単に奪わせると思うな」
「初めての夜を過ごしたからって、いい気にならないでくださいよ。アリアナちゃんの気持ちが追い付いていなければ意味がないんですよ、ソヴァンさん」
 バチバチと火花を散らせる二人にアリアナはオロオロと二人を見、周りにいるクルー達はその様子を楽しそうに眺めていた。
「ウフフ、アリアナは人気者ね。さすが私のアリアナ。あぁ、可愛いわ」
 ロゼは遠慮なくアリアナに抱き着いてよしよしとアリアナを撫でた後、体を離すと同時に手をつないだ。
「さ、そろそろ行きましょうか。今日は買うものが沢山あるから、さっさと回ってこんな港を出港するわよ。船の守りは任せたわね」
 そう言うと留守番組一人一人の頬にキスをしていき、ロゼは四人を引き連れて街へ降りて行った。

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