34 / 74
1
31
しおりを挟む
「大人しく娘を渡せ!」
「渡せと言われて大人しく「はいどうぞ」って言う訳ないよね。少なくとも、僕だってアリアナちゃんを気に入っている一人だから、欲しかったら力ずくで奪うしかないよ」
どれだけの武器を体に仕込んでいたのだろうか。テトは剣だけでなく、短剣も数多くその体に仕込んでいたらしく、体中から短剣を出しては得意の投擲で的確に急所へ投げて攻撃をしていた。
「アリアナちゃん、大丈夫? 怖かったら目と耳を塞いでいてもいいよ」
ショーでもしているような軽やかな投擲術と剣術に、アリアナは思わず見とれてしまうものの、飛び散る血しぶきがこれはショーではないと現実を教え、見ていたい気持ちと現実から目を背けたい気持ちが入り乱れて混乱し、ただそこに突っ立っていることしか出来なかった。
「あっ…う…」
「そんな怯えた顔をしないで。大丈夫、僕がアリアナちゃんを守ってあげるから。女の子なんだから、守られていいんだよ。怖~いお兄さんたちは僕が倒してあげる。さ、目を閉じて? 目を開けた時にはもう怖いものは無くなってるから」
笑顔でアリアナの方を向き、混乱しているアリアナに目を閉じるよう促した。テトの明るく、それでいて頼もしさを感じる声にアリアナは素直に目を閉じてその場にうずくまった。それを見届けると、テトは途端に笑顔が消えて敵を見据えると剣で海兵たちを斬り捨てて行った。
一方、サーシャを追いかけに行ったソヴァンは、屋根の上でサーシャと交戦を開始していた。
「お兄さん、数的に圧倒的不利なのに何でそんなに頑張るの? 捕まっちゃえば楽になれるのに」
不安定な足場であるにもかかわらず、サーシャはしなやかな動きで低い位置からソヴァンを蹴り上げようとしたが、ソヴァンはサーシャの攻撃を紙一重でかわすと、サーシャの足を取ろうとサーシャの足首に手を伸ばした。しかし、サーシャはすでに次の攻撃へ転じており、柔らかい体を存分に生かして反対の足でソヴァンの側頭部を回し蹴りしていた。
「くっ…」
「あと、もしかしてお兄さんは近接戦が苦手? まあ、片目がそれじゃ近づかれるとやりづらいよね」
「…よくしゃべる」
ソヴァンは甲高い声で話すサーシャが不快だと言わんばかりに眉間にしわを寄せると、銃を一度しまって護身用として常に持っている短剣を構えた。
「あ、でも、お兄さんってよく見るととてもカッコいいよね。まあ、兄ちゃん達には及ばないけど、私は好きだよ」
「…俺は、嫌いだ」
「なーんだ。残念」
サーシャはさほど残念そうな様子もなく肩をすくめると、攻撃のために再び大きく踏み込んで細身の剣でソヴァンの心臓を貫こうとした。小柄なうえに素早い彼女に、ソヴァンはさらに苦手意識が強まり、さっさと決着をつけようと襲ってきた剣をそのまま自分の体で受け止めた。その大胆な行動に驚いたサーシャは思わず怯み、ソヴァンはその隙をついて腕を取ってひねるとそのまま屋根に押し倒して動けないように背中に膝を乗せた。
「いったぁ~…っていうか、お兄さん反則でしょ。わざと刺されるってありえない。肉を貫く感触気持ち悪かったんだけど」
「…人を傷つけるとは、そういう事だ。覚えておけ」
ソヴァンはサーシャのポケットの中から手錠を取り出すと、後ろ手に手錠をかけた。
「…運が良ければ助けに来る。あと、これは貰ってくぞ」
ソヴァンはサーシャが持っていたライフルを没収し、屋根の上にサーシャを残したまま屋根から降りて行った。
「もー! レディーを置いて行くなんて最っ低~! 兄ちゃん達に言いつけてやるんだから~!」
置いて行かれたサーシャはありったけの声を上げて去っていくソヴァンに負け惜しみを叫んだのだった。
「渡せと言われて大人しく「はいどうぞ」って言う訳ないよね。少なくとも、僕だってアリアナちゃんを気に入っている一人だから、欲しかったら力ずくで奪うしかないよ」
どれだけの武器を体に仕込んでいたのだろうか。テトは剣だけでなく、短剣も数多くその体に仕込んでいたらしく、体中から短剣を出しては得意の投擲で的確に急所へ投げて攻撃をしていた。
「アリアナちゃん、大丈夫? 怖かったら目と耳を塞いでいてもいいよ」
ショーでもしているような軽やかな投擲術と剣術に、アリアナは思わず見とれてしまうものの、飛び散る血しぶきがこれはショーではないと現実を教え、見ていたい気持ちと現実から目を背けたい気持ちが入り乱れて混乱し、ただそこに突っ立っていることしか出来なかった。
「あっ…う…」
「そんな怯えた顔をしないで。大丈夫、僕がアリアナちゃんを守ってあげるから。女の子なんだから、守られていいんだよ。怖~いお兄さんたちは僕が倒してあげる。さ、目を閉じて? 目を開けた時にはもう怖いものは無くなってるから」
笑顔でアリアナの方を向き、混乱しているアリアナに目を閉じるよう促した。テトの明るく、それでいて頼もしさを感じる声にアリアナは素直に目を閉じてその場にうずくまった。それを見届けると、テトは途端に笑顔が消えて敵を見据えると剣で海兵たちを斬り捨てて行った。
一方、サーシャを追いかけに行ったソヴァンは、屋根の上でサーシャと交戦を開始していた。
「お兄さん、数的に圧倒的不利なのに何でそんなに頑張るの? 捕まっちゃえば楽になれるのに」
不安定な足場であるにもかかわらず、サーシャはしなやかな動きで低い位置からソヴァンを蹴り上げようとしたが、ソヴァンはサーシャの攻撃を紙一重でかわすと、サーシャの足を取ろうとサーシャの足首に手を伸ばした。しかし、サーシャはすでに次の攻撃へ転じており、柔らかい体を存分に生かして反対の足でソヴァンの側頭部を回し蹴りしていた。
「くっ…」
「あと、もしかしてお兄さんは近接戦が苦手? まあ、片目がそれじゃ近づかれるとやりづらいよね」
「…よくしゃべる」
ソヴァンは甲高い声で話すサーシャが不快だと言わんばかりに眉間にしわを寄せると、銃を一度しまって護身用として常に持っている短剣を構えた。
「あ、でも、お兄さんってよく見るととてもカッコいいよね。まあ、兄ちゃん達には及ばないけど、私は好きだよ」
「…俺は、嫌いだ」
「なーんだ。残念」
サーシャはさほど残念そうな様子もなく肩をすくめると、攻撃のために再び大きく踏み込んで細身の剣でソヴァンの心臓を貫こうとした。小柄なうえに素早い彼女に、ソヴァンはさらに苦手意識が強まり、さっさと決着をつけようと襲ってきた剣をそのまま自分の体で受け止めた。その大胆な行動に驚いたサーシャは思わず怯み、ソヴァンはその隙をついて腕を取ってひねるとそのまま屋根に押し倒して動けないように背中に膝を乗せた。
「いったぁ~…っていうか、お兄さん反則でしょ。わざと刺されるってありえない。肉を貫く感触気持ち悪かったんだけど」
「…人を傷つけるとは、そういう事だ。覚えておけ」
ソヴァンはサーシャのポケットの中から手錠を取り出すと、後ろ手に手錠をかけた。
「…運が良ければ助けに来る。あと、これは貰ってくぞ」
ソヴァンはサーシャが持っていたライフルを没収し、屋根の上にサーシャを残したまま屋根から降りて行った。
「もー! レディーを置いて行くなんて最っ低~! 兄ちゃん達に言いつけてやるんだから~!」
置いて行かれたサーシャはありったけの声を上げて去っていくソヴァンに負け惜しみを叫んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていました~
あんねーむど
恋愛
栄養士が騎士団の司令官――!?
元社員食堂の職員・白城千鳥は、ある日突然「聖女」として異世界アルゼリオン王国に召喚される。
しかし期待された聖女の力はまったく発現されず、判明したのは彼女がただの一般人だという事実。
役立たずとして放逐されるかと思いきや、千鳥は王宮食堂で料理人として働くことに。慣れない異世界生活の中でも、栄養管理や献立作りを通して騎士たちの体調を支え、静かに居場所を築いていく。
そんなある日、問題児ばかりを集めた新設部隊アルゼリオン王国騎士団戦術騎士隊【アルタイル】 が発足。なぜか千鳥が司令官に任命されてしまう。
戦えない、魔法も使えない、指揮の経験もない。
困惑する千鳥を待っていたのは、王子である身分を隠している隊長のエドガー、年下で聡明だが一途すぎるノエル、俺様で口の悪い元衛士隊のクラウディオ、外見に反してサディスティックでマッドサイエンティストのフェルナンド、癖も事情も抱えたイケメン騎士たちだった。
最初は反発され、軽んじられ、失敗も重ねる千鳥。それでも彼女は騎士一人ひとりと向き合い、少しずつ信頼を勝ち取っていく。
聖女でも悪役令嬢でもない。戦場に立つことすらできない彼女は、やがて隊員たちを導く司令官として成長していく。
★にキャラクターイメージ画像アリ〼
※料理モノの物語ではありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~
ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」
中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。
そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。
両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。
手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。
「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」
可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。
16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。
13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。
「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」
癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる