転生少女は海賊の愛を得る

Ariasa(ありあーさ)

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 船の周りにも海軍兵士が沢山いたが、人質のナティアとナティアの首に当てられている剣を見ると兵士たちは悔しそうにしながら道を開け、無事に船に戻ることが出来た。
「ジゼル、すぐに出港して」
「言われなくても、もう出発します。ジャン、錨をあげろ! ティオン、動力機はもう起動してあるか!」
「命令するんじゃねぇ!」
「もちろん、ロゼちゃんが帰ってきた段階で、もう起動させておいたよ~」
 ジゼルの指示に、ジャンは不満を叫びつつも言われたとおりに錨を上げ、ティオンは大きなバトルアックスを担いだまま笑った。
「錨を上げたぞ!」
「では、出港する!」
 そう宣言するとジゼルは舵の横に設置されているレバーを下ろして動力機を稼働させると、大きな帆船は眠りから覚めた怪物のように咆哮を上げてゆっくりと動き始めた。
港では追う準備に取り掛かる海軍がせわしなく動き回っており、その中心にいるのはアロンで、テキパキと兵士たちに指示を飛ばしていた。
「おやおや、雑魚相手に手こずったんですか? ネオらしくない。ソヴァンも、避けるのが面倒だからって余計な傷を増やさないでください。船の上では満足な治療は出来ない事が多いんですよ。それとも、死にたいんですか? 私に解剖されたいのですか?」
「アロンの野郎があまりにもロゼを侮辱するから頭に血が上っちまった。デュオの手を煩わせて悪いが、弾を取り除いてくれ」
「……悪いと思っている」
 一方、負傷した二人はデュオの前に正座させられ、鬼のような形相のデュオに嫌味を言われていた。それでもデュオはすぐに医務室から道具を持ってきて、まずはソヴァンの腹の傷の処置を始めた。
「ソヴァン、なぜ刃物を抜いてしまったんですか。失血死しますよ」
「……アリアナを、怖がらせたくなかった」
「阿呆。ほら、止血しますよ。自分で止血したのでしょうが、まだ甘い。アリアナ、タオルを持ってきてください。出来るだけたくさん」
 ソヴァンの頭を殴りつけて強制的に横にさせると、デュオはオロオロとソヴァンとネオを心配そうに見ていたアリアナに指示を出した。その指示に、アリアナはようやく自分にできることが見つかったというように「はい!」とすぐに走って船内に入っていった。しかし状況は穏やかなものではない。ドンッと遠くから地響きのような音が聞こえると、その直後に船の横に水柱が立った。その影響で船は大きく揺れ、アリアナはその揺れに耐えられず転倒し、壁に体を叩きつけた。
「いったぁ~…。いったい何が…キャッ!」
 再びドーンと水柱が船のすぐそばで上がり、立ち上がろうとしたアリアナはしりもちをつく。立て続けに激しく揺れる船に、アリアナは立ち上がることを諦めて四つん這いで船内を進み、タオルを持てるだけ持つと激しい揺れに少しだけ慣れたアリアナは立ち上がり、壁に体を叩きつけつつも走って甲板まで戻った。
「デュオさん! 持ってきました!」
「ありがとうございます」
 デュオはこんな状況下であるにも関わらず、冷静な声でアリアナからタオルを受け取ると、傷口にタオルを押し当てて圧迫止血を開始した。ソヴァンはまだ意識があるものの、出血量が多かったのか意識がもうろうとし始めている様子だった。
「ソヴァン、気をしっかりと持ちなさい。気を失ったら気つけに塩を塗り込みますよ」
「ふっ、それは…痛みで目が覚めそうだ」
 冗談とも本気とも取れる口調で言うデュオに、ソヴァンは小さく笑ってそう答えた。
「アリアナ! あなたは船内に居なさい! ついでにナティアの見張りも頼んだわ! ネオ、持っていける?」
「あぁ、引きずるけどな。アリアナ、一緒に来てくれ」
 意識のないナティアの足を持ち、背中を引きずって船内に入っていくネオの後をアリアナは慌ててついていき、外からしか開けられない鍵付きの部屋に入った。
「アリアナ、足の方を持てるか? とりあえずこのベッドに縛り付けるから力を貸してくれ」
 この部屋には豪華な船には似つかわしくないほど物々しい雰囲気があり、数多くの刃物や鈍器などが陳列されていた。
「…ネオさん、この部屋は」
「拷問部屋だな。まあ、デュオが解剖するときにも時々使っているが。足持ったか? よし、乗せるぞ。1、2の3!」
 掛け声とともにナティアをベッドに乗せると、ネオが手際よくピッキングで手錠のカギを外し、縄で四肢を縛り付けて身動きが取れないようにした。
「これで良し。アリアナ、ちょっと怖いかもしれないが、この男が逃げないようにこの部屋で見張っていてくれ。もし、妙な動きをしたらためらわずにこの部屋にある物でこの男の動きを止めろ。でなければ自分が殺されると思った方がいい。鍵はアリアナに預けておくから、部屋の外に出る時は必ず鍵を閉めてくれ。見張り番、出来るか?」
 優しい声でアリアナの目をしっかりと見ながらそう言うネオに、アリアナはネオから手渡された鍵をしっかりと握りしめて「はい」と答えた。ネオはその返事に笑顔で「いい子だな」とアリアナの頭を撫でると、アリアナに背を向けて「頼んだ」と一言残して甲板へ戻っていった。

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