転生少女は海賊の愛を得る

Ariasa(ありあーさ)

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 ネオが部屋から出ていくと、アリアナは言いつけ通り部屋にとどまり、ナティアの見張りをし始めた。船は攻撃を受けているため何度も大きく揺れているが、強く縛り付けたのかナティアの体はベッドの上から落ちることはなく、アリアナの方が椅子からお尻を落としていた。
 しばらく砲弾の音が聞こえ、船は大きく揺れていたが、次第に音は小さくなって揺れる回数も減ってきた。そしてようやく音が消え、揺れも穏やかになると、アリアナはホッと肩から力が抜け、しっかりと椅子に座り直した。しかしその瞬間、パチッとナティアの目が開いて「待て!」と声を上げた。
「ひっ⁉」
「…また、あの時の夢か……」
 ナティアは大きく息を吐いて遠い過去を見るような表情で呟くが、その顔は酷く悲しげで今にも泣きだしそうだった。そして少しぼーっとした後、ゆっくりと首を動かしてアリアナの姿を確認し、他に見張りがいないことも確認するとナティアは苦笑を漏らした。
「随分と可愛らしい見張り番を置いたものだな。ロゼは。…それに、殺さないなんて相変わらず甘い」
 苦笑交じりに呟くもアリアナの耳にはその声が届いておらず、ナティアが起きたことにどう対応すればいいか分からないアリアナは混乱して部屋の隅まで逃げていた。その行動を見たナティアは「そんなに怖がるなよ」と笑い、ちょいちょいと動かせる範囲で手を動かしてアリアナを呼んだ。
「この通り、俺は今縛られて動けないんだからそこまで怖がる必要はないぞ。せっかく可愛い女の子が俺の見張りをしてくれてるからちょっと話をしようと思っただけだ」
「…ネオさんが、妙な動きをしたらこの部屋にある物で動きを止めろって言ってて…」
「ハハッ、さすがネオ。抜かりないな。でも安心しろ。さすがにこの縛り方だと抜けようがない。アリアナが俺の縄を解かない限り、俺は逃げられないってことだ。だから、せっかくだし話をしないか」
 この男はこの状況でどうして笑っていられるのか。アリアナは不思議に思いながらもおずおずと座っていた椅子の所まで戻り、ちょこんと腰を下ろした。
「それにしても、不思議なんだよなぁ。なんでロゼはアリアナを溺愛しているのか。何かしたのか?」
「いえ…私もなんでロゼさんに気に入られたのか分からなくて。でも、可愛がってくれるロゼさんには感謝してます。もし、あの時ロゼさんに船に乗せてもらってなかったら私、たぶん捕まって死んでましたし」
「まあ、役人も馬鹿じゃないから確実に捕まえるだろうな。でもまさか、海賊船に乗るなんて思ってなかったんだろうな。海軍にまで捕縛の要請が来るのは滅多にない。だから、どれほどの悪人かと思ったんだが、こんなに可愛いお嬢さんだとは思わなかったよ」
 ニッと笑ってそう言うナティアに、アリアナは困ったように笑ったあと悲しそうに目を伏せた。
「でも…お父様もお母様も本当に王家に反逆なんてしようなんて思ってなかったし、そもそも王家に反感を抱いていた様子もなかった。…なのに、あんな死に方…」
 ジワリと目に涙が浮かび、うつむくアリアナにナティアは眉を八の字にして困り「何か貴族の反感を買ったんじゃないか?」と声をかけるが、アリアナの涙はぽつぽつとあふれ始め、スカートに小さな丸いシミが増えていく。
「本当に、なんであんな事になったのか分からないんです。私の家は下級貴族でしたが、どこの家ともトラブルを起こした事はないですし、父も母も勤勉な人でした。そして、私にたくさんの愛をくれた……。少なくとも、あんな死に方をするべき人たちじゃなかった」
 悲しみを吐露し、わっと泣き出したアリアナにナティアはしばらく困ったようにアリアナを見つつ、少し落ち着いたタイミングでアリアナに声をかけた。
「そうか…。可哀そうに、両親が殺されてさぞ悲しいだろう。俺も、もし家族が殺されたら悲しくて悲しくて、しばらく立ち直れないだろう。…なあ、俺がアリアナの両親は本当に王家に反逆しようとしていたのか調べ直してやろうか?」
 真剣な表情でそう提案するナティアに、アリアナは流れる涙をそのままに「えっ」とナティアを見た。ナティアは顔を上げたアリアナに優しく笑いかけながらさらに言葉を続ける。
「幸い、俺はありがたくも最近海軍将校に昇格し、権力を手に入れたんだ。だからそれを使えば真相が分かるかもしれない。将校は、必要があれば他の機関への介入が許される地位なんだ。魅力的だろう?」
「そう、なんですか?」
「あぁ。だから、俺なら法務局の方に探りを入れられる上にもし本当に無実であれば、アリアナもアリアナの両親も、晴れて罪人というレッテルから解放される」
 聞き手を引き込むうまい抑揚がつけられた口調で話すナティアに、アリアナはすっかりと引き込まれ、椅子から立ち上がってナティアの近くにフラフラと歩み寄る。
「でも、このままじゃ俺は何も出来ない」
 悔しそうに握りしめた拳を動かそうとするも、ビクともしない。
「…だから、俺の縄を解いてくれないか」
 ナティアは真っすぐにアリアナを見つめた。

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