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部屋で疲れ果てて眠っていたアリアナが次に目を覚ました時には随分と日が傾き、日中ずっと眠ってしまっていたのだとけだるい体をのっそりと起こした。いまだズキズキと痛む秘部が自分の受けた行為は現実だったのだと思い知り、体が火照った。そして、恥ずかしさをやり過ごすと、喉の渇きを感じて厨房へ水をもらいに行こうと部屋を出た。
食堂へ近づくと、すでにいい匂いが漂ってきていて、今日の夕食は何だろうと楽しみに思いながら食堂に入った。
「アリアナ、どうした。夕飯はまだもう少し先だ」
食卓に料理を並べていたティタが珍しい来訪者に驚いたように目を軽く見開くと、料理を置いてアリアナの方へ歩み寄った。
「ティタさん、準備中にすみません。喉が渇いてしまって…。水をもらいに来ました」
「なんだ。呼べば部屋まで持っていったのに」
「忙しいのに悪いですよ」
さりげなく椅子を引き、アリアナに座るよう促しながらそう言うティタに、アリアナは椅子に腰を掛けながら笑う。
「優しいな。待ってろ、美味いものを作ってきてやる」
「え、あ、忙しいのにすみません」
「いい。俺が勝手にしているだけだ。…あ、つまみ食いはするなよ」
フッと笑って厨房の方へ戻ると、すぐにティオンが厨房から顔を出してアリアナの姿を見るとパッとその顔に笑顔が浮かんだ。
「アリアナちゃん、いらっしゃ~い。体調はどう? 今日も味付けの濃いものばかりだけど食べられそう? もしきついならアリアナちゃんのために別メニュー作るよ~。まあ、今からだから簡単なものになるけど」
「え、いえ。そんな私のためになんて悪いですよ」
「遠慮しなくていいよ~。ロゼちゃんもたまに具合悪くして別メニュー作るときあるし、野郎どもも同じく体調がすぐれないときは別メニューを作ってるから。その人に合わせたメニューを提供するのが俺達コックの仕事。だから遠慮なんてしないで? だから正直に答えてね。ちゃんとご飯食べられる?」
ティオンが、ずいっと嘘は見逃さないというようにアリアナに顔を近づけると、アリアナは目の前に来た綺麗な顔に少し慌てつつ笑顔で「食べられます」と答えた。
「本当?」
「はい、ここに来るときも漂ってくる匂いで、ご飯楽しみだなーって思ってたくらいなので」
アリアナの言葉に、ティオンは嬉しそうに笑ったあと「そっか、なら良かった」とアリアナから離れた。
「じゃあ、飛び切り美味しいご飯を作るから楽しみに待っててね」
ひらひらと手を振りながら、スキップでもしそうなくらい軽い足取りで厨房へ戻っていくティオンの背を、微笑ましく思いながらアリアナは見送った。
「待たせた。ココアだ」
「わ、ありがとうございます」
厨房から出てきたティタが差し出したココアから白い湯気がフワッと漂い、甘い香りとともにアリアナの鼻腔をくすぐる。その甘い香りに思わず頬が緩み、それを見たティタも同じように頬を緩める。
「ゆっくり飲んでいくといい」
「はい、ありがとうございます。忙しい時にわざわざありがとうございます」
「気にしなくていい」
ティタは柔らかい表情のままそう言い残すと再び厨房へ戻っていき、アリアナは温かいココアにホッと心を落ち着かせながらゆっくりとココアを飲んだ。
すると食堂のドアが開き、のっそりとソヴァンが入ってきた。潮風に長く吹かれていたせいか髪が乱れ、体温が奪われてしまったのかあまり体調がすぐれているように見えなかった。しかし、アリアナが座っているのを見ると、少し驚いた表情を浮かべた後に花がほころんだような柔らかい笑顔になった。
「いたのか」
「はい。喉が渇いちゃって。ソヴァンさんは?」
「夕食の変更を頼みに。重いものはきつくてな」
苦笑をしながら刺された所をさするソヴァンに、アリアナは心配そうに眉尻を下げる。それを見てソヴァンはアリアナに近づくとそっとアリアナの頭を撫でた。
「大丈夫。デュオのおかげで状態は悪くない。心配かけて悪い。…でも、許されるなら今夜はアリアナを抱きしめて寝たい」
「えっ!」
「…何もしない。ただ、ぬくもりが欲しいだけだ。…アリアナと寝てから、一人で寝ると寂しくて、な。子供じゃないのに、おかしいと思うが……」
驚きと表情のこわばりを見たソヴァンは、自嘲気味に笑いながら素直に自分の気持ちを吐露する。
「ソヴァンさん…」
「…部屋に行ってもいいか?」
断られるんじゃないかという緊張が伝わる少しかすれた声に、アリアナは健気さを覚えてキュッと心臓が小さく締め付けられた。それでも、今朝方犯された身としてはやはり恐怖心はぬぐえない。
「…本当に、何もしませんか?」
「あぁ。触れてほしくないのなら、ただ近くに居てくれるだけでいい。……もし、信じられないなら、俺の短剣をアリアナに預ける。身の危険を感じたらそれで俺を刺していい」
「……わ、かりました。何もしないなら、良いですよ」
自分を刺してもいいとすら言うソヴァンにアリアナはおずおずと許諾する。アリアナの返事を聞いたソヴァンはホッとしたように表情を和らげて「ありがとう」と礼を言うとアリアナから離れた。そして何事もなかったかのように厨房へ顔を出し、メニューの変更を頼んでいた。
アリアナはソヴァンが食堂から出ていくのを見送ると、ぬるくなったココアを飲み干した。
食堂へ近づくと、すでにいい匂いが漂ってきていて、今日の夕食は何だろうと楽しみに思いながら食堂に入った。
「アリアナ、どうした。夕飯はまだもう少し先だ」
食卓に料理を並べていたティタが珍しい来訪者に驚いたように目を軽く見開くと、料理を置いてアリアナの方へ歩み寄った。
「ティタさん、準備中にすみません。喉が渇いてしまって…。水をもらいに来ました」
「なんだ。呼べば部屋まで持っていったのに」
「忙しいのに悪いですよ」
さりげなく椅子を引き、アリアナに座るよう促しながらそう言うティタに、アリアナは椅子に腰を掛けながら笑う。
「優しいな。待ってろ、美味いものを作ってきてやる」
「え、あ、忙しいのにすみません」
「いい。俺が勝手にしているだけだ。…あ、つまみ食いはするなよ」
フッと笑って厨房の方へ戻ると、すぐにティオンが厨房から顔を出してアリアナの姿を見るとパッとその顔に笑顔が浮かんだ。
「アリアナちゃん、いらっしゃ~い。体調はどう? 今日も味付けの濃いものばかりだけど食べられそう? もしきついならアリアナちゃんのために別メニュー作るよ~。まあ、今からだから簡単なものになるけど」
「え、いえ。そんな私のためになんて悪いですよ」
「遠慮しなくていいよ~。ロゼちゃんもたまに具合悪くして別メニュー作るときあるし、野郎どもも同じく体調がすぐれないときは別メニューを作ってるから。その人に合わせたメニューを提供するのが俺達コックの仕事。だから遠慮なんてしないで? だから正直に答えてね。ちゃんとご飯食べられる?」
ティオンが、ずいっと嘘は見逃さないというようにアリアナに顔を近づけると、アリアナは目の前に来た綺麗な顔に少し慌てつつ笑顔で「食べられます」と答えた。
「本当?」
「はい、ここに来るときも漂ってくる匂いで、ご飯楽しみだなーって思ってたくらいなので」
アリアナの言葉に、ティオンは嬉しそうに笑ったあと「そっか、なら良かった」とアリアナから離れた。
「じゃあ、飛び切り美味しいご飯を作るから楽しみに待っててね」
ひらひらと手を振りながら、スキップでもしそうなくらい軽い足取りで厨房へ戻っていくティオンの背を、微笑ましく思いながらアリアナは見送った。
「待たせた。ココアだ」
「わ、ありがとうございます」
厨房から出てきたティタが差し出したココアから白い湯気がフワッと漂い、甘い香りとともにアリアナの鼻腔をくすぐる。その甘い香りに思わず頬が緩み、それを見たティタも同じように頬を緩める。
「ゆっくり飲んでいくといい」
「はい、ありがとうございます。忙しい時にわざわざありがとうございます」
「気にしなくていい」
ティタは柔らかい表情のままそう言い残すと再び厨房へ戻っていき、アリアナは温かいココアにホッと心を落ち着かせながらゆっくりとココアを飲んだ。
すると食堂のドアが開き、のっそりとソヴァンが入ってきた。潮風に長く吹かれていたせいか髪が乱れ、体温が奪われてしまったのかあまり体調がすぐれているように見えなかった。しかし、アリアナが座っているのを見ると、少し驚いた表情を浮かべた後に花がほころんだような柔らかい笑顔になった。
「いたのか」
「はい。喉が渇いちゃって。ソヴァンさんは?」
「夕食の変更を頼みに。重いものはきつくてな」
苦笑をしながら刺された所をさするソヴァンに、アリアナは心配そうに眉尻を下げる。それを見てソヴァンはアリアナに近づくとそっとアリアナの頭を撫でた。
「大丈夫。デュオのおかげで状態は悪くない。心配かけて悪い。…でも、許されるなら今夜はアリアナを抱きしめて寝たい」
「えっ!」
「…何もしない。ただ、ぬくもりが欲しいだけだ。…アリアナと寝てから、一人で寝ると寂しくて、な。子供じゃないのに、おかしいと思うが……」
驚きと表情のこわばりを見たソヴァンは、自嘲気味に笑いながら素直に自分の気持ちを吐露する。
「ソヴァンさん…」
「…部屋に行ってもいいか?」
断られるんじゃないかという緊張が伝わる少しかすれた声に、アリアナは健気さを覚えてキュッと心臓が小さく締め付けられた。それでも、今朝方犯された身としてはやはり恐怖心はぬぐえない。
「…本当に、何もしませんか?」
「あぁ。触れてほしくないのなら、ただ近くに居てくれるだけでいい。……もし、信じられないなら、俺の短剣をアリアナに預ける。身の危険を感じたらそれで俺を刺していい」
「……わ、かりました。何もしないなら、良いですよ」
自分を刺してもいいとすら言うソヴァンにアリアナはおずおずと許諾する。アリアナの返事を聞いたソヴァンはホッとしたように表情を和らげて「ありがとう」と礼を言うとアリアナから離れた。そして何事もなかったかのように厨房へ顔を出し、メニューの変更を頼んでいた。
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