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 ココアを飲み終えたアリアナはそのまま食堂に居座り、 双子の仕事を眺めながらたまに簡単な手伝いをして過ごした。
 そしていつものように賑やかな食事となり、それが終わるとそこからは各々好きな時間となる。食事が終わったアリアナは部屋に戻るとソワソワと落ち着かない気持ちになり、意味もなく髪を構ったりベッドに顔をうずめたりして、気持ちを落ち着かせようとした。しかしそうしている間にコンコンとドアがノックされた。
「入ってもいいか」
 ドアの向こうからソヴァンの声が聞こえ、アリアナは「はいっ」と上ずった声で返事をした。その声にアリアナは羞恥心に赤面し、入ってきたソヴァンは苦笑をしていた。
「…そこまで緊張しなくても、何もしない」
「すみません…」
 言いながら、アリアナが座っているベッドまで近づき、腰に差していた短剣をスッとアリアナに差し出した。アリアナは短剣を受け取りながら必要以上に警戒している自分に自己嫌悪した。それが表情に出ていたらしく、ソヴァンはおずおずとアリアナの頭に手を置くとゆっくりとアリアナの頭を撫でた。
「気にしてないから、そんな顔をするな。…抱きしめていいか?」
 うつむくアリアナに、ソヴァンは優しい穏やかな声で問いかけると、アリアナはギュッと短剣を握りつつもコクリとうなずいた。それを見たソヴァンは不安を和らげたいと、ゆっくりと動いて優しく包み込むように抱きしめ、ゆっくりと背中を撫で始めた。その優しく温かい腕はアリアナの中にあった不安をゆっくりと溶かしていき、緊張でガチガチになっていた体から徐々に力が抜けていった。
「……少し、横になった方がいい。まだ体は辛いんだろう?」
「はい…実は。すみません…」
「いい。横になれ」
 ソヴァンはアリアナから少し離れると肩と膝裏に腕を回してひょいっと簡単にアリアナをベッドに横にさせた。そして自分もアリアナの隣に横になると、満足そうな穏やかな微笑みでアリアナを見つめた。
「あの、ソヴァンさん?」
「あ、すまない。この距離は嫌か?」
「いえ…ただ、あまり見つめられると恥ずかしいです…」
「すまない」
 謝りながらも特に何かをすることなくアリアナを見つめており、アリアナはくすぐったいような居心地悪いような心地になった。そして、その居心地に耐えかねてアリアナが口を開いた。
「あの、ソヴァンさん。気になっていた事があるんですけど、聞いてもいいですか?」
「ん、なんだ」
「壁に掛けられていた写真はソヴァンさんのお仲間だった人なんですか? とても生き生きとしていたなぁって思って」
「あれか。……あれは、父と母が写っている写真だ。傭兵時代、父と母が戦死した時に、仲間から貰った。俺がまだ赤ん坊の時に戦い、勝利した時の写真らしい」
「えっ、じゃあ、まさか赤ちゃんを抱いて銃を掲げていた女の人がソヴァンさんのお母さま?」
 驚きに目を見開いて言うアリアナにソヴァンはうなずきながら「とても明るい人だった」と懐かしむように目を細めた。そしておもむろに傭兵時代の話をし始めた。

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