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初夜です

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 ううむ。困った。

 でも、隠し事はよくない。よくないから打ち明けよう。打ち明けなきゃ。

 でも、その前に。

 お腹が空いたから食事を終えた後に切り出そう。

 うん。そうしよう。

 なんていったって、今日はマルゲリータだから!!

 あ、そういえばピザってお店で食べるものなの? バイク乗ったお兄さんが届けてくれるんじゃないの? そろそろサンタの格好で来てくれる頃なんじゃないの?(冬に入ったばかりだけど)

 といった具合に。宅配ピザしか知らない僕は、この後またもや驚かされることとなる。

 だって……。

「ここ、どこですか?」

「ホテルです」

 目的地に着いた車から降りて早々、僕たちが入った建物。そこには定番のクラシックが流れる煌びやかなロビーが。

 どう見ても、カラオケボックスには見えません。

 さすがに慌てる僕。

 その理由は。

「が、学生服で、来ちゃったんですけど」

 今日は旦那さまに会う大切な日だったから。

 スーツがないので学ランで来ていました。

 テレビで見たことはあっても、実際に大きなホテル(しかも高級感っぽいのが漂ってる)の中に入ったことのない僕は、こういった場所に学ラン姿でいていいのかどうか、わからなかった。

 辺りを見渡せば、かなりラフな格好をしている人たちもいることにはいるんだけど。僕以外の学生服の人は見つからなかった。海さんはスーツだから問題ないだろうけど、僕は? これ、いいの?

 きょろきょろと、左右に首を動かす僕に、海さんはやっぱり大人だからなのか。

「ああ、心配ありませんよ」

 特に表情も変えず、平然と言ってのけた。

 僕はその一言で安心を得た。

「お前は単純だな」と、以前言われたこの言葉が、なぜだか頭の中でリピートされた。

 それから、ホテル内に入ったときから気になってたんだけど。ちくちくと、感じるいくつもの「何か」。再びきょろきょろと、しかし視線だけを泳がせてみる。

 なんなんだろ? なんかこー、直接的な攻撃みたいなのじゃなくて、う~ん……なんていうんだろ。なんか、懐かしいけどあんまりいい思い出のない「これ」はいったい……。

「あ」

「何か?」

 泳がす視線はふと、ロビーを抜けた奥にある、公衆電話を捉えた。

 それまで海さんに連れられるまま歩いていた僕は、そこでピタリと足を止めてしまい、海さんもそれに気づいて立ち止まった。

 悪いと思いつつも、僕は電話に向かって指をさして、彼を見上げた。

「あの、電話を……」

「電話?」

「電話、してきてもいいですか?」

「真城になら、もう連絡しましたが」

 さすがは旦那さま。連絡は早かった。

 でも。

「もう一人、連絡したい人がいるんです」

 僕の頭の中にあったのは、残念ながら真城ではなかった。

「だめ、ですか?」

 じっ、と。

 刹那の間だけ、海さんは僕を見つめて。

「いえ」

 と、首を横に振った。

「では、ロビーで待っていますから。ゆっくり掛けてきなさい」

「うんっ。ありがとう!」

 ニコリとはしなかったけど、その言葉には優しさが乗っていた。

 それがなんだか嬉しくて、少し大きな声でお礼を言った。すると、海さんは一瞬だけ驚いたように目を瞠って。……けれども、すぐに彼は目を細めて、何も言わずに僕から離れて行ってしまった。

 何か驚かせたんだろうか?

 僕の顔を見て、だよね? 笑っただけなんだけど。僕の笑った顔、そんなに変だったかな?

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