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突撃! 新婚さんの晩御飯

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 ――――…




「へ~、僕って金髪だったんだ」

「つっても、元からじゃなくて中学に上がってからだったらしいけど。なんか賭けに負けたとかで染めたって言ってたし。小学生の頃なんかは今と変わらないんじゃない?」

「でも、髪も長かったし。俺らは当初別のクラスだったから、柳のこと女の子だと思ってたんだよね」

「それが同じ学ラン着てたもんだから驚きも半端なくってさ。え? マジで!? みたいな」

「私は一年以上、柳のことをお姉さんだと思ってた」

「私服は誰かからのお下がりとかで、今より派手でお洒落で可愛かった。靴もスニーカーだけじゃなくて、サンダルとか、ロングブーツも履いてたし……」

「ものすげぇ可愛かった。今も可愛いけど」

「そんじょそこらの女よりも可愛かったもんな。今も可愛いけど」

「柳はいつだって可愛い」

「そんなに可愛いって言われると、男として複雑なんだけど……ごめん。全然覚えてないや」

 みんなの口から語られたのは、びっくりもびっくりの内容だった。僕が僕自身のことを忘れているだなんて……そんなことって、本当にあるんだね。健忘? 記憶喪失っていうやつなんだろうか? 自分が金髪だっただなんて言われても「嘘だ~」くらいにしか思えないんだもん。

 それに、葉月達のことははっきりと覚えているのに、二年よりも以前の自分のことだけを忘れているなんて、そんな不思議な記憶喪失があるだなんて、どうしたって驚きを隠せない。だって、日常生活に支障なんてほとんどなかったもん。悩んでいたのは、たまに起こる頭痛や真っ白になっちゃう頭のことで……。でも、これが記憶喪失と関わっている、んだよね?

 しかも、僕自身が覚えていない交通事故。おでこにできている、大きな縫い傷はその時の物だってことは、真城でお世話になっていた時に龍一様から聞いていた。走っている車にぶつかって命に別状はなかったけれど、外傷がひどくて、長い日数をベッドで過ごしていたって。僕、その時のことも覚えていないんだ。いつの間にか、真城が僕の家になってて、進学する高校も決まっていたわけだし。

 高校。そう、高校も、真実が進学した高校を受験していただなんて、それすらも覚えていない。受験ってことは、転校前の高校と同様に、受験するために勉強していたんだろうし。そっちは覚えているのに、今の学校のことは覚えていない。

 チラリ、と。隣にいる海さんを見る。海さんは、みんなの話を黙って聞いていた。そういえば、どうして海さんは、僕に今の学校へ転校するよう言ったんだろう? 偶然? 理由は前に、女の子にモテるのを防ぐため~って聞いていたけど、海さんが話していないだけで、実は僕の知らない本当の理由があったりする?

 うう~ん。混乱してきたぞ。そういう時は、海さん特製のチャイを飲むに限るよね。僕は落ち着きを取り戻すべく、少し冷めてしまったカップに手を伸ばした。ぬるいチャイが、いつの間にか乾燥していた喉を潤してくれる。

「ごくごく」

 とにもかくにも。記憶なんちゃらについては、その事故が原因だってことだね。そしてその事故の起因が、蒼さんにあるんじゃないかって話なんだけど……。

「全然覚えてないんだよね。どうして事故に遭ったんだろ?」

 う~んと唸ってみても、思い出せないものはしょうがない。葉月たちも、首を横に振った。

「それは俺達もわからないけれど、確かにあの日、柳は蒼のオッサンの家に帰ったはずなんだよ」

「ほら、門限あっただろ。それを破ると、あのオッサン超恐かったし」

 ああ~、あったね。門限。時間に厳しい人だったから、少しでも遅れたりすると、拳骨だったんだよね。僕は痛くもない自分の頭を擦った。

「もしあの当時、柳があの家に帰っていなかったんだとしたら、オッサンが『ロワゾ』へ連絡してくるからな。だから、柳は一旦あそこに帰ってるんだよ」

 僕は携帯電話を持っていなかったからね。だから蒼さんは、僕が通っていた学校だけでなく、よく足を運ぶ「ロワゾ」や、それ以外に利用する場所と連絡先を把握していた。でも、電話嫌いだったから、滅多に連絡を取ることはなく。彼がどこかへ連絡を取る時は大抵怒ってるんだよね。

 でも、それがなかったってことは、みんなが言うように、僕は一旦蒼さんのところへ帰っていたんだろう。はて、何があったのかな?

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