平和国家異世界へ―日本の受難―

あずき

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教国編

ヌリア大廃坑と特殊作戦群

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~アヌリア聖王国地底・ヌリア大廃坑・採掘ベースキャンプ~
アヌリア聖王国首都、ヌリア。
その地下に存在する巨大な廃坑にて……

「働け!」
「ぐはっ!?」

教国兵に連行された属国の人々は、奴隷として働かされていた。

「おらぁ! さっさと運べよ!」
「ぐふっ!?」

重い荷物を背負わされ、ろくに整備もされていない道をはだしで歩く。
足の裏から伝わる痛みが全身へと駆け巡り、身体中が悲鳴を上げる。

「うぅ……」
「くそぉ……こんなことって……」
「なんで俺達が……」

奴隷達はみな涙を流しながら、労働を強いられていた。
この廃坑はかつて、ここに存在した巨大国家がつくったものだ。
かつての国家が開発した際、多くの鉱石が採掘されたが、
魔鉱石などはまだまだ大量に残っている。
魔石を加工して作る魔力灯などは、教国の貴重なエネルギーとなっている。
そのため、属国の国民を使用し、掘り出しているのだ。
ここの様な廃坑は他にもあるようだが、そのほとんどが崩壊している。
綺麗に残っている廃坑は珍しいのだ。

教国はこのような廃坑を見つけると、属国民を強制的に連れてきて働かせる。
この廃坑は巨大なので、まだ完全に探索しきれていない。
しかしそれでも、教国のエネルギーほぼすべてを賄える量の魔石を掘り出せるらしい。

「うぅ……さむいぃ……」
「くそっ……くそっ……」
「もう嫌だよ……」

この廃坑は地底深くにあるため、気温が低い。
そんな過酷な環境の中、教国に反抗的な態度をとった者は容赦なく殺されてしまう。
逆らう事すらできないのだ。

「おい! 何サボってんだ!?」
「ひっ!? す、すみません!!」

少しでも手を休めると殴られる。
それは拷問のような苦しみだった。

「ひゅー……ひゅー……」

そんな中、一人の男が倒れた。
長時間労働により衰弱し、倒れてしまったのだ。

「あ?……ッチ、使えねぇな!」

教国兵の命令により、他の奴隷が男を持ち上げる。
そして、魔石加工用の炉にほうり込んだ。
男は焼かれながら、必死にもがき苦しんでいる。

「こうすりゃ、少しは早く溶けんだろ」
「ぎゃああぁぁぁーー!!?」

炉の中に放り込まれた男の断末魔を聞き、周りの者達の顔色が青ざめていく。

「……おい、なに休んでんだ!」
「ひっ!? ごめんなさい!! すぐにやりますから!」

再び、強制労働が再開された。

(誰か……助けて……)

この地獄の中で、多くの者が救いを求めていた。
***
~アヌリア聖王国地底・ヌリア大廃坑・深部搬入港~
大廃坑の中でも、教国に発見されているのはほんの一部だ。
教国の発見していない地域は、『深部』と呼ばれる。
ここは、『深部』の沿岸部。
そこに位置する、かつて使われていたであろう搬入港だ。

「……よし、誰もいないな」

そう言うと、潜水服を着た人間が岸に上がった。
彼の名前は鈴木。特殊作戦群所属の自衛隊員だ。
彼は今、仲間と共に『深部』に侵入。
そして、レジスタンスたちと合流しようとしている。

「相手は……まだ来てないな」

鈴木は周りを見回しながら、そうつぶやいた。
周りには廃墟が並んでいて、上を見ると大量のベルトコンベアが通っていた。
スラッグの山が多数存在し、かつては採掘が盛んであったであろうことがわかる。

「全員いるか?」
「はい、大丈夫です」

どうやら全員が揃ったようだ。
彼らはこれから、ここに立つ廃墟たちを拠点にする。
そして、この廃坑内に存在するすべてのレジスタンスと合流する予定だ。

「しかし、古いな」
「えぇ、かなりボロボロですね……」

この廃坑はかなり古く、所々が崩れている。
いつ崩落してもおかしくはないほどだ。

「まぁいいさ、俺達の隠れ家としては十分だ」

***
その後、鈴木たちはレジスタンスと合流。
廃坑深部に拠点を製作し、活動を開始した。
***
「ん?これは……地図か?」

数日後、隊員の一人が地図の様なものを発見した。

「ちょっと見せてくれ」
「はい」

その地図を見た鈴木は驚愕した。
この廃坑内の構造について詳しく書かれていたからだ。

「これ、もしかしたらこの廃坑全体のマップかもしれませんね」
「ああ。そうだな」

その地図には、彼らのいる深部から、教国が開発している場所までも記されていた。

「これは、使えるな」

この地図を使えば、廃坑内を安全に移動できる。
敵のいる地形も把握できるので、奇襲を仕掛けることだって可能だ。

「とりあえず、これをもとに今わかってる情報を書き足した地図を作るか」
「そうですね」
***
特殊作戦群の面々は、鉛筆でさっと地図を描いた。
崩れている場所以外は元の地図をもとに書かれており、
廃坑の大まかな構造がわかるようになっている。
まあ、字は汚いのだが……読めればいい、という事である。
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