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幼少期を楽しみましょう
王妃様主催のお茶会
しおりを挟むカタコトと馬車の車輪が音を立てて、王宮への道を進んでいる。
リモナイト王子様にお菓子を差し入れるという目的を承ったその日から、何度か通い慣れた道ですが、今日は気分がだだ下がりです。テンション上がらない…。いや、王宮に行くときはいつも面倒なのでテンション低いですけどね。今日は更にです。
「もうすぐ着くよ、アリア」
「はい、アイクお兄様」
今日着ているドレスは、お母様が選んでくれた薄い紫に同色のフリルとレースがあしらわれた、七歳の少女が着るにしては少し大人っぽいデザイン。まぁ、ピンクのフリフリとか出されても無理だけどね。もう一人のヒロインちゃんの方がきっと似合うな。
記憶にある容姿は、ストロベリーブロンドの揺るやかなウェーブした髪に、空色の瞳。白い肌と薄紅の唇。プレイヤーの間でも天使ちゃんと呼ばれていた程の美少女です。アメーリア選択によるヒロインちゃんの初期設定攻略対象はラズーラ=クラスター第一王子様で、攻略難易度は低い初心者用。最初から好感度がMAX200として、50からスタートしているのです。アメーリアは0ですけどね。
オープニングは幼少時だったので、多分そろそろあるはず。それゆえか、王宮に行くのがいやというか、面倒というか、ぶっちゃけ行きたくない。物語始まらなくてもいいよ、モフモフだけくれ。
というのも実は、これから王妃様主催のお茶会に招待されています。
お茶会と言うのは、貴族の社交の場の一つでもあります。だいたいが貴族の奥様達が情報交換の為に開いたりするんだけど、今回は王妃様主催という参加必須もの。十歳前後の貴族の子女が集められており、勿論お兄様も御呼ばれしている。
私はリモナイト王子様のお菓子係り、アイクお兄様はラズーラ王子様の側仕え兼ご学友。兄妹共に王宮には何度も足を運んで居ますが、今日は侯爵家としての御呼ばれですから緊張と重圧が半端ない。
(今日も遊べなくてラーヴァに泣きつかれた…、私だってラーヴァと遊んでいたい)
馬車の窓に頭を寄せ、出掛ける前の愛しい可愛い弟を思い出す。蜂蜜のような色合いの瞳に涙を浮かべて、ドレスを掴んで離さないラーヴァを抱き締めたかった。容赦なく乳母と侍女に離されましたけどね。
モフモフライフが近付いているのは嬉しいけれど、本当に出逢えるのかは分からない。それに、私がこの世界にいるっていうのなら、私と同じ立場になっている子もいるのだろうか?異世界転生ものの小説や漫画を見ていたから思う謎に首を傾げる。
ゲームには闇の守護聖獣との出会いは描かれてなかったし、それは光の守護聖獣も同じだと思う。どこからゲームの設定のままで、どこから現実なのか分からなくなってしまう。
(魔法が存在するのは、本当だった)
目を閉じて自分の身体に流れる魔力の循環を感じていると、リモナイト王子と一緒に忍び込んで受けた魔法の講義を思い出す。ラズーラ王子様とアイクお兄様が受けていた講義に、二人で突撃しちゃったんですけどね?お菓子のお裾分けに行ったのですが、授業中だったのです。
各属性に居る守護聖獣と呼ばれる存在、其の中でも上位なのは光と闇。本格的な魔法を学ぶのは十歳になってからですが、魔力の循環方法や基礎なら教えて貰えた。
それで分かったのですが、私は基礎魔力量が人よりも多いようです。MPの数字化はゲームならステータス画面で見れたんですけどねー?今はどうなんでしょう?きっとゲームでは一番だったラズーラ王子様よりも多いと思うんです。
(其れを知った時のラズーラ王子様が怖かった、獲物をロックオンした感じで目が光ってた)
ガクブルと震えつつも、辿り着いた王宮に、お父様とアイクお兄様と一緒に会場でもある、王宮の中庭へと連れて行かれた。さぁ、ゲームのオープニングの始まりですよ。迷子になった初心者用ヒロインちゃんが始めての王宮で迷子になり、攻略対象者に助けられるのです。顔は分からないんですけどね?此処大事ですよー、テストに出るよー!ってんなわけないって。出ない出ない。
まずはお茶会を乗り切る為にも、気合を入れましょうか。
「見事な庭園ですわね、アイクお兄様」
「うん、いつ見ても綺麗だよね」
流石はクラスター王国が誇る王宮の中庭です、色取り取りの綺麗な花が所狭しとばかりに咲き誇っていて、丁度今が見頃といった所でしょうか。そんな中庭にも、小さな令嬢達の色取り取りのドレスがふわりと広がっていて豪奢な華ですよ。
(…ああ、このまま此処で眺めるだけにしていたい)
私、思いっきり気後れしてます。はい。
あと、交流するのがめんどくさい。貴族の交流めんどくさい。大事なことなので二回言いました。
可愛いなぁ、微笑ましいなぁって思いはあるんですよ?このおばちゃん思考ってヤバイ?でも、目の前には着飾った可愛い可愛いショ(…ごほんっ)上位貴族の小さな令嬢達が揃っています。いや、見てませんよ!?可愛い男の子ばっかり見てませんからね!?うちのお兄様とラーヴァが一番可愛いとか、ブラコン丸出し精神はしっかりと心の中に隠してますからね!
「アリア、仲良しの令嬢友達と話をしに行かないの?」
「ええーっと…」
アイクお兄様にの腕に掴まって、しっかりとエスコートされてやっては来ましたが。こんなキラキラした風景に私が紛れ込んでもいいのだろうか。公式通りにいくなら、アリアはツンッと気取って、一人でも優雅にお茶を楽しんでいてもよくて、令嬢友達は知らずと寄ってくるんだとか。言い方は悪いけど、取り巻きっていうんでしょうか?そういう友達もなぁ…。成長するに従って、アイクお兄様や王子様達目当てに寄ってくるんでしょ?
取り巻きを多く引き連れて、傍から見れば悪役令嬢のようなアメーリアを想像して、あの高笑いの似合いそうな行動を私にやらせるとか、ハードル高すぎるわ!!私は脱力系の令嬢です!(キリッ!)
「アイクお兄様…、人が、多いです」
「体調でも悪いの?いつもなら友達と一緒になって楽しそうにしてたけど、最近ラーヴァと一緒だったり単独で王宮に来るのが多かったから、話が合わない?」
「え、ええ、まぁ…。王宮のお話は出来ませんので」
「女の子ってドレスとかキラキラした物の話ばかりかと思ったけど、違うんだね。王子様の話が一番聞きたいのかな」
(世間一般的な女の子、若しくは貴族令嬢ならそうかもね。小さくても女は女なんですよ)
そう、小さくても躾をされた令嬢でも、女は女なのです。高スペックの旦那を捕まえたい人は、何処にだっている。家からそう躾けられているんです。出来る限り上を目指せ、上位の家に嫁げと。我が家は侯爵家ですし?結構上位ですし?なんなら、王妃様がアトランティ家の親戚ですからね。
ギラギラした瞳が、アイクお兄様へと向けられて、敵意の視線が私へと向けられています。
いーやー、誰かたすけてー。私は攻略する気なんて無いデスよ。王子様と幼馴染みという立場になろうが、アイクお兄様と兄妹だろうが、他の攻略対象者と出会っていても、私はモフモフが欲しい!
(とっとと座って、お茶でも飲もう。お菓子は持ち込みだけど、皿にあけて誤魔化そう)
令嬢友達とも少数で会うならいいんですけど、こんな風に大勢で集まってるのは苦手なんですよ。ピリピリした空気きらーい。
一先ずアイクお兄様と一緒にテーブルに着き、執事や王宮メイドさん達が用意してくれるお茶を楽しむ事にする。お菓子は沢山用意されていたけど、どれもコレも甘味が過剰過ぎて美味しくない。行儀が悪いが食べないお菓子を一つに纏め、持ち込みのお菓子を皿に出しました。ああ、もう疲れる。帰りたい。
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