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魔法のお勉強

神殿に行きましょう

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    神殿へと行く日、今日のドレスは黒を基調としたシンプルなワンピースです。黒でも、ふわりと柔らかな質感のスカート部分がとても乙女心を擽る品です。
    神殿は神聖な場所なので、過剰な装飾や華美な物は控えるようにと言うのが常識です。まぁ、この辺はどの世界でも同じなのかもしれませんね。

(光の神殿なので、本当は白のワンピースを進められたんだけど、白は気を使うよね)

 ギベオンも一緒に行きますし、闇属性を持っていることは事前に神殿へ伝えているそうです。多少汚れても気にならないようにと、ただそれだけで黒にしたのだけど、リモナイト様が当日の服装を聞いてきたのでそのまま返答したのですが。まさかの衣装を合わせてきた。
 煌びやかな装飾は無いので、フォーマルな子供服って感じなのですが。髪の色や瞳の色も殆ど同じなので、二人で並ぶと本当の兄弟のようです。双子ちゃんのようでこれはこれで可愛いのですが、いいのか王族。

(こういうのって、普通は婚約者同士であわせたりするんじゃなかろうか?)

 リモナイト様に闇属性があるかも?説が出た時、兄のラズーラ様は驚きもしなかったのが正直驚いた。ラズーラ様曰く『リィってかくれんぼが上手すぎるから何かあるなーとは思っていたんだよね』とニコニコ笑顔で返されました。
 そうですか、一緒にいた魔術師長様とか『稀少な闇属性が出るかもしれない!』と小躍りしてたのに。まぁ、私も闇属性は悪!みたいな偏見がなくて良かったとは思ったよね。

「ねぇ、アリア。神殿の水晶って大きさ知ってる?」
「普段は奥に設置されてる、あの大型水晶ですよね?アイクお兄様が神殿に行った時に大きさを教えて頂きましたけど、見た記憶はないです」
「うん、僕も。だからちょっと楽しみだよね」
「ギベオンはその姿で大丈夫ですの?」
「人型の方が神殿では良かろう、聖獣の姿の方が騒ぎそうだからな」

(成程、納得です)

 光の神殿は属性の中でも一番大きいのと、王族でよく出現する属性だからという理由もあって、王都の神殿の中では一番大きいです。他の属性の神殿もあるのですが、此処に一番大きな属性検査の水晶があるのも、王族が管理出来るからというのが一番の理由です。
    現に、今の光の神殿の神官長には王弟様がいらっしゃいます。
 お出掛けのときは狼の姿のギベオンですが、神官さん達の事を考えて今日は人型で移動してます。一見獣人に見えるからか、すんなりと通されました。
 今の神官長は、国王陛下の末弟リュミエール=クラスター様です。私はまだ拝見したことはないのですが、前は王宮にも顔を出していたそうです。ラズーラ様が生まれたくらいに光の神殿に入られたと聞いてますが、年齢はラズーラ様に近いそうです。

「リモナイト殿下、アトランティ侯爵様、ご案内いたします」

 やってきた神殿の神官さんに案内をされて、私はお父様と一緒に神殿の奥へと進んでいく。リモナイト様は護衛がついて居ましたが、神殿の奥まで行きますので途中で離れます。水晶の間へと向かうのは、リモナイト様と魔術師長様、お父様と私とギベオンの五人です。
 白い床は何で出来ているのかわかりませんが、歩く度にコツコツと硬質な音をたてる。神殿がとても静かだから余計に響いてくる。

「アメーリア=アトランティ?どうして神殿に…?」

 聞き覚えの無い可愛らしい声が響き、声のほうへと視線を向けると、目に入ったのは薄いピンク色の髪。三つ編みにしているから髪の色が強調されているのか、空色の瞳が私をジッと睨みつけていた。

「アメーリアは分かるけど、どうして第二王子のリモナイトまで?バグか何かなの?」
「ルチルレイ何をしているのですか!侯爵令嬢を呼び捨てにするなど無礼な!」
「やばっ、何でもありません!ただの散歩です!」
「これ!走ってはいけません!」

(随分と大きな独り言ですね?)

 私の名前を呼んだ少女と、出逢った事はありません。紹介も挨拶もした事が無いのに私をしっている。貴族の令嬢なら侯爵家の娘ですから、一方的に知っている事は間々あります。だけど、あの子が不思議がっていたのは、リモナイト様が神殿にいる事。

(もしかしなくても、もう一人のヒロインのルチルレイの幼い姿かしら?あの子も、この世界を知ってる?)

 廊下を走って逃げたルチルレイに案内の神官さんが溜息を零し、謝りつつも案内されていく。公式にはルチルレイが神殿に居たなんて書かれてなかったけど、ゲームを知っている私と同じ立場のルチルレイなら、何かをしても可笑しくないでしょうね。

(だって、光の神殿の神官長様は、ルチルレイの隠し攻略キャラだもの)

 私の最推しがモブキャラと呼ばれていたアズライト様だったのだから、隠しキャラが最推しだったとしたら、折角の光属性を使って神殿に入ろうと考えるかも。

「アリア、水晶の間に付いたようだ。リモナイトとお前の父親は先に進んでいる」
「あ、はい。って大きいな!?」

 水晶の間の中央に『でーん!』と鎮座している大きな水晶は、運動会で使う大玉転がしの玉くらいの大きさがあった。これは、簡単に王宮に持って来いとは言えませんよ。いくら騎士団にお願いしたとしても、もし壊されたらって思うと外に出したくないですよ。

「僕が先に触るんだって、こんなに大きいとどのくらい魔力量測れるんだろうね」
「そうですわね、属性もはっきり出来ますし凄いですわ」
「楽しみだね」
「ええ」

 ニコニコと顔を見合わせて笑顔を浮かべ、私はリモナイト様にエスコートをされ水晶の近くへと向かいました。
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