愛玩人形 ~その人形は、戀(コイ)を知って少女(ひと)になる~

姫 沙羅(き さら)

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プロローグ

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 セスクは、その髪と同じ深いアメジスト色の瞳を大きく見開き、愕然とバルコニーを見上げていた。
 庭園に面する、白亜の建物。その、二階にあるバルコニーへと続く大きなガラス扉の向こう側に、一組の男女の影が重なり合っていた。
 豊満とは言えないけれど、服からこぼれ落ちた形の良い白い乳房がガラスに押し付けられて変形している様を見れば、その男女がなにをしているかなど明白だ。
 捲り上げられた青いスカートの裾からは少女の陶器のような白い脚が覗く。華奢な少女の脚の間に男の腰が打ち付けられる度に、閉じられなくなったピンク色の唇から熱い吐息が洩れるのがわかった。スカートの影に隠されて、その部分がどうなっているかは見えないが、彼らがしっかりと繋がり合っているであろうことは想像できた。
 そして。
 誰かの視線を感じたのか、ふいに男が顔を上げ、

「ーーっ!」

 目が、合った。
 ふっ、と。男が愉しそうに口元を歪ませたのが遠目からでもわかる。
 背後から少女の胸を揉みしだき、腰を打ち付けながら、男がその耳元へとなにかを囁きかけている。
 快楽に酔っていたかのような少女の焦点が庭園の方へと向けられて、直後、その瞳が絶望にも似た色を浮かべて見開かれた。

「ーーっ」

 セスクは、ギリリと唇を噛み締めるとぐっと拳を握り込む。
 与えられる激しい律動に少女は喘ぎ、すぐにその大きな瞳は閉じられた。
 他人セスクに自分達の情交が見られていることがわかっても、少女がそれを男へ訴える様子はない。

 可憐で美しい少女は、セスクのものではない。
 百合の花のようにたおやかな少女は、彼女を抱く男の"持ち物"だ。


 それ以上を見ていられずに、セスクは踵を返すとその場を後にする。


 閉じられた少女の瞳からは、一筋の涙が伝い落ちていた。
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