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Ⅱ.The Tower
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衝撃に、頭を殴られたかのような感覚に陥った。
「……慣、れ……?」
酷く、喉が乾く。
なんとか絞り出した声は、まるで自分のものではないようだった。
「おや?生娘の方がお好みですか?でしたら申し訳ありません。処女性を大事にされるようでしたら、彼女は貴方に相応しくありません」
「……そんな、ことは……」
いっそ驚くほどあっさりと。次から次に男の口から放たれる言葉の攻撃に、セスクは目の前が暗くなっていく感覚を味わった。
なにも自分が、少女にとって"初めての相手"になりたいなどと考えていたわけではない。他の男との経験があったとしても、そこに多少の嫉妬を覚えはしても、見る目が変わるほどのことでもない。
ただ……。
ただ、少女から醸し出される雰囲気はとても清廉で。そういったこととはまるで無関係そうな無垢な美しさを湛(たた)えていたから。
「理想と違って幻滅しました?まぁ、それならそれで、滞在中の役得だと思って性欲処理の道具にでも好きに使って下さって構いませんから」
「……な、にを……」
くすくすと嘲笑に口元を歪ませる男の言葉に、乾き切った喉の奥へとなんとか唾を飲み込んだ。
もはや目の前の男の言っている言葉の意味を、頭が理解しようとすることを放棄し始めている。
それなのに。
セスクの動揺に気づいていないはずはないのに、男は挑発的な笑みを崩す様子はない。
「せっかくですから彼女のことを気に入ったご友人様でもお呼びしたら如何です?ニ、三人を相手にするくらい、彼女も気にはしないでしょうから」
「な……っ?」
意味が、わからない。
男は一体、自分になにをさせようとしているのだろう。
うっそりと目を細め、男はおかしそうに口の端を引き上げる。
「あぁ見えて淫乱なんですよ。定期的に男を咥え込まないと正気を保っていられなくなるんです。ここでの滞在中は貴方が相手をして下さるというのでしたら助かります」
「……助か、る……?」
「えぇ。私は彼女の"所有主"ですから。メンテナンスも大変なんですよ」
まるで、高価な人形を手入れするかのように。
やれやれ、と肩を落とす男の真意はなにも読み取ることができない。
「一度抱いて次を求めなかった男は今までいませんでしたから。充分ご満足頂けると思いますよ?」
それは、自分が調教した人形の出来の良さを自慢するかのように。
底の見えない瞳で男は嗤う。
「貴方は滞在先を提供して下さっている恩人ですから。お代は結構です」
「っ!」
まさか、と。
背中に嫌な汗が流れていく。
彼らは一所(ひとところ)に腰を据えることのない旅の放浪者だ。
生活費を稼ぐにも、毎月一定の給金などがあるわけではない。
「身体を売らせているのか…!」
至った答えに、殺意が芽生える。
少女の身体を切り売りし。そうして今まで生活を支えてきたというならば、とても目の前の男を許すことなどできなかった。
だが、そんなセスクの心中を察したらしく、男はわざとらしく肩を落とすと呆れたように口を開く。
「人聞きの悪い。善意で一度抱かせてやると、勝手に男たちの方から金を積んでくるだけです。我々は不安定な旅生活ですから。ギブアンドテイクというやつでしょうかねぇ…?全て彼女の稼ぎになっているのですからいいでしょう」
少女が受け取った報奨金をラファエルが自由にしたことは一度としてないと主張して、男は疲れた吐息を洩らす。
「私はむしろ、彼女が一人でも生きていけるように手助けしたいと思っているくらいなんですけどねぇ?そんな風に思われているのでしたら心外です」
自分一人で稼ぎ、一人でも生きていけるように。
少女を自分の手元から離したいと思っていることは本当なのだと、男は大袈裟に傷ついたふりで語っていた。
自分の食い分は自分で稼ぐべきだと。少女の保護者でもなんでもないという男の言い分は、確かに最もかもしれないけれど。
その身一つしか持たない美しい少女が独りで生き抜いていく為には。この世界は、悲しいかな、そんなに優しいものではない。
「……オレは、彼女の身体が目当てなわけじゃない」
「どちらでもいいですよ」
ぐっ、と悔しげに拳を握り締めたセスクへと、男はあっさりと言い捨てる。
「お綺麗な恋愛ごっこだろうが、欲にまみれた身体だけの関係だろうが」
ようするに。
「彼女を犯して、貴方の欲望を彼女の胎内に吐き出して頂ければそれで」
そこに愛情があろうがなかろうが、最終的に行き着く先は変わらないのだから。
「妊娠はできない身体ですから。気になさらずに好きなだけ吐き出して下さって結構です」
にっこりと。
そう笑う目の前の男は、もはや天使の仮面を被った悪魔のようにしか思えない。
「将来はきちんとした家の出のお嬢様を妻に娶ることになるのでしょう?愛妾にするには最適な身体ですからオススメです」
がらがらと。
何処かでなにかが崩れ落ちていく音が聞こえた気がした。
「……慣、れ……?」
酷く、喉が乾く。
なんとか絞り出した声は、まるで自分のものではないようだった。
「おや?生娘の方がお好みですか?でしたら申し訳ありません。処女性を大事にされるようでしたら、彼女は貴方に相応しくありません」
「……そんな、ことは……」
いっそ驚くほどあっさりと。次から次に男の口から放たれる言葉の攻撃に、セスクは目の前が暗くなっていく感覚を味わった。
なにも自分が、少女にとって"初めての相手"になりたいなどと考えていたわけではない。他の男との経験があったとしても、そこに多少の嫉妬を覚えはしても、見る目が変わるほどのことでもない。
ただ……。
ただ、少女から醸し出される雰囲気はとても清廉で。そういったこととはまるで無関係そうな無垢な美しさを湛(たた)えていたから。
「理想と違って幻滅しました?まぁ、それならそれで、滞在中の役得だと思って性欲処理の道具にでも好きに使って下さって構いませんから」
「……な、にを……」
くすくすと嘲笑に口元を歪ませる男の言葉に、乾き切った喉の奥へとなんとか唾を飲み込んだ。
もはや目の前の男の言っている言葉の意味を、頭が理解しようとすることを放棄し始めている。
それなのに。
セスクの動揺に気づいていないはずはないのに、男は挑発的な笑みを崩す様子はない。
「せっかくですから彼女のことを気に入ったご友人様でもお呼びしたら如何です?ニ、三人を相手にするくらい、彼女も気にはしないでしょうから」
「な……っ?」
意味が、わからない。
男は一体、自分になにをさせようとしているのだろう。
うっそりと目を細め、男はおかしそうに口の端を引き上げる。
「あぁ見えて淫乱なんですよ。定期的に男を咥え込まないと正気を保っていられなくなるんです。ここでの滞在中は貴方が相手をして下さるというのでしたら助かります」
「……助か、る……?」
「えぇ。私は彼女の"所有主"ですから。メンテナンスも大変なんですよ」
まるで、高価な人形を手入れするかのように。
やれやれ、と肩を落とす男の真意はなにも読み取ることができない。
「一度抱いて次を求めなかった男は今までいませんでしたから。充分ご満足頂けると思いますよ?」
それは、自分が調教した人形の出来の良さを自慢するかのように。
底の見えない瞳で男は嗤う。
「貴方は滞在先を提供して下さっている恩人ですから。お代は結構です」
「っ!」
まさか、と。
背中に嫌な汗が流れていく。
彼らは一所(ひとところ)に腰を据えることのない旅の放浪者だ。
生活費を稼ぐにも、毎月一定の給金などがあるわけではない。
「身体を売らせているのか…!」
至った答えに、殺意が芽生える。
少女の身体を切り売りし。そうして今まで生活を支えてきたというならば、とても目の前の男を許すことなどできなかった。
だが、そんなセスクの心中を察したらしく、男はわざとらしく肩を落とすと呆れたように口を開く。
「人聞きの悪い。善意で一度抱かせてやると、勝手に男たちの方から金を積んでくるだけです。我々は不安定な旅生活ですから。ギブアンドテイクというやつでしょうかねぇ…?全て彼女の稼ぎになっているのですからいいでしょう」
少女が受け取った報奨金をラファエルが自由にしたことは一度としてないと主張して、男は疲れた吐息を洩らす。
「私はむしろ、彼女が一人でも生きていけるように手助けしたいと思っているくらいなんですけどねぇ?そんな風に思われているのでしたら心外です」
自分一人で稼ぎ、一人でも生きていけるように。
少女を自分の手元から離したいと思っていることは本当なのだと、男は大袈裟に傷ついたふりで語っていた。
自分の食い分は自分で稼ぐべきだと。少女の保護者でもなんでもないという男の言い分は、確かに最もかもしれないけれど。
その身一つしか持たない美しい少女が独りで生き抜いていく為には。この世界は、悲しいかな、そんなに優しいものではない。
「……オレは、彼女の身体が目当てなわけじゃない」
「どちらでもいいですよ」
ぐっ、と悔しげに拳を握り締めたセスクへと、男はあっさりと言い捨てる。
「お綺麗な恋愛ごっこだろうが、欲にまみれた身体だけの関係だろうが」
ようするに。
「彼女を犯して、貴方の欲望を彼女の胎内に吐き出して頂ければそれで」
そこに愛情があろうがなかろうが、最終的に行き着く先は変わらないのだから。
「妊娠はできない身体ですから。気になさらずに好きなだけ吐き出して下さって結構です」
にっこりと。
そう笑う目の前の男は、もはや天使の仮面を被った悪魔のようにしか思えない。
「将来はきちんとした家の出のお嬢様を妻に娶ることになるのでしょう?愛妾にするには最適な身体ですからオススメです」
がらがらと。
何処かでなにかが崩れ落ちていく音が聞こえた気がした。
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