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Ⅷ.Eight of Swords
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一度キスをしてしまえばそれは日常的なものになっていき。
毎回深い口づけを交わしたその後は、籠った熱のせいかほんの少しだけ顔色が良くなったようにも思えたが、やはり根本的なものでなければ、それはただの気のせいなのだと思い知らされる。
少女の体調は日に日に悪くなる一方で、とうとう男が出ていってから明日で一ヶ月が経つというその日に、少女はベッドから一歩も出られなくなるまで憔悴しきっていた。
「ラファエル……っ!」
「お迎えとは、一体どうされました?」
おやおや、とわざとらしく笑う男の態度も、今は気にしている場合ではない。
居ても立ってもいられず、少女の枕元と門の外とを何度も何度も往復していたセスクは、遠くにその姿を見つけた途端、全速力で男の元へと駆け寄っていた。
「シェリルが……!」
「……あぁ、なるほど」
それだけで、男は全てを察したようだった。
けれど慌てる風もなく、男は殊更ゆっくり歩を進めながら、セスクへと期待外れだとでもいうかのような瞳を向けてくる。
「貴方は本気で呆れた人ですね。本当に抱いていないんですか」
「なにを……」
こんな時に、この男は一体なにを言っているのだろう。
わけがわからず戸惑うセスクに、男はやれやれとわざとらしく肩を落とす。
「言わなかったですか?男に抱かれないと正気を保てなくなる淫乱な身体だと」
「……な、ん……?」
意味が、全くわからない。
病とそれと、一体どんな関連性があるというのだろう。
ただ、冗談とも思えないその物言いに、セスクは愕然と男の顔を眺めるだけ。
「とりあえず今夜は返して頂きますよ?明日の夜にはまたお貸ししますから」
きちんと治してからお渡しします。と告げられる男の言葉は、本当に少女のことを人形かなにかと思っているくらいの感覚で。
けれど、少女を治せる医者がこの男以外にいない以上、今、そんな男の態度を責めるわけにはいかず、セスクはただただ悔しさに血の滲むほど手を握り込むことしかできずにいた。
*****
少しでも様子が知れたら、と願うのは、ただの自己満足でしかない。
その夜、どうしても少女のことが心配で堪らなかったセスクは、もし寝ていたらと気配を極力殺しながら、この一ヶ月ほとんど使われていなかった少女に与えられた客室へと足を運んでいた。
否、正しくは運ぼうとして、その手前で部屋から甲高い嬌声が洩れ聞こえた気がして、ぎくりと足を止めていた。
「あぁ……っ! 気持ち、い……っ」
それは、酷く甘い。
セスクが今まで聞いたことのない少女の嬌声。
完全に快楽に酔いしれていることがわかる、蕩けた啼き声。
「――――」
対し、男がなにかを言っている低い声も聞こえたが、それは小さい上にくぐもっていて、なにを言っているのかまではわからない。
ただ。
「ん……っ、好き……っ、好き……っ!」
次に響いた少女の声に、冷水を浴びせられたかのように頭の上から一気に体温が消えていく。
――好き、なのは、ナニ?
「あっ、あ……っ、あ……っ!」
激しく突き上げられ、高みに上り詰めていくのがわかる断続的な嬌声。
「だめ……ぇ……っ! も……っ、イっちゃ……!」
涙と、快楽の混じった甘い響き。
耳を覆ってしまいたいのにそれもできず、セスクは愕然と絶望を味わった。
「ぁぁああ……っ!」
なんとかその場から離れた背中へと、少女が上り詰める甲高い嬌声が響いていた。
――『彼のことが、本気で好きなんですか?』
くすりと笑った男の声は、セスクにまでは届かない。
毎回深い口づけを交わしたその後は、籠った熱のせいかほんの少しだけ顔色が良くなったようにも思えたが、やはり根本的なものでなければ、それはただの気のせいなのだと思い知らされる。
少女の体調は日に日に悪くなる一方で、とうとう男が出ていってから明日で一ヶ月が経つというその日に、少女はベッドから一歩も出られなくなるまで憔悴しきっていた。
「ラファエル……っ!」
「お迎えとは、一体どうされました?」
おやおや、とわざとらしく笑う男の態度も、今は気にしている場合ではない。
居ても立ってもいられず、少女の枕元と門の外とを何度も何度も往復していたセスクは、遠くにその姿を見つけた途端、全速力で男の元へと駆け寄っていた。
「シェリルが……!」
「……あぁ、なるほど」
それだけで、男は全てを察したようだった。
けれど慌てる風もなく、男は殊更ゆっくり歩を進めながら、セスクへと期待外れだとでもいうかのような瞳を向けてくる。
「貴方は本気で呆れた人ですね。本当に抱いていないんですか」
「なにを……」
こんな時に、この男は一体なにを言っているのだろう。
わけがわからず戸惑うセスクに、男はやれやれとわざとらしく肩を落とす。
「言わなかったですか?男に抱かれないと正気を保てなくなる淫乱な身体だと」
「……な、ん……?」
意味が、全くわからない。
病とそれと、一体どんな関連性があるというのだろう。
ただ、冗談とも思えないその物言いに、セスクは愕然と男の顔を眺めるだけ。
「とりあえず今夜は返して頂きますよ?明日の夜にはまたお貸ししますから」
きちんと治してからお渡しします。と告げられる男の言葉は、本当に少女のことを人形かなにかと思っているくらいの感覚で。
けれど、少女を治せる医者がこの男以外にいない以上、今、そんな男の態度を責めるわけにはいかず、セスクはただただ悔しさに血の滲むほど手を握り込むことしかできずにいた。
*****
少しでも様子が知れたら、と願うのは、ただの自己満足でしかない。
その夜、どうしても少女のことが心配で堪らなかったセスクは、もし寝ていたらと気配を極力殺しながら、この一ヶ月ほとんど使われていなかった少女に与えられた客室へと足を運んでいた。
否、正しくは運ぼうとして、その手前で部屋から甲高い嬌声が洩れ聞こえた気がして、ぎくりと足を止めていた。
「あぁ……っ! 気持ち、い……っ」
それは、酷く甘い。
セスクが今まで聞いたことのない少女の嬌声。
完全に快楽に酔いしれていることがわかる、蕩けた啼き声。
「――――」
対し、男がなにかを言っている低い声も聞こえたが、それは小さい上にくぐもっていて、なにを言っているのかまではわからない。
ただ。
「ん……っ、好き……っ、好き……っ!」
次に響いた少女の声に、冷水を浴びせられたかのように頭の上から一気に体温が消えていく。
――好き、なのは、ナニ?
「あっ、あ……っ、あ……っ!」
激しく突き上げられ、高みに上り詰めていくのがわかる断続的な嬌声。
「だめ……ぇ……っ! も……っ、イっちゃ……!」
涙と、快楽の混じった甘い響き。
耳を覆ってしまいたいのにそれもできず、セスクは愕然と絶望を味わった。
「ぁぁああ……っ!」
なんとかその場から離れた背中へと、少女が上り詰める甲高い嬌声が響いていた。
――『彼のことが、本気で好きなんですか?』
くすりと笑った男の声は、セスクにまでは届かない。
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