愛玩人形 ~その人形は、戀(コイ)を知って少女(ひと)になる~

姫 沙羅(き さら)

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ⅩⅩⅤ.Two of Swords

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 ベッドの上で、少女は苦し気な呼吸を繰り返していた。
 そんな少女へ溜め息を落とし、男はさらりとその髪を掬うと腰を屈めて、その薄く開いた唇へと顔を近づける。

「……や……っ」

 途端、拒むように顔を逸らした少女へと、男はもう何度目かわからない溜め息を吐き出していた。

「私に抱かれるつもりがないのなら、どうして一緒に来たんです」
「……そ、れは……」

 そんなこと、わざわざ言わなくてもわかっているだろうに、呆れたように肩を落とす男へと唇を噛み締める。

「……一緒に来なくちゃ、私は貴方を見つけられない……」

 一度男が姿を消してしまったら、少女にはもう二度とこの男を見つける手がかりすら失ってしまうであろうことを理解している。

「……だって……。そろそろ限界・・でしょう……?」
「あの人のことを愛してるんじゃないんですか」
「……いいの。私にはこの子がいるから」

 まだほとんど膨らんでもいないお腹へ愛おしそうに触れ、少女は幸せと寂しさが半分ずつ混じった微笑みを浮かべた。
 愛した人との宝物をこの身に宿したから。
 だから、離れる決心がついた。
 お腹の子に会わせてあげられないことは、本当に申し訳ないと思うけれど。

 この辺が潮時だ。
 限界が近いとわかっている。
 もう、3年も共にいる。
 彼も、そろそろ違和感に気づくだろう。
 今までだって、同じ場所に1年も留まったことはないのだから。
 長く……、居すぎた。
 気づかれてしまうのはもう、時間の問題だと思ったから。

「……飲みなさい」
「……え?」

 差し出された指先に、少女は戸惑いの瞳を向ける。
 今までずっと、男は自分が生きる為にしなければならないことは自分でしろというスタンスを崩すことはなかったから。

「今回だけ特別ですよ?こんなことを繰り返してはいられないことくらい、貴女もわかっているでしょう」

 だから、最も効果的なそのを少女に与えたことはほとんどない。
 それは、薬にも毒にもなり得る、ある意味劇薬でもあったから。

 迷いを見せる少女へと嘆息し、男は真面目な表情かおを貼り付ける。

「……もう他の男に抱かれなくていいですから。せめて定期的に私に抱かれる覚悟は決めなさい」

 一生で唯一惚れた男ではなく、自分を選んだというのなら。

「今さらあの人に操を立ててどうするつもりなんですか」
「……わ、たしは……」
「死にたいんですか?」

 惚れた男を捨てておきながら。
 それでもなお、その男に操を立てようとするその姿には、呆れを通り越していっそ感動してしまうけれど。

「貴女はよくてもお腹の子はどうするんです」

 そう言えば、少女の指先がぴくりと震えた。

「諦めて割り切りなさい」

 今日はを飲むことを強要し、男は冷たく言い放つ。

「次は泣こうが喚こうが抱きますからね?それが嫌なら彼のところに戻りなさい」
「……」
「全て話しても、あの人でしたら受け止めてくれるんじゃないんですか?」

 返事ができずに、ただ泣きそうに唇を引き結んだ少女へと、男はまた一つ溜め息を吐き出していた。
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