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ⅩⅩⅧ.Page of Swords
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「……昔話を、しましょうか」
場所を変え、数日前から宿泊しているというホテルの部屋の椅子に腰かけて、男はいっそ優雅に笑っていた。
その向かいに、セスクはシェリルの肩を抱いたまま座っている。
「貴女のことですよ?」
「私、の……?」
「貴女の記憶は、私と出会った頃より前のものが朧気で曖昧でしょう?その理由です」
シェリルはセスクに、自分の幼い頃の話などを一切したことがなかった。
それは、記憶に靄がかかっていることに起因する。
「どうしても受け止めきれずにまた壊れるようでしたら記憶を封印しますから安心して下さい」
「!」
その言葉に、不安気に瞳を揺らめかせるシェリルよりも、セスクの方が反応した。
もし、本当に。
シェリルが、セスクの知る過去の公爵令嬢だったなら。
その身に、なにが起こったか。
「私が初めて貴女と出会った時、すでに貴女は狂いかけていました」
語り始めたラファエルへと、セスクはぐっとシェリルの肩を抱き寄せながら、話を止めた方がいいのかを迷う。
想像していたこととはいえ、セスクにとってもかなり衝撃的な内容だ。
それをわざわざ。忘れている記憶を告げる必要が何処にあるというのか。
「暴漢に襲われた貴女は、その恐怖と記憶から逃れられずに自殺未遂を繰り返していました」
「……!」
「……シェリル……」
ふるりと肩を震わせて大きく目を見張った少女へと、セスクは心配そうな目を向ける。
あぁ、やっぱり。と、そんな衝撃がセスクを襲う。
「当時の王に、どうにかして立ち治らせてやってくれないかと泣き付かれまして。普段でしたらお断りするところですが、まぁ、いろいろありまして、お受けすることにしたんです」
肩を竦め、ラファエルは淡々と口にした。もしかしたら、事実だけを述べるそれは、余計な感情をわざわざ挟まないようにしているからかもしれないけれど。
「貴女の記憶を封印してしまえば簡単に話は済みます。ですが、さすがにそうはいかずに、まずは一般的な精神療法から試していったわけですが……」
そこで、少しだけ男の顔へ苦渋の色が見えた気がするのは気のせいか。
「ダメでした」
それは、セスクが王子から聞いた昔話そのままで。
つまりその後、少女は自ら命を断つことになる。
けれど、その時死んだはずの令嬢は、今、ここに生きている。
「貴女の自殺願望は止まることはなく、ある日、本当に危篤状態にまで陥りました」
「……どうして始めから記憶を消さなかった」
それがなにを意味するかなど、セスクにはどうでもいいことだから、男を責めるような眼差しで睨み付ける。
たが、もちろん男にとってはそうではない。
「随分と簡単に言いますね。自分でおっしゃっていることの意味がわかっていますか?」
やれやれ、と大袈裟に肩を落とし、男はくすりと含み笑いを洩らしていた。
「さすがに、人間ではないと悟られるわけにはいかないでしょう?」
場所を変え、数日前から宿泊しているというホテルの部屋の椅子に腰かけて、男はいっそ優雅に笑っていた。
その向かいに、セスクはシェリルの肩を抱いたまま座っている。
「貴女のことですよ?」
「私、の……?」
「貴女の記憶は、私と出会った頃より前のものが朧気で曖昧でしょう?その理由です」
シェリルはセスクに、自分の幼い頃の話などを一切したことがなかった。
それは、記憶に靄がかかっていることに起因する。
「どうしても受け止めきれずにまた壊れるようでしたら記憶を封印しますから安心して下さい」
「!」
その言葉に、不安気に瞳を揺らめかせるシェリルよりも、セスクの方が反応した。
もし、本当に。
シェリルが、セスクの知る過去の公爵令嬢だったなら。
その身に、なにが起こったか。
「私が初めて貴女と出会った時、すでに貴女は狂いかけていました」
語り始めたラファエルへと、セスクはぐっとシェリルの肩を抱き寄せながら、話を止めた方がいいのかを迷う。
想像していたこととはいえ、セスクにとってもかなり衝撃的な内容だ。
それをわざわざ。忘れている記憶を告げる必要が何処にあるというのか。
「暴漢に襲われた貴女は、その恐怖と記憶から逃れられずに自殺未遂を繰り返していました」
「……!」
「……シェリル……」
ふるりと肩を震わせて大きく目を見張った少女へと、セスクは心配そうな目を向ける。
あぁ、やっぱり。と、そんな衝撃がセスクを襲う。
「当時の王に、どうにかして立ち治らせてやってくれないかと泣き付かれまして。普段でしたらお断りするところですが、まぁ、いろいろありまして、お受けすることにしたんです」
肩を竦め、ラファエルは淡々と口にした。もしかしたら、事実だけを述べるそれは、余計な感情をわざわざ挟まないようにしているからかもしれないけれど。
「貴女の記憶を封印してしまえば簡単に話は済みます。ですが、さすがにそうはいかずに、まずは一般的な精神療法から試していったわけですが……」
そこで、少しだけ男の顔へ苦渋の色が見えた気がするのは気のせいか。
「ダメでした」
それは、セスクが王子から聞いた昔話そのままで。
つまりその後、少女は自ら命を断つことになる。
けれど、その時死んだはずの令嬢は、今、ここに生きている。
「貴女の自殺願望は止まることはなく、ある日、本当に危篤状態にまで陥りました」
「……どうして始めから記憶を消さなかった」
それがなにを意味するかなど、セスクにはどうでもいいことだから、男を責めるような眼差しで睨み付ける。
たが、もちろん男にとってはそうではない。
「随分と簡単に言いますね。自分でおっしゃっていることの意味がわかっていますか?」
やれやれ、と大袈裟に肩を落とし、男はくすりと含み笑いを洩らしていた。
「さすがに、人間ではないと悟られるわけにはいかないでしょう?」
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