愛玩人形 ~その人形は、戀(コイ)を知って少女(ひと)になる~

姫 沙羅(き さら)

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ⅩⅩⅩⅤ.The World

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 シェリルは、人間となってセスクと同じ人生ときを刻むことを決めた。
 どんな形でどちらが先に天に召されることになるのかはわからない。
 けれど、死が二人を分かつまで。
 それまで、人間ひととして愛する男性ひとと共に歩むことをラファエルへと宣言していた。

「シェリル? おいで」
「うん……」

 湯上がりのシェリルへと手を伸ばせば、その華奢な身体は素直にセスクの腕の中へと収まった。

「セスク……」
「おかえり」
「……ただいま」

 自分を見上げてくるシェリルの蟀谷こめかみへとキスを落とし、穏やかな微笑みを浮かべれば、シェリルも嬉しそうにはにかんだ。
 セスクとシェリルは、少し用事があるというラファエルを置いて、先にセスクの邸へと戻ってきていた。
 着の身着のまま家を飛び出していったセスクが、消息不明となった恋人と共に戻ってきたことに、両親は心から胸を撫で下ろしていた。
 だから。

「もう、離さないよ?」

 ベッドの上。
 まだほとんど膨らみのわからないお腹を撫でてセスクは甘く笑う。
 シェリルを人間に戻す術も、吸血鬼ヴァンパイアの能力も、子供にはほとんど影響しないらしい。
 ただ、ほんの少しだけ。生まれた子供は普通の人間ひとよりも少しだけ回復力が早かったり、少しだけ老いるのが遅くなるかもしれないけれど、目に見えて気づかれる程のことはないだろうというのがラファエルの見解だった。
 そんなラファエルは、用事を済ませたら連絡をくれるという。
 1ヶ月くらいかかるということで、先に二人でセスクの邸へ戻ることを促されて別れたのが数日前。
 もう一度王都に戻ってくると約束したラファエルの言葉を疑う気にはなれなかった。

「……オレと、結婚してくれる?」
「……セ、スク……」

 確かに小さな命が芽吹いているお腹の上を優しく撫で、もう片方の手で顔を上げさせると、セスクはサファイアのように綺麗な瞳を覗き込む。

「これでもう、悩むことなんてないでしょ?」
「……セスク……」

 永遠の生命いのちを捨て、セスクと同じ"人間"となって自分の元へと戻ることを、シェリルは決断してくれた。
 それは、シェリルの為に全てを捨てる覚悟だったセスクへと、なにも捨てさせない為だということくらいわかっている。
 そんなシェリルの優しさを、とても愛おしいと思うから。
 だから、一生。人生を賭けてその想いに応えていきたいと思った。

「これから先の人生を、オレと一緒に。ずっと隣にいて下さい。一生、大切にする、って……。一生愛し抜くって誓うから」
「セスク……」

 それは、シェリルが姿を消したあの日。
 シェリルの誕生日に告げると決めて叶わなくなったプロポーズだ。

「……オレと、結婚してください」

 手を取り、少しだけ緊張に震える唇でそう告げれば、シェリルの瞳は驚いたように大きく見開かれた。
 それでも。

「……はい……」

 ややあって、涙の浮かんだ瞳を上げたシェリルは、柔らかな微笑みと共に愛しい人からの求婚に小さく頷いていた。




 *****




「嬉しい……」

 左手の薬指にめられた指輪を眺め、一滴の涙を落としたシェリルへと、セスクはその涙を掬うように頬へと口づけた。

「オレも嬉しいよ」
「ん……」

 求婚を受け入れてくれて嬉しいと笑うセスクの唇を受け止めて、シェリルの口から甘やかな吐息が洩れた。

「シェリル……」
「ん……っ」

 ゆっくりと背後へと押し倒され、口づけを交わしながら互いの服を脱がせていく。

「ほんと、ぅ、は……っ」
「ん?」
「……ずっと……っ、頷き、た、かった……っ、ぁ、ん……」

 お互い食むように繰り返される口づけが、その角度を変える度に軽いリップ音が室内に響いて、それだけで官能を刺激される。

「うん……」
「だから……っ、嬉し……っ」
「うん」

 また一つ零れ落ちた涙は、抗えない快楽からか喜びからか。
 本当はずっとセスクからの求婚を受け入れたかったのだと告げる少女に、セスクは幸せが胸を満たしていくのを感じていた。

「わかってる……」
「ぁ、ぁん……っ!」

 手と唇で柔らかく胸元を愛撫すれば、シェリルは素直に甘い声を上げて肩を震わせた。
 シェリルの身体を気遣って、ラファエルが戻るまでは血を提供すると告げたセスクに、けれどシェリルはそれならば抱いて欲しいと、目元を恥ずかしそうに潤ませていた。

「……お父さんとお母さんは、今、愛し合っているんだよ?」
「セ、スク……ッ!」

 やわやわとお腹に触れ、臍の横辺りへ口づけながら、その胎内なかにいる子へと向かって甘く笑えば、シェリルから恥ずかしそうな訴え声が上げられる。

「だって、本当のことでしょ?」
「セス……ッ、や……っ、ぁ、ん……っ!」
「こうやってシェリルと愛し合ってきたから、この子は命を授かったんだから」
「ぁあ……っ」

 いつだって恥ずかしがるシェリルの脚を開かせて、その間の秘密の場所へと口付ければ、細腰はびくりと跳ね上がった。

「この子だって、お父さんとお母さんが仲良くしてる方がいいに決まってるよな?」
「ふぁ……っ! セス、ク……ッ」

 ちゅっ、ちゅっ、と。わざと音を立ててキスをすれば、シェリルの身体は逃げを打つようにびくびくと震える。
 それを決して強すぎない力で引き寄せて、セスクはすでに愛液を溢して物欲しそうにひくつく胎内へとゆっくりと指先を押し入れていた。

「あ……っ!」
「優しくするから。ね?」
「ぁあ、ん……っ、セ、スク……ッ!」

 シェリルの身体を気遣ってのことだろうが、ゆっくりと差し入れられて胎内を掻き回す指の動きは、却って焦らされているような感覚に陥って、もっととねだるように腰が震えてしまう。

「も……っ、早、く……っ」
「シェリルってば、本当に可愛すぎ」

 素直にセスクを求めて伸ばされる手は、愛おしさだけが募っていく。

「シェリルが深くて激しいのが好きなのは知ってるけど、優しくゆっくりで我慢してね?」
「セ、スク……ッ!」

 意地の悪い囁きに、真っ赤になるシェリルの顔は可愛くて仕方がない。

「そんなに欲しいなられてあげる」
「あ……っ!」

 指を引き抜き、変わりに熱くなった楔を押し当てれば、その先の大きな快楽を期待するかのように甘い吐息が零れ落ちた。

「ぁあ、ん……っ!」
「シェリル……ッ」

 セスクを迎え入れてくれるシェリルの胎内なかは、いつも暖かくて心地くて。

「セ、スク……ッ、セス、ク……ッ、好き……っ、大好き……っ」
「シェリル……ッ、あんま煽らないで……っ」

 しがみつき、耳元で告げられる甘い告白には、今にも理性を飛ばされそうになってしまう。

「ぁ……っ、あっ、あ……っ」
「シェリル……」

 優しくゆっくりとした律動に、シェリルの甘い吐息が響いていく。

「……ずっと一緒に生きていこう」
「ん……っ」

 一つになって、優しく甘い快楽を分かち合いながら、二人は何度も何度も、誓うかのようにキスを繰り返していた。
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