39 / 39
エピローグ
しおりを挟む
「だぁ! だっ、だ……っ!」
はいはいしてやってきた赤ん坊を抱き上げて、シェリルは、その口の端から溢れ出た涎をガーゼで拭ってやっていた。
「……どうしてるかな」
大好きな母親に抱かれてきゃっきゃっと喜ぶ子供を抱き締めて、シェリルは何処か遠くを眺め遣る。
予定日より少し遅れて無事生まれてきた子供は、セスク待望の女の子で、日々すくすくと元気に育っている。
シェリルによく似た小さな女の子を、セスクはもはや目に入れてしまっているのではないかというくらい可愛がっていた。
「アイツのことだから、きっと海の向こうで今日も飄々としてるんじゃないか?」
小さな呟きの意味を正確に察したのだろう。
シェリルから赤ん坊を受け取ったセスクは、デレデレの父親の顔をしてその子をあやしながら、仕方ないなと苦笑する。
あの後、シェリルが目を覚ました時には、すでに男はいなかった。
生まれた子供を見せたかったと思うシェリルの気持ちは、セスクが両親に孫を抱かせたいと思う気持ちと似たようなものかもしれない。
「……そうね」
燦々とした太陽の光が差し込む窓の向こうを眩しげにみつめ、シェリルは広い空の下、何処かにいるであろう男の姿を思って静かに微笑んだ。
「……男の子が生まれたら……」
「……え?」
「アイツの名前から何文字か貰おうか?」
自由に動き回りたがるお転婆な娘を足元へと下ろしてやり、セスクはその代わりというわけでもないけれど、シェリルの腰を引き寄せた。
「……セスク……」
「アイツに関してはいろいろ思うところもあるけど、シェリルの命の恩人であることには間違いないし」
きゅっ、と優しく抱き締めて、悪戯っぽい瞳でシェリルの顔を覗き込む。
今だ胸に残る嫉妬はあるけれど、それでも今は感謝の気持ちの方が大きくはなっている。
「今、オレたちがこうしていられるのは、全部アイツのおかげだし」
母親になったシェリルは益々その魅力を増していて。
日々愛しさが募っていくばかりで、再現なく湧く愛情で溢れていく。
恐らくは、これから兄弟姉妹がたくさん増えていくだろう。
「……うん……」
優しく抱き寄せてくる腕に身体を預け、シェリルは小さく頷いた。
セスクの暖かな愛情に満たされて、これ以上ない幸せな日々が続いていて。
こんなに幸せで許されるのかと思ってしまうほど。
本当に。可愛い子供にまで恵まれて、幸せすぎて泣きたくなる。
「シェリル。オレは、シェリルに出逢えたことが、人生で一番の贈り物だよ」
まるで猫のように鈴の音が鳴るボールを追いかけてきゃっきゃっと遊ぶ赤子を二人で見守りながら、セスクはその耳元で甘く囁く。
「愛してる」
「ん……」
ちゅ、と、首筋へ優しくキスをされて、シェリルはくすぐったそうに目を細める。
「私も……」
いつか、死が二人を分かつまで。
この幸せが色褪せることはないだろうと、そう思う。
「……今、すごく幸せだから」
自分の人生は、きっとこの人に会う為にあったのだろう。
「貴方に会えて良かった」
暖かな抱擁に包まれて、シェリルは幸せそうに微笑んだ。
「もう、二度と離れない」
自分の居場所は、もうこの腕の中だと決めたから。
「シェリル……」
シェリルの綺麗な微笑みに、セスクもまた甘く笑う。
そうして午後の暖かな日差しの中で。
どちらからともなく、そっと唇を重ね合わせていた。
end....
はいはいしてやってきた赤ん坊を抱き上げて、シェリルは、その口の端から溢れ出た涎をガーゼで拭ってやっていた。
「……どうしてるかな」
大好きな母親に抱かれてきゃっきゃっと喜ぶ子供を抱き締めて、シェリルは何処か遠くを眺め遣る。
予定日より少し遅れて無事生まれてきた子供は、セスク待望の女の子で、日々すくすくと元気に育っている。
シェリルによく似た小さな女の子を、セスクはもはや目に入れてしまっているのではないかというくらい可愛がっていた。
「アイツのことだから、きっと海の向こうで今日も飄々としてるんじゃないか?」
小さな呟きの意味を正確に察したのだろう。
シェリルから赤ん坊を受け取ったセスクは、デレデレの父親の顔をしてその子をあやしながら、仕方ないなと苦笑する。
あの後、シェリルが目を覚ました時には、すでに男はいなかった。
生まれた子供を見せたかったと思うシェリルの気持ちは、セスクが両親に孫を抱かせたいと思う気持ちと似たようなものかもしれない。
「……そうね」
燦々とした太陽の光が差し込む窓の向こうを眩しげにみつめ、シェリルは広い空の下、何処かにいるであろう男の姿を思って静かに微笑んだ。
「……男の子が生まれたら……」
「……え?」
「アイツの名前から何文字か貰おうか?」
自由に動き回りたがるお転婆な娘を足元へと下ろしてやり、セスクはその代わりというわけでもないけれど、シェリルの腰を引き寄せた。
「……セスク……」
「アイツに関してはいろいろ思うところもあるけど、シェリルの命の恩人であることには間違いないし」
きゅっ、と優しく抱き締めて、悪戯っぽい瞳でシェリルの顔を覗き込む。
今だ胸に残る嫉妬はあるけれど、それでも今は感謝の気持ちの方が大きくはなっている。
「今、オレたちがこうしていられるのは、全部アイツのおかげだし」
母親になったシェリルは益々その魅力を増していて。
日々愛しさが募っていくばかりで、再現なく湧く愛情で溢れていく。
恐らくは、これから兄弟姉妹がたくさん増えていくだろう。
「……うん……」
優しく抱き寄せてくる腕に身体を預け、シェリルは小さく頷いた。
セスクの暖かな愛情に満たされて、これ以上ない幸せな日々が続いていて。
こんなに幸せで許されるのかと思ってしまうほど。
本当に。可愛い子供にまで恵まれて、幸せすぎて泣きたくなる。
「シェリル。オレは、シェリルに出逢えたことが、人生で一番の贈り物だよ」
まるで猫のように鈴の音が鳴るボールを追いかけてきゃっきゃっと遊ぶ赤子を二人で見守りながら、セスクはその耳元で甘く囁く。
「愛してる」
「ん……」
ちゅ、と、首筋へ優しくキスをされて、シェリルはくすぐったそうに目を細める。
「私も……」
いつか、死が二人を分かつまで。
この幸せが色褪せることはないだろうと、そう思う。
「……今、すごく幸せだから」
自分の人生は、きっとこの人に会う為にあったのだろう。
「貴方に会えて良かった」
暖かな抱擁に包まれて、シェリルは幸せそうに微笑んだ。
「もう、二度と離れない」
自分の居場所は、もうこの腕の中だと決めたから。
「シェリル……」
シェリルの綺麗な微笑みに、セスクもまた甘く笑う。
そうして午後の暖かな日差しの中で。
どちらからともなく、そっと唇を重ね合わせていた。
end....
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる
春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。
夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。
形のない愛は信じない。
でも、出来立ての肉は信じてしまう。
肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。
これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる