38 / 39
ⅩⅩⅩⅦ.Death
しおりを挟む
教会から少しだけ離れた場所。
人目のない雑木林で足を止め、男は見るからに高級そうな煙草へと火をつけた。
「ちょっと長く一緒にいすぎましたかね」
深く煙を吸い込んで、空へと白く細い吐息を吐き出した。
久しぶりに味わった若く綺麗な少女な血は、酷く甘かった。
吸血鬼にとって嗜好品である少女の血を、男は今まで口にしたことはほとんどない。
「"人形"のくせに、愛着が沸くなんて」
ほんの気紛れで助けた綺麗な少女。
飽きるまでのほんの短い間だけ傍に置くつもりだった。
後は、血を吸い尽くして捨て置けばいいと。
「とうとう私には、"愛"がどんなものなのかなんてわかりませんでしたね」
愛した人間と同じ時間を生きる為、永遠の生命を捨てていった仲間たち。
その気持ちが、男には今も理解できずにいる。
「自分が消えることが恐いとも思わない……」
さらさらと指先が灰のようになって風に浚われていくのに、男はまるで他人事のような瞳でそれをみつめていた。
足先も溶けていくが、また一つ大きく煙を吐き出して、ポトリと煙草が落ちた。
「吸血鬼なんて、ただ永遠の命を与えられただけで、なにもいいことなんてないんですよ……」
純血種が一生に一度しか使えない術式。
一度しか使えないのは、その術式を発動させる為に、吸血鬼としての全ての能力を失ってしまうからだ。
自分自身に使えば"人間"になってしまうのだからそれは当然だが、"他の吸血鬼"にそれを使った場合には。
「……私としたことが、ちょっと、疲れたのかもしれませんね……」
自分以外の者へとその術を使った吸血鬼は、吸血鬼としての能力を失い、"人間"となることもない。
「私たちは、なぜ存在しているのでしょうね……?」
独白に、応えが返ることはない。
なんの目的もなくただ生きるだけの日々は少し辛い。
終わりのない悠久の時間。
そんな中で出逢った、決して幸せだったとは言えない少女。
「……お幸せに……」
風に浚われ、まるで花弁が舞うように灰が空へと流れていく。
後にはただ、火の消えた煙草の吸殻だけが残されていた。
人目のない雑木林で足を止め、男は見るからに高級そうな煙草へと火をつけた。
「ちょっと長く一緒にいすぎましたかね」
深く煙を吸い込んで、空へと白く細い吐息を吐き出した。
久しぶりに味わった若く綺麗な少女な血は、酷く甘かった。
吸血鬼にとって嗜好品である少女の血を、男は今まで口にしたことはほとんどない。
「"人形"のくせに、愛着が沸くなんて」
ほんの気紛れで助けた綺麗な少女。
飽きるまでのほんの短い間だけ傍に置くつもりだった。
後は、血を吸い尽くして捨て置けばいいと。
「とうとう私には、"愛"がどんなものなのかなんてわかりませんでしたね」
愛した人間と同じ時間を生きる為、永遠の生命を捨てていった仲間たち。
その気持ちが、男には今も理解できずにいる。
「自分が消えることが恐いとも思わない……」
さらさらと指先が灰のようになって風に浚われていくのに、男はまるで他人事のような瞳でそれをみつめていた。
足先も溶けていくが、また一つ大きく煙を吐き出して、ポトリと煙草が落ちた。
「吸血鬼なんて、ただ永遠の命を与えられただけで、なにもいいことなんてないんですよ……」
純血種が一生に一度しか使えない術式。
一度しか使えないのは、その術式を発動させる為に、吸血鬼としての全ての能力を失ってしまうからだ。
自分自身に使えば"人間"になってしまうのだからそれは当然だが、"他の吸血鬼"にそれを使った場合には。
「……私としたことが、ちょっと、疲れたのかもしれませんね……」
自分以外の者へとその術を使った吸血鬼は、吸血鬼としての能力を失い、"人間"となることもない。
「私たちは、なぜ存在しているのでしょうね……?」
独白に、応えが返ることはない。
なんの目的もなくただ生きるだけの日々は少し辛い。
終わりのない悠久の時間。
そんな中で出逢った、決して幸せだったとは言えない少女。
「……お幸せに……」
風に浚われ、まるで花弁が舞うように灰が空へと流れていく。
後にはただ、火の消えた煙草の吸殻だけが残されていた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる
春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。
夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。
形のない愛は信じない。
でも、出来立ての肉は信じてしまう。
肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。
これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる