【R18】黒曜帝の甘い檻

古森きり

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第3話

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 しかしそれでも彼らが困惑しているのは空気で分かる。
 その時間がますます恥辱を増していく。
 早くなにかを言ってほしい。
 あるいは、なにも言わずに去ってほしい。
 願っていると、気配が動く。
 プロである彼らは頭を下げて、なにも言わずに部屋からいなくなってくれる。
 ほっと息を吐き出して、ベッドに移動した。
 ドキドキと胸が鳴り響く。
 ズボンの紐を外し、下穿きを取り払い熱がこもった己のモノを手に取る。

「……っ」

 黒曜帝に触れられた時の事を思い出しながら、ゆっくりと擦り上げていく。
 亀頭部をきつく丸くした指で締め、親指で先端を刺激する。
 いまいち力の加減が出来なくて、時折痛みを感じた。

「……あ……」

 枕元のキャビネットに置かれた小瓶が目に入る。
 そういえばあの方は、ヒオリに触れる前にあの瓶の中身を手に塗っておられた、と。
 恐る恐る瓶を手に取り、蓋を開ける。
 甘い香りが鼻孔をくすぐった。
 手に垂らす。
 ぬるぬるして、指で擦ると粘つくようになってきた。
 あとから知った事だが、これは香油に特別な植物を煮た湯を混ぜた物。
 ヒオリの体を傷付けないために、特別に用意させた潤滑油だったらしい。
 それを手に塗り、もう一度触れてみる。

「……んっ……!」

 ぞく、ぞく、と体が芯から痺れるように震えた。
 まだ少しだけ冷たい潤滑油を、全体に馴染ませながら擦り上げる。
 ねち、ねちという感覚。
 糸を引くのは、粘り気の強い潤滑油かそれともヒオリ自身のモノから溢れた体液か。
 あの方のモノと比べて小さな男根ではあるが、構造は同じだ。
 強く擦り、時折弱く。
 先端を弄り、押し込み、親指で潤滑油を塗り込むようにすると体がどんどん火照ってくる。
 同時に猛烈な尻穴の……中への渇望。
 そう、欲しい。
 欲しくて、欲しくて堪らない。

「っ、っ……!」

 唇を噛みながら腰を折り曲げて右手の人差し指を尻の穴の中へと突っ込む。
 昨夜散々弄られたそこはまだ柔らかく、潤滑油を纏った指は易々と呑み込んでいく。

「は、はぁん……」

 ぞくぞくと背中が粟立つ。
 尻の穴の奥から背筋の骨を伝うように快感が迫り上がる。
 指を奥へ。
 そして、引き戻す。
 もっと奥を、もっと……。
 意識してある箇所を狙う。

「ッア!」

 掠めただけで背が弓形になる。
 涙がじんわりと浮かんだきた。
 その快楽。
 刺激が堪らなくヒオリを幸福で満たす。
 しかし、満たされた途端に『これではない』と心が叫んだ。
 その叫びに呼応するように、体も不満を感じ始める。
 こんな細いものではダメだ。
 もっと太い、逞しいモノで貫かれ、押し潰され、奥の奥を叩きつけられていじめられたい……。
 目が周囲を無意識に捜索した。
 なにか……なにかないだろうか。
 あの方の指、あるいは……一物に代わるような太く、逞しいモノは。
 息が上がっていく。
 ヒオリのモノは、熱を持ったまま震えた。

「……っう……うっ……んんっ」

 それがまた切なくて堪らない。
 擦り上げるのを再開して、天井を眺めながら尻の穴をほじくり返した。
 これではない。
 もっと太くて逞しいモノが欲しい。
 中へ挿入れて欲しい。
 そう思いながら擦り上げる。

「ふっ、ふっ、ふっ、ふぅっ、ふ、うん……っ!」

 気持ちいい場所を一本だけ入れた指で必死に擦ろうとした。
 しかし、快感を得ると背中が伸びてしまう。
 もう一度入れ直し。
 涙が溢れた。
 ああ、足りない。
 物足りない。

「っう!」

 それでもなんとか、指の腹で先端を擦り上げて達する事が出来た。
 涙がツゥ、と流れ落ちる。
 気持ちはよかった……が、物足りなさが増しただけだった。
 毎晩複数回出しているヒオリの精液は薄く、サラサラした水のよう。
 シーツにシミが出来てしまった。
 しかし、それを後悔するよりも物足りなさに涙がもう一筋流れ落ちる。
 どうしたらいいのか。
 どうしたらこの飢餓感にも似た物足りなさを満たす事が出来るのか。

「はあ……陛下……」

 思い出すのはあの一物だ。
 黒曜帝が、いつもヒオリの腿に挟んで擦り付ける、あの太く長く逞しく、とても熱いアレだ。
 アレが欲しい。
 アレを中へと入れて……そして激しく打ちつけて欲しい。
 想像しただけで喉が鳴る。
 ごくん、と生唾が嚥下した。
 ヒオリの頭の中ではその想像を、どうしら現実のものと出来るか。
 そればかりが頭を巡る。
 しかし、妙案は浮かばない。
 知恵を絞れ、とは言われたけれど、その知恵が足りない。

「…………」

 起き上がって、唇を指でなぞる。
 甘い香り。
 知恵が足りないなら、足せば良い。
 だがどこから足せばいいのかヒオリには分からない。
 ヒオリが仕入れる事の出来る知識は本。
 世話係は、事務的な事以外には答えてくれない。
 では、どんな本を仕入れて貰えばその知恵や知識を得る事が出来るのだろう?
 このような行為に関する書物があるのだろうか?
 分からない。
 分からないのならば聞くしかない。
 しかし、では誰に?
 考えて、考えていたら約束の一時間が過ぎてしまった。
 はしたない姿のまま横たわったヒオリに、入ってきた世話係の一人が声をかける。
 そして慌てて起き上がると、お湯を用意されてあっという間に清められてしまった。

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