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第20話
しおりを挟む「んひいぃっ!」
ズッ、と指を尻穴に押し込められて、はしたない声を上げる。
今こうしている間も、人々は苦しんでいるはずなのに。
勢いよく出し入れされる指の腹が時折、ヒオリの性器の裏にあるしこりを擦りあげていく。
その刺激が堪らなくて、身に籠る熱は上がるばかり。
心と体がバラバラになるような感覚で、息も絶え絶えになった。
「い、いやぁ、ダメです、へ、いかぁ……! こんな事……してる場合ではぁっ」
「貴殿には関係のない事だろう」
「っ」
予定では今日、数ヶ月にも及ぶ視察の旅に出る予定だった黒曜帝。
ヒオリの誕生日の日を仕事で祝えなかったからと突如現れ、流れるようにいつも通りベッドの上で喘がされてしまっている。
腰が揺れる度に涙が溢れ、声が漏れ、罪悪感に苛まれた。
魔窟が出たと聞いた日からずっとそんな気分になれず、放置された体はとんでもなく感じ入る。
どことなく、最初こそ楽しげにヒオリの誕生日を祝ってくれた黒曜帝。
行為が始まると『気分ではない』ヒオリはつい言ってしまったのだ。
『魔窟のせいで苦しむ人々のためにも、どうかご公務にお戻りください』
黒曜帝はきっと、ここ数週間それに追われていただろう。
そんな事はヒオリにも分かっていた。
本当なら当日にヒオリの誕生日を祝いに来たかった、と最初に告げられていたのだから。
にも関わらず、口にしてしまった。
苦しむ人々のいる中で、自分はぬるま湯のような生活を送り、黒曜帝に抱かれ快感を貪る。
そんな事はあまりにも許されない。
そう思ったからだ。
だが、そう言ってから黒曜帝の態度は冷たくなったように思う。
ヒオリには関係ないだろう、と……言い含めるように繰り返す。
その通りだ、関係ない。
しかし自分の誕生日を祝われる事も、こうして無理やり喘がされる事も、今の精神状態では苦痛だった。
関係ない。
それは、なにも出来ないという意味で使われている。
その通りだ。
その通りだからこそ、この快感があまりにも苦痛だった。
「うあぁっ! ……っ! っ……うっ!」
無理やり引き上げられる。
これまで感じた事のない苦痛。
心が引き剥がされそうで、体が快感に流される事を許せなくてつらい。
声も甘さを含まず漏れるだけ。
しばらくそれが続くと、黒曜帝の体が離れた。
「……そうも興が乗らぬか」
「……、……申し訳、ありませ……」
「構わん。だが、それならせめて俺のモノは慰めろ。溜まってはいるのでな」
「…………」
ベッドの上で解離していくような体と心を繋ぐよう、洗い呼吸とともに整える。
肩を抱き寄せられて、顔の真横に差し出されたのは求めてやまなかったはずの黒曜帝の一物。
これを体の中に突き入れて欲しいと思っていた。
でも、今は——。
「はい……失礼、します……」
しかし望まれたのは嬉しい。
口を開いて先端を食んだ。
歯を立てないように丁寧に口の中へと飲み込んで、舌で包むようになぞっていく。
後宮に行けば、この方の精を欲した美しい妃候補が溢れるほどいるというのに……。
そう思えば、ヒオリがすべき事ではないように思えて頭が冷める。
しかし、ここまで大きくなったモノを今、ここで慰められるのはヒオリだけだろう。
この人の一物を咥え、精をもらえると聞けば妃候補たちは人質宮にも来るかもしれない。
だが、その間この方は熱された状態を放置される事になる。
この大陸を統べる方がそんな目に遭って良いはずもない。
ならばやはり、今ここでヒオリが心を込めて奉仕するしかないだろう。
幸い、この方はなかなかに精力的でおられる。
朝まで泣かされて、太腿がひりひりとしてしまった事もあった。
あの時は白髪の世話係が随分と怒っていて、相手はこの国の皇帝だというのに「叱っておきました」と言っていたほど。
あれ以来確かに朝まで、というのはないが、ヒオリが先に気絶する事はよくある。
「ん、っ……んっ、っん、ンッ……んんっ」
口を窄めて、息苦しさを感じるギリギリまで呑み込み、頭全体を後ろに動かして吸い上げるように動かす。
やや生臭い苦味がどんどん口の中に広がっていく。
デロリとして、不味い。
喉の奥にこびりつくように垂れ、咥えたまま頭を動かし続ければ咥内全体に唾液と混じって張りついた。
しかし、熱い。
口の中が苦味を忘れるほどに熱くなっていく。
不思議な事だが、こうして咥えたまま頭を前後させているとあの生臭い臭いが熱で消えていくのだ。
「っ……」
そして、なにより……黒曜帝の顔が見える。
いつもヒオリを後ろから虐めてくる黒曜帝が、見上げれば心地よさそうに眉を寄せて艶のある吐息を漏らす。
こんなに嬉しい事があるだろうか?
魔窟の出現で公務に疲れているだろうこの人を、気持ちよく出来ている。
それはとても誇らしい。
(もっと、もっと……もっと気持ちよくなってください……)
太く長く逞しいそれを、口で届かない根元は手で握り締め、垂れる唾液と先走りをわずかに口を開く事で絡めていく。
ぐちゅ、ぐぢゅ、と淫らな水音が響き、どんどんそそり立って腹に近付く一物を口の中へと呑み込んだ。
上顎のざらざらとした部分を反るように擦り上げる熱くて逞しいモノ。
当然とても苦しい。
けれど、溢れそうなほどに…………愛おしい。
「っ! 出す、離れろ!」
「あっ!」
あと少し、と望んだところで後頭部を掴まれ、引き離された。
ビシャ、ビシャと黒曜帝の腹に出された白い精。
それを熱に浮かされた顔で眺めている自覚はヒオリにはない。
(ああ、なんて美味しそうなのだろう……)
ごくり。
喉が鳴った。
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