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第31話
しおりを挟むぞくぞくと背中が不可思議な快感に襲われる。
ごくん、と生唾を飲み込む。
気がつくと、ヒオリの性器は興奮して立ち上がっていた。
「あっ」
「残念です……我々はヒオリ様に触れるのを陛下に許されていない……」
「ああ、まったくだ。ヒオリ様に触れていいなら、もっと淫らな体に作り替えてやったものを……」
「んあ! そこで喋っちゃだめ、ひっ、ゃあ……そ、そんな事したらぁ……陛下に殺される……」
「なんだよなぁ」
「ああぁっ!」
指を突き入れながら、唾液で解す、その作業。
そう、彼らにはそれは作業だ。
そのなんともいやらしい作業を見せつけられて、勃起した。
ルゥイギーの布は唾液でシミが出来ており、濡れた唇が分かる。
紅も塗っていないのに、色づいた形のいい唇と赤い舌が白い布の下で蠢いている、その光景。
とても、とてもいけないものを見ている気分だった。
「あ、だめ、挿れ……っ、欲し……!」
「はあ? ダメだろう? このあと散々雑魚兵たちに突かれまくるんだから我慢しろ」
「ふ、ふふふっ」
「……本当性格悪いわ。……ああ、怖い。中でも童貞くんは可哀想だなぁ……初めての穴がこれだと思うと同情で涙出ちゃう。女の膣じゃあ満足出来ない体になるんだからなぁ……可哀想可哀想」
「ひっ、あ!」
ずるり、と指が抜かれる。
ビクビクと肩を痙攣させるルゥイギー。
ああ、尻穴を指で突かれる気持ちよさを知るヒオリにはよく分かる。
あれではまったく、足りない。
あんなところで抜かれたら腰がガクガク揺れ、穴の入り口がギュウと縮む。
お腹の奥が切なくて物足りなさで悲しくなる。
足の爪先までピンと張り詰めて、よだれが耐えられず口の端から溢れ、欲しくて、欲しくて……。
「あっ、っあ……あっ……!」
「さぁて、ひとまずは出来た。集めてくるからここでいい子にしてろよ。ああ、勝手にイカないように締めとくか」
「あっ、や……そんな事しな……!」
クォドがルゥイギーの上着の裾で、今にも達しそうな性器の根元を縛り上げる。
彼もプロなので、その辺りは加減をよく知っている事だろう。
さらに後ろの裾もまくり上げ、ルゥイギーの両腕を素早く一纏めにし、馬車の天井にある装飾品の穴に通した。
世話係の長い裾をこんな事に利用するとは、おそろしい。
(つ、次からまともに見られなくなりそう……!)
お尻は丸出し。
両腕は天井につくほど縛り上げられ、性器は前の裾で縛られる。
顔を隠す布はよだれと涙で染みになり、うっすら助けたところから赤い唇と舌が見えていた。
今のルゥイギーはダメだ。
ヒオリには刺激が強すぎる。
これはいけない、とてもいけない。
こんなのは絶対に。
「ヒオリ様、暇の許可は頂けますよね? ジーさんに言っておいてください」
「! あ、あの、でもやっぱりこんなの……」
「おやおや、ヒオリ様はまだそんな事を? こいつのこんな姿に、そこまで興奮しておられるくせに?」
「っ……」
指摘されて、ズボンがパンパンになっているところを指までさされた。
その通りだ。
ルゥイギーの姿に、覚えている、知っている体は反応した。
そこはガチガチに固まって痛い。
「こ、これ、は……」
「あーあ、染みまで作ってやーらしいーい」
「! ……うっ」
クスクス、と笑われる。
今まで礼儀正しく仕えていた世話係に、はしたない自分を見られ、咎められている。
恥ずかしさで俯き、上着の裾を引っ張って隠そうとするが今更遅い。
恥ずかしさに涙が滲む。
こんな『主人』では、笑われるのも無理はないが……それでも……。
「ヒオリ様はお好きですからねぇ、尻を弄るのが。奥まで突かれて気持ちよくなりたい、とっても卑猥な事が大好きなお方ですから……」
「え! ち、違……」
「またまたぁ、俺たち知ってるんですよ? 俺たちがヤってる時、覗き見して一人で抜いてたでしょう?」
「……!!」
バレていた。
いや、あれだけ毎日のように覗き見ていれば、当然バレる可能性の方が高い。
まして、自慰している間は特に無防備。
知らず声も出していただろう。
「……ぼ、僕は……」
「いいですか、ヒオリ様。あなたは間違ってなんていない。性欲は三大欲求に数えられる、人間が持つ至極真っ当な欲だ」
「で、でも、僕は」
「ああ、貴方はこうやって理路整然を並べられたところで心で納得してくれないんでしたね。なら、自分の体に起きているその現象の説明をしてみてください。そちらの方がお好きなのでしょう?」
「!」
「そう、言葉などで説明出来ない。したところで、貴方は自分でそれを認めるしかなくなる。つまりそういう事だ。貴方を今支配しているモノは、そういう次元のものなのです」
言葉がどんどん奪われる。
クォドの言葉はそれこそ理路整然としていた。
ヒオリでは到底言い負かす事など不可能なほど、自分の体は正直だ。
目をきつく閉じる。
実にシンプルで、簡潔な答えがもう出ていた。
——本能だ。
理路整然と話されても心で否定していただろう。
だがそれはもうとうに覆されている。
あの日、二人が初めて交じり合うところを見て、自慰したあの時から。
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