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召喚獣
しおりを挟む「受付は覚えることが大量だし、やるんなら戦闘系と補助系のスキルもめちゃくちゃ覚えなけりゃならん。お前さんはあれだ、得意なことやこれならできる、ってことはないのか?」
「え! ……え、えーと……そ、そう言われても……あ! 依頼書をずっと待ってることはできます!」
「は?」
エルンが言っていたことは余程変なことだったのか、ギルマスがすごく変な顔をした。
それからエルンのこれまでの人生をかいつまみで説明すると、頭を抱えられる。
おかしいな、変なことは言っていないのだが。
「噂以上に調子に乗ってんな、トリニィのデンゴは」
「確かトリニィのデンゴさんは銀級冒険者ですよね?」
「は、はい! モーヴキングを倒した町の英雄です!」
「つってもモーヴキングは危険度緑、難易度3の中堅どころだからな……」
「銀級なら相性関係なく一人で倒せますよね」
「え……?」
当時は銅級だったデンゴは、モーヴキングを倒して銀級になったトリニィの町の英雄。
けれど、ギルマスとシシリィ曰く「魔獣の危険度と難易度は別で、また冒険者の等級と魔獣との相性も別物」らしい。
たとえば剣士職は難易度が格下の魔獣でも、その種類によっては危険度が跳ね上がる。
その辺りの匙加減もまた、受付が吟味して設定するそうだ。
これはとんでもなく難しい。
だからこそ戦闘系や生産系の職業で実践経験や魔獣の知識、アイテムの知識、分析する冷静さなども身につけるのだ。
(う、受付すげー……!)
ちょっと想像していた以上にエリートでは?
「ふむ……まあ、なんにしても今の話を聞く限り——研修は実戦だな」
「学ぶことが多そうですね、エルンさん! でも大丈夫、わたしもお手伝いしますよ!」
「え、え?」
「実戦で職業とスキルを増やせ。やりたいことが明確なら、それを優先させてもいいが……お前具体的になにになりたいとか、希望はあるのか?」
「え、ええと……ひ、人の役に立つような、デンゴみたいな冒険者になりたいな、って……思って……」
微妙だな、とギルマスに言われてしまう。
目的がふんわりしているのだ。
確かに。
具体的に、なんの職業を、とは考えていなかった。
まず、剣士、槍、弓、魔法……あらゆることを学び、自分の得意なこと、苦手なこと、これを極めたいと思うようなものを探すこと。
ギルマスにキッパリと指示され、縮こまる。
おっしゃる通りすぎて。
「では、今日は寮の方でお休みください。タータ! 男子寮へ案内してください!」
「みゅーみゅーん!」
「! 召喚獣……!?」
シシリィが赤い石から呼び出したのは、危険度青、難易度1の雑魚雑魚の雑魚魔獣、ラッキーエアリス。
雑魚雑魚の雑魚だが遭遇率は0.02%の超レア魔獣であり、出会えればいいことがある、と言わている。
もふもふの首をカカカカカと脚でかいて、全身プルプルと震わせて見上げてくるつぶらな瞳。
「ラッキーエアリス……ほ、ほんもの?」
「うちのギルドの星緑樹から生まれた子なんです。殺すのも可哀想ですから、わたしの契約獣にしたんです。名前はタータ。よろしくお願いします!」
「あ、よろしく……」
がぶ。
「「「…………」」」
噛まれた。
なかなか盛大に。
ぷしゃ、と血が出る。
「タ、タータ! なんてことするの! 大丈夫ですかエルンさん!」
「だ、大丈夫です……いや、なんかびっくりした方がでかくて」
そう、びっくりして痛がることも忘れた。
あ、じわじわ痛くなってきた、と思ったら、今度はシシリィの手が噛まれた手を覆う。
(おおおおぉーーーー!? シ、シシリィさんの手ーーーー!)
もう触れることなど叶わないと思っていたシシリィの手が、エルンの手を握る。
温かな光に包まれ、ハッとすると、噛まれた怪我は消えていた。
「『巫女見習い』の職業スキル、『手当て』です。『小治癒』より軽い怪我しか治せないんですが……まだ痛みますか?」
「だ、大丈夫です! ありがとうございます!」
「よかったです! ……タータ?」
「みゅーん……」
明らかに「だって男なんて嫌いなんだもん」と言わんばかりの顔!
いや、確かにシシリィとエルンならシシリィの方がいいに決まっている。
エルンだってシシリィと、ラッキーエアリスならシシリィの方がいい。
いくらラッキーエアリスがレア魔獣とはいえ、だ。
「だ、大丈夫てす。シシリィさんが治してくれましたし」
「本当にすみません。お詫びにあとで夕飯ご馳走させていたたきますね」
「っ! え、そ、それは……えっと……シシリィさんと、ごはん……?」
「はい、一緒に食べましょう!」
「みゃ!?」
「!」
怪我の功名!
タータも「なんてこと!」みたいな顔をしている。
原因を作ったのはタータなので、自業自得だ。
「でもまずは寮のお部屋でお休みください。お疲れでしょうし、今後生活する場所ですから」
「は、はい」
「タータができないなら儂が案内するしかないか?」
「みゅ、みゅーみゅ、みゅーーーっ!」
「そうか、そうか。じゃあよろしく頼むぜ」
毛を逆立てて「やる、できる」と言わんばかりのタータ。
なにを言っているのかわからないけどわかる、という不思議な経験である。
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