「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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夢を支える人

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 こうして、エルンは丸一日かけてありとあらゆる『見習い』職を得た。
 どれもこれもまだまだレベルは1や2ばかり。
 けれど、今までの冒険者人生でこれほど充実した日はなかった。
 あまりにも楽しくて、ギルマスに「そろそろ上がるぞ」と言われるまで夢中になってしまったほどだ。

「さて、あらかた『見習い』は得られたな。どうだ、やってみて。しっくりくる職業や、極めてみたい職業はあったか?」
「えっと、戦闘系はあんまり……。でも、『魔獣博士見習い』は楽しかったです! 今まで知らない魔獣がこんなにたくさんいたなんて思わなくて……!」
「サポート職か。ああ、いいな。事務員は何人いてもいいからな。じゃあ明日から図書館で魔獣の勉強すっか?」
「はい!」

 事務。
 ギルドは買取やオークションなどで、金銭を取り扱うことも多い。
 そういう仕事をできる人間はいくらいても困らないからと、魔獣の勉強以外に経理の勉強も勧められる。
 実際計算ができれば冒険者ギルドに限らず、どこへ行っても重宝されるだろう。
 ありがたい。
 本来であれば、貴族院などで学ぶ内容を働きながら襲われるなんて。
 バチが当たりそうだ。

「あ、いたいた、エルンくん!」
「朝に言ってた子たちが、みんな【限界突破】を希望しているの。来てもらってもいいかしら?」
「はい!」

 夕方になり、夜の部の受付さんたちと交代の時間帯。
 その時間を利用して、朝に話した人たちが集まってくれたらしい。
 案内されたのは受付カウンターの側にある相談スペース。
 そこに三人の美少女が座っていた。
 一人は金髪碧眼のエルフ。
 一人は銀髪青眼の巫女。
 一人は黒髪赤目の魔人族の少女。
 武器は刃を円形にした半月刀。
 話に聞いていたのはエルフと騎士志望の貴族の少女だけのはずだが……。

「えっと……」
「それじゃああなたたち、自己紹介して」

 と、受付嬢のお姉さん……モニアさんに促され、彼女たちは立ち上がる。
 皆とんでも無く可愛い。

「ワタシはエルフ族のエナトトス。エナと呼んでください」
「私はケイト・ジークティリア。ジークティリア侯爵家の三女だ」
「ウチは魔人剣士のシャクティア。ティアって呼んでぇー!」
「は、初めまして、エルンと申します」

 座って、とやはりモニアさんに促されて着席する。
 三人ともとても可愛くて、直視するのを戸惑うほどだ。

「ええと、エナさんとケイトさんのことは聞いているんですけど……」
「ああ、ウチね? キミの噂を聞いたから、ウチももしかして魔法が使えるようになるんじゃないかと思ってさぁ」
「? 魔法を?」
「ウチ、魔人族なのに魔法が使えないんだぁ。おかげで完全に前衛に回されちゃってさぁ。いやね、前線で魔獣ぶった斬んのも嫌いじゃないんよ? けどさー、ウチん実家は魔法使い家系でウチだけ物理特化じゃん? 憧れがないわけでもないんよ」

 なるほど。
 頷くと、「それから」と明るい笑顔がなりを潜める。

「ウチ、今銀級迷宮ロジドズスラに入ってんだけど、硬い敵が多くて五層から進めなくなってんだぁ。せめて身体強化や武器強化が使えればって、最近そればっか考えちゃって。パーティメンバーを探すしかないんかなー、ってモニアさんに相談したら、キミの話を聞いたってわけ」
「そうだったんですね……」

 確かにそれは悩ましい。
 今まではソロで進めていた、というのも驚きだが。
 とにかく前進も後退もできない現状を打破すべく、シャクティアことティアはエルンに希望を託したいらしい。

「わかりました。ではやってみましょう」
「よろしくお願いします」
「よ、よろしく頼む!」
「うん! お願い!」

 みんなソワソワとしていたが、真ん中に座る銀髪青眼の美少女、ケイトは特に顔が切々としている。
 こんな美少女たちの手を握るのは、自分なんかには恐れ多い気がするが……これは仕事だ。
 まずはエナトトスこと、エナのステータスにある『装飾師見習い』の上限レベルを20に上げる。
 次にケイトの『騎士見習い』を上限レベル20に。
 最後にティアの『魔法使い見習い』を上限レベル20にして——。

「終わりました、どうですか?」
「っ! 出ました! 取得可能職に『装飾師』が!」
「私も……私も……『騎士』が……『騎士』が出た!」
「ある! ウチにも『魔法使い』が出たよ! 見習いをレベル20にしたら……取得できるかも!」
「あ……あっ……あああっ……うあああああっ!」

 ギョッとした。
 突然ケイトがボロボロと泣き出して、テーブルに突っ伏したのだ。
 左右にいた二人も驚いた顔をしている。
 ガチ泣きだ。
 さすがのエルンも困惑した。

「っ——エルン殿!」
「ふぁあ!?」
「ありがとう! ありがとう! このご恩はいつか、いつか必ず返す! あなたのおかげで、騎士に——」

 ぼろ、と……大粒の涙が落ちる。
 彼女、ケイトは騎士の家。
 けれど騎士の職に才能・適性がないとされて冒険者でその日暮らし。

(きっと、本当に辛かったんだろうな……)

 憧れて、憧れて、焦れるような日々には覚えがある。
 手を握られて、涙や鼻水を垂れ流しにしながら喜ぶケイトに目を細めた。
 役に立っている。
 エルンは、人の役に。

「あ——ありがとう、ありがとう……」
「頑張ってください。もし、レベル20でも『騎士』取得ができなければ……30まで上げてみればいいんです! 諦めないでください!」
「! うん……うん! 諦めない! ありがとう!」

 自信がついた。
 自分には、人の夢を支える力がある、と。
 そして彼女は、きっと素晴らしい騎士になるだろう、と。
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