「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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お昼ご飯

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 その翌日、ケイトたちの話を聞いた冒険者が数人、エルンに相談に現れた。
 彼らも冒険に行き詰まっていたり、本当はやりたい職業が他にあったり事情のある冒険者。
『見習い』の上限を20に上げ、喜んでもらうのは本当にやりがいを感じる。
 しかし、それだけで満足してはならない。
 なにより、自分自身が疎かになっているのだ。
 ギルドの図書館で魔獣について学んだり、冒険者たちの役に立つべく職業やスキルについても知識を広げ、深めた。

 一週間後……。



「エルンさん、お昼一緒に食べませんか? ご報告したいことがあるんです」
「シ、シシリィさん! も、もちろんです!」
「みゅーん」

 タータを肩に乗せたシシリィが、笑顔で近づいてきて背がピーンと伸びる。
 最近ギルド内にも見かけなかったシシリィ。
 そのせいなのか、ますます可愛らしく見える。

「おお、それなら儂も話がある。応接間で食うか」
「父さんも?」
「…………」

 シシリィと二人きり、では、ないらしい。
 いや、タータがいた時点で二人きりとは言い難いのだが。

(でもギルマスの話ってなんだろう? 怖いな……もしかして、今度こそお城に実験体として監禁? ま、まさかね?)

 その昼。
 食堂から定食をトレーに載せて応接間に向かうと、シシリィがすでにお弁当持参で待っていた。
 エルンが入ってきたのを見ると、ニコッ、と微笑まれる。

(か——かわいい!)

 対面でソファーに座ると、シシリィの横に眠っていたタータが、なぜかわざわざシシリィの膝の上に移動する。
 挙句、エルンに対してニヤ、と笑う。
 え、なにこれ見せつけられてる?

(ラッキーエアリスは知性が高いって書いてあったけど、本当に頭いいな)

 正直賢いというより小賢しい気はする。

「エルンさん、食堂の定食ですか?」
「あ、は、はい。自分、料理作れないので」
「そうなんですか? ご実家ではどうされていたんです?」
「あー、幼馴染の家が宿屋だったので、毎日掃除や選択を手伝ってまかないを食べさせてもらってました。俺、生まれてすぐ魔獣大量発生スタンピードで両親が死んでしまってて……」
「まあ……」

 宿屋の主人とその奥さんが、ちょうどエルンと同じ年に子どもを授かり、「一人見るのも二人見るのも一緒だよ!」と豪快に引き取って育ててくれたのだ。
 両親が魔獣大量発生で亡くなったことは、物心ついた頃に聞かされた。
 幼馴染のショーエは宿を継ぐため、冒険者にはならず『家事師』や『料理人』の職業を取得して「いつかお前が金級になったら泊まりに来て宣伝してくれよな!」と親指を立ててくれるほど気のいいやつだ。
 彼の応援があったからこそ、エルンは二年も花開かない冒険者生活を続けられたと言える。
 親父さんや女将さんには、正直「デンゴは調子に乗ってるから、あんな奴に憧れるのはやめときな」と言われていたけれど。

「わたしの母も、わたしが小さな頃に王都の近くで起こった魔獣大量発生で名誉の戦死を遂げたんです」
「!」
「それから父は、二度と魔獣大量発生で冒険者が死なないように——ギルドを今の形にしました。実際五年前にあの星緑樹で魔獣大量発生が起こったんですけど、多くの冒険者、駆けつけた騎士団、父の指揮のおかげで死者ゼロのまま鎮静化することに成功したんです。母の死は悲しいけれど、ちゃんと礎になっているのだと思いました」
「…………」

 ここからも星緑樹は見える。
 ギルマスは本当にすごい人だったんだな、と、魔獣の知識を増やした今ならそれがわかった。
 正面にいたシシリィが、突然立ち上がってタータを抱いたままエルンの隣に座る。
 近い。

「え、あ、あの、シ、シシリィさん?」
「報告したいことがあるんです。わたし、最近コロシアムの方で『巫女見習い』のレベルを上げていました。ちょっと大変でしたけど、やっぱり『見習い』は必要経験値が少なかったおかげで無事にレベル20カウンターストップまで上げられましたよ!」
「え! もう!? すごい! おめでとうございます!」

 シシリィは母親と同じ『聖女』職を目指していたはず。
 けれど才能がなくて『聖女』に至る『巫女』の職業を取得できずにいた。
 けれどエルンの【限界突破】で『巫女見習い』のレベルを20まで上げたということは——。

「はい、エルンさんのおかげで、職業『巫女』を得ることができました! これで『巫女』をレベル20まで上げて、スキル【大回復】を覚えることができれば、きっとその上位職である『聖女見習い』を出現させることができる……!」

 胸に手を当てて、目を閉じるシシリィ。
 色々な苦労を、思い出しているに違いない。
 大きな瞳を開くと、エルンの手を握る。
 驚いて「ひゅ」と息を呑む。

「わたし、きっと回復役としての才能はないんだと思います。だから、もしかしたら『聖女見習い』も、エルンさんにレベル上限を上げてもらわなければいけません。……そうなったら、また、お願いしてもいいですか?」
「もち、もちろんです!」

 そんなのは当たり前だ。
 即答して頷く。

「俺、色んな人に、【限界突破このスキル】を褒められるようになって思ったんです。俺のスキルはきっと、本当はこうやって使うんだろうって。それを教えてくれたのはシシリィさんだ。シシリィさんの役に立てるなら、俺、なんでもやります!」
「エルンさん……」
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