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【限界突然】の固有スキル
しおりを挟むそれになにより真剣なシシリィの眼差しには、それだけ彼女の『聖女』への真摯な気持ちがこもっていた。
それを受け止めて、恩返ししたい。
シシリィには、利用されても構わないとすら思う。
「え、なんでもはしなくていいですよ」
「うっ」
あっさり拒否られた。
「エルンさんは、まず自分のことを優先してください。あなたの固有スキルは世界初なんですから」
「え、え?」
「あれ? 父から聞いてませんか? 城の方でも記録を確認したそうですが、【限界突破】というスキルは世界初だそうです。金級固有スキル確定おめでとうございます」
「き、金級……」
誰が使うんだよ、そんなスキル。
そうバカにされ続けてきたスキルが、世界初の金級固有スキル。
信じ難い。
そんなエルンの横で、シシリィはお弁当を引き寄せて、フォークで卵焼きを持ち上げる。
「はい、あーん」
「え!」
「ご飯食べましょう。卵焼きはわたしが作りました」
「え! シ、シシリィさん、お弁当、手作り!?」
若干、言葉が不自由になった。
仕方ない、そのくらい動揺してしまったのだ。
この可愛らしいお弁当が、シシリィの手作り。
まあ、シシリィにしか作れないだろう、こんな色とりどりのお弁当は。
まさかその中のおかずの一つを食べさせてもらえると思わず、盛大に動揺してしまった。
「手作りですよ」
「!」
「父の」
「…………。ギルマスの」
「って言うとほとんどの人が驚くんですけど、父はわたしを育てるために料理を一から勉強してくれたんです。父がわたしのために作ってくれたものだから、他のおかずはあげません。わたしのです。でも、卵焼きは私が作ったものなのでエルンさんにあげます」
「!」
はい、と改めて差し出される。
シシリィが作った、卵焼き。
恐る恐る口を開ける。
他のおかずは、ギルマスがシシリィのために作ったものだからもらえない。
いや、それはとてもよくわかる理屈だ。
むしろ当然だと思うし、それでいいと思う。
というか、そのおかげでシシリィの手作り卵焼きを食べられるのだからありがたい。
「い、いただきま——」
「みゅーん!」
「あ! こら、タータ!」
「おう、待たせたな…………?」
タイミングとは、重なるもので。
シシリィの卵焼きはタータに下から奪われ、隣に座っている状況を入ってきたギルマスに確認され……気持ちは怒ればいいのか焦ればいいのか悲しめばいいのか、もうめちゃくちゃな情緒と化す。
「どうしたんだ?」
「タータがエルンさんにあげた卵焼きを食べてしまったの」
普通に会話すんの?
「タータはやきもち焼きだな。エルン、シシリィの卵焼き、儂の弁当に入ってるけど食うか?」
「だ、大丈夫です」
ギルマスの「あーん」はさすがに厳しい。
心を殺す覚悟で挑まなけばならないというのに、その準備がなにひとつできていない状態だ。
そうか、とあっさり引き下がってくれて本当によかった。
「じゃあまあ、食いながらで構わんから聞いてくれ。お前さんによってレベル上限が上がった儂とシシリィ、『見習い』のレベルを20まで上げた結果報告なんだが——」
「は、はい」
シシリィは『巫女見習い』、上限20まで上げた結果、無事に職業『巫女』を取得した。
彼女の目標は“母のような聖女”であるため、次は取得した『巫女』をレベル20まで上げ、スキル【大回復】を取得して職業『聖女見習い』を取得する。
次にギルマス。
ギルマスがレベル上限を上げたのは職業『剣士見習い』。
「俺はすでに『剣士』とその上位職である『剣豪見習い』、『剣豪』、『大剣豪』、『剣聖見習い』まで取得している。まずこれを前提として覚えておいてくれ」
「あ、ハイ」
パネェ。
さすが金級ギルドのギルマス、パネェ。
あまりの高位職、最高職一覧。
この国で『剣聖見習い』は三人しかおらず、『剣聖』にはその中の誰も到達していない。
その『剣聖』に大手をかけている三人のうちの一人が、よもや目の前にいるとは。
「で、『剣士』はレベル42だった」
「す、すごく高いですね!」
「今は52だ」
「…………。え?」
最初なにを言っているのかわからず、頭の中で言葉にされたレベルを思い浮かべてみた。
意味がわからない。
なので、改めて聞き直してしまった。
この世界——この国に限らず、中位職とはいえレベル40台は高レベルだ。
そうなる前に、上位職を取得して職を乗り換える。
だからみんな、レベルは20~30が平均。
上位職になればなるほど必要経験値は上がり、レベルも当然上がりづらくなっていく。
「いいか、『剣士見習い』のレベルを上げたら、『剣士』のレベルも上がったんだ。言っておくが儂ぁ、設定してる職業は『剣聖見習い』であって『剣士』じゃねぇ。『剣士見習い』のレベルを上げるために、一時的に設定して、迷宮やコロシアムでレベル上げした結果、『剣士』までレベルが上がってたんだ」
「……え、あ……そ、それって、あの……まさか……」
「おそらくな」
エルンの予想を察してか、ギルマスが白米を箸で摘んで口に入れる。
肯定されてしまった。
「……女神は人類のケツを叩きにきたのかもしれんし、もしかしたら、なにかとんでもねぇ厄災の前触れかもしれん。……ともあれ、今はまず自分のことを優先して構わん。お前自身を守るためにも、だ」
「は、い……」
絞り出すように返事をした。
定食の味が全然わからなくなってしまった。
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