「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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騒動 2

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「はっ、白銀級……!?」

 白銀級——上から二番目の級。
 その上には白金級しかない。
 対するデンゴは銀級。上から四番目の級。
 今、デンゴが進級を断られている程度には、条件が厳しく進級は大変だ。
 馬鹿にして、剣まで抜いた挙句年下の少女は自分より階級が上とあっては、デンゴも面目丸潰れだろう。
 怒りで震え、シシリィが背中から退けるとまた剣を構えた。

「それ以上暴れるようなら、ギルドカードを返納していただきますよ」
「んっだとぉ!」
「冒険者とは自営業。自由職。富と栄光、名誉のために、迷宮を踏破し魔獣を討伐し、国と民に認められるほど名を売ればその態度も許されるでしょう。ですが、今のあなたはただの銀級冒険者。金級に進級する条件も満たしていないくせに、過去にモーヴキング一頭を倒した程度で調子に乗った痛い人です。自覚もなく暴力でなんとかなると思っているのなら、同じく暴力で対応させていただきますが、それでもよろしいですか?」

 隣にいたモニアがシシリィのカウンターから剣を取り出す。
 それを「はい、シシリィ」と笑顔で手渡した。
 挙句、「コロシアムの予約入れとくか?」と逆隣の受付、ジンシさんが声をかける。
 コロシアムは決闘でも使わられることがあるが、それには予約が必要だ。
 なので、それを言っているのだろう。
 いやいや、誰も止めないのか。
 あまりのことに一人右往左往するエルン。

「おいおい、どこの田舎者だ?」
「どうしたんだ?」
「シシリィさんに喧嘩売ったみたいだぜ」
「マジかよ」
「もしかしてシシリィさんがギルマスの娘だってことも知らねーんじゃねーの?」
「親子揃って『剣聖見習い』だっつーのに」
「逆に『剣聖見習い』の実力が見れたり……しねーか。一瞬で終わるだろうな」
「ま、田舎者にはいい洗礼だよ」
「無知は怖いねぇ」

 くすくすと笑い、デンゴを蔑んだ目で見る冒険者もいた。
 シシリィが剣を持っただけで「ああ、終わりだな」と言わんばかりに野次馬するのをやめて、自分の用事を果たしに移動し始める者も。
 それほどまでに実力に差があるのだろう。
 デンゴが今、どの職業でどんなレベルなのかはわからないが、周囲の陰口に顔が赤くなっていく。

「ぐっ……くっ!」
「金級進級試験を受けたいのであれば、貢献度ポイントを貯めてくださいね。ジンシさん、依頼書を紹介してあげてください。『大剣士』『弓士』『魔法使い』の三人組パーティー、達成難易度は4から6、銅級のグヘフ迷宮か、ジャッズル迷宮のものが好ましいかと思います」
「了解しました。ではこちらへどうぞ。依頼をご案内します」

 ジンシのところにいた冒険者が「ぷっ」とデンゴを笑って去っていったのを確認して、シシリィがテキパキと指示を出す。
 モニアが「ああいうのって女と見れば、すぐ怒鳴るのよ。小物よねぇ」と小声で言ってる。
 なんということだろう。
 エルンの故郷の英雄。
 エルンの長年の憧れの人が、王都の金級ギルドでは『小物』。
 まだ怒り冷めやらぬ、とばかりのデンゴ。
 体を震わせ、怒りを必死に押さえ込もうとしている。
 だが、エルンとデンゴの目が合う。
 見つかった。

「て、てめぇ、エルン! なんでてめぇがここにいやがる! なんだその目は! 俺を馬鹿にしてんのか!」
「え! 違! そ、そんなこと——!」

 カウンターを乗り越えようと、手と足をかけるデンゴ。
 その首、目先、そして後頭部。
 周囲がエルンですらわかる殺気に包まれる。

「————」

 背後からエナトトスがデンゴの頭を弓矢で狙い、デンゴの右カウンターの上にケイトが槍を構えている。
 さらに左隣にシャクティアの円型剣がデンゴの首に添えられており、エルンとデンゴの間にはシシリィが剣を抜いてその額に剣先を突きつけていた。
 他にも、この数日でエルンが【限界突破】のスキルで『見習い』上限を上げて、会得したかった職業を出現できた数名の冒険者が武器を手に周りを囲っている。
 誰もがその目に一切の慈悲もない。
 いつでも殺す。
 そう言わんばかりの目だ。

「痛い目に遭わないとわからない人ですか?」

 静まり返ったギルド内に、淡々とした声。
 猫の獣人のギルド施設内の案内役、ニーチだ。
 エルンが初めてここを訪れた時に、応接間へ案内してくれた親切な獣人。

「シシリィさん、どうでしょう? やはりコロシアムの方にご案内しては。貢献度ポイントはコロシアムで『闘士』として、アルバイトしていただくだけでも貯めることができますし」
「まあ、それはよい考えですね、ニーチさん。いかがでしょうか、デンゴさん。『闘士』のアルバイト、お受けいただけませんか? お受けいただけるのでしたら、一日の貢献度ポイントに二百ポイントおつけしますよ☆」

 ちなみにエルンが教わったコロシアムで働く『闘士』は、だいたい経験値稼ぎ、貢献度稼ぎ、賞金稼ぎなど冒険者の、ていのいいアルバイト。
 経験値稼ぎの『闘士』は日々、強い魔獣と戦うことができ、貢献度稼ぎの『闘士』は魔獣や『闘士』同士のトーナメントに出場して、入場料を支払ったお客さんを楽しませる。
 賞金稼ぎの『闘士』はトーナメント専門。
 必ず参加賞金がもらえるだけでなく、優勝すればお客さんが賭けた総額の一割を、優勝賞金としてもらうことができる。
 ちなみに『闘士』の一日の貢献度ポイントは百ポイント。
 普通に高い貢献度ポイントの依頼をこなした方が、ずっと簡単だろう。
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