14 / 51
騒動 2
しおりを挟む「はっ、白銀級……!?」
白銀級——上から二番目の級。
その上には白金級しかない。
対するデンゴは銀級。上から四番目の級。
今、デンゴが進級を断られている程度には、条件が厳しく進級は大変だ。
馬鹿にして、剣まで抜いた挙句年下の少女は自分より階級が上とあっては、デンゴも面目丸潰れだろう。
怒りで震え、シシリィが背中から退けるとまた剣を構えた。
「それ以上暴れるようなら、ギルドカードを返納していただきますよ」
「んっだとぉ!」
「冒険者とは自営業。自由職。富と栄光、名誉のために、迷宮を踏破し魔獣を討伐し、国と民に認められるほど名を売ればその態度も許されるでしょう。ですが、今のあなたはただの銀級冒険者。金級に進級する条件も満たしていないくせに、過去にモーヴキング一頭を倒した程度で調子に乗った痛い人です。自覚もなく暴力でなんとかなると思っているのなら、同じく暴力で対応させていただきますが、それでもよろしいですか?」
隣にいたモニアがシシリィのカウンターから剣を取り出す。
それを「はい、シシリィ」と笑顔で手渡した。
挙句、「コロシアムの予約入れとくか?」と逆隣の受付、ジンシさんが声をかける。
コロシアムは決闘でも使わられることがあるが、それには予約が必要だ。
なので、それを言っているのだろう。
いやいや、誰も止めないのか。
あまりのことに一人右往左往するエルン。
「おいおい、どこの田舎者だ?」
「どうしたんだ?」
「シシリィさんに喧嘩売ったみたいだぜ」
「マジかよ」
「もしかしてシシリィさんがギルマスの娘だってことも知らねーんじゃねーの?」
「親子揃って『剣聖見習い』だっつーのに」
「逆に『剣聖見習い』の実力が見れたり……しねーか。一瞬で終わるだろうな」
「ま、田舎者にはいい洗礼だよ」
「無知は怖いねぇ」
くすくすと笑い、デンゴを蔑んだ目で見る冒険者もいた。
シシリィが剣を持っただけで「ああ、終わりだな」と言わんばかりに野次馬するのをやめて、自分の用事を果たしに移動し始める者も。
それほどまでに実力に差があるのだろう。
デンゴが今、どの職業でどんなレベルなのかはわからないが、周囲の陰口に顔が赤くなっていく。
「ぐっ……くっ!」
「金級進級試験を受けたいのであれば、貢献度ポイントを貯めてくださいね。ジンシさん、依頼書を紹介してあげてください。『大剣士』『弓士』『魔法使い』の三人組パーティー、達成難易度は4から6、銅級のグヘフ迷宮か、ジャッズル迷宮のものが好ましいかと思います」
「了解しました。ではこちらへどうぞ。依頼をご案内します」
ジンシのところにいた冒険者が「ぷっ」とデンゴを笑って去っていったのを確認して、シシリィがテキパキと指示を出す。
モニアが「ああいうのって女と見れば、すぐ怒鳴るのよ。小物よねぇ」と小声で言ってる。
なんということだろう。
エルンの故郷の英雄。
エルンの長年の憧れの人が、王都の金級ギルドでは『小物』。
まだ怒り冷めやらぬ、とばかりのデンゴ。
体を震わせ、怒りを必死に押さえ込もうとしている。
だが、エルンとデンゴの目が合う。
見つかった。
「て、てめぇ、エルン! なんでてめぇがここにいやがる! なんだその目は! 俺を馬鹿にしてんのか!」
「え! 違! そ、そんなこと——!」
カウンターを乗り越えようと、手と足をかけるデンゴ。
その首、目先、そして後頭部。
周囲がエルンですらわかる殺気に包まれる。
「————」
背後からエナトトスがデンゴの頭を弓矢で狙い、デンゴの右カウンターの上にケイトが槍を構えている。
さらに左隣にシャクティアの円型剣がデンゴの首に添えられており、エルンとデンゴの間にはシシリィが剣を抜いてその額に剣先を突きつけていた。
他にも、この数日でエルンが【限界突破】のスキルで『見習い』上限を上げて、会得したかった職業を出現できた数名の冒険者が武器を手に周りを囲っている。
誰もがその目に一切の慈悲もない。
いつでも殺す。
そう言わんばかりの目だ。
「痛い目に遭わないとわからない人ですか?」
静まり返ったギルド内に、淡々とした声。
猫の獣人のギルド施設内の案内役、ニーチだ。
エルンが初めてここを訪れた時に、応接間へ案内してくれた親切な獣人。
「シシリィさん、どうでしょう? やはりコロシアムの方にご案内しては。貢献度ポイントはコロシアムで『闘士』として、アルバイトしていただくだけでも貯めることができますし」
「まあ、それはよい考えですね、ニーチさん。いかがでしょうか、デンゴさん。『闘士』のアルバイト、お受けいただけませんか? お受けいただけるのでしたら、一日の貢献度ポイントに二百ポイントおつけしますよ☆」
ちなみにエルンが教わったコロシアムで働く『闘士』は、だいたい経験値稼ぎ、貢献度稼ぎ、賞金稼ぎなど冒険者の、ていのいいアルバイト。
経験値稼ぎの『闘士』は日々、強い魔獣と戦うことができ、貢献度稼ぎの『闘士』は魔獣や『闘士』同士のトーナメントに出場して、入場料を支払ったお客さんを楽しませる。
賞金稼ぎの『闘士』はトーナメント専門。
必ず参加賞金がもらえるだけでなく、優勝すればお客さんが賭けた総額の一割を、優勝賞金としてもらうことができる。
ちなみに『闘士』の一日の貢献度ポイントは百ポイント。
普通に高い貢献度ポイントの依頼をこなした方が、ずっと簡単だろう。
21
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる