「【限界突破】なんてやばいスキル誰が使うんだ(笑)」と言われて放置されてきた俺ですが、金級ギルドに就職が決まりました。

古森きり

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反撃の狼煙

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「怖いですか?」
「あ……えーと、はい」

 エナトトスが微笑む。
 怖いといえば怖いに決まっている。
 けれど、それ以上にここに立っていることが信じられない。
 数ヶ月前まで、自分はこの町の冒険者ギルドで闇キノコを生やしていたのだ。

(シシリィさんに出会ってから——)

 多くのことを学ぶことができた。
 そして色々、識ることも気付くこともできた。
 自分にできることも増えた。
 リエマユという強力で、そしてエルンと同じくもっと外の世界を見せてあげたい。
 そのために、リエマユはエルンと契約したのだ。
 エルンだって、もっともっと多くのことを知りたいし体験してみたいし、人の役に立ちたい。
 もっと戦えるようになりたいし、エルンの中の“夢”はシシリィの隣に——横に立ちたい。
 そのためには。

「もっと、役に立ちたいし……もっと強くなりたい。でも、俺はまだまだ弱いです。怖いけど、自分にできることを知ることができましたから、俺は最後まで戦いたいです」
「エルンさん……」
「はい、エルンさんとエルンさんのスキル、期待していますよ!」
「! シシリィさん!」

 きちんと髪や服装、装備を整えたシシリィが隣に現れた。
 昨日の戦いで汚れた姿も凛々しくて格好良かったが、ちゃんと整えてくるあたりやはり“金級冒険者ギルドの受付嬢”らしい。
 にはやはりこの姿でなければ、ということなのだろう。

「エルンさんに『見習い』をいっぱいレベル上限上げてもらったらなんだかすごいのを覚えたので、ちょっと試してきますね。お父さんが来たら引き留めておいてください」
「あ、そ、それってもしかして『剣士見習い』の[剣士見習い卒業の試練]とかですか?」
「はい、そうです。今朝見つけて驚きました。あと[巫女見習い卒業の試練]も出現していたのでこちらも試したいんですけど、大量の大怪我人が出るのは避けたいですからね、先手必勝です」
「え、ええ?」

 先手必勝ってまさか直にベヒーモスを狙うつもりではないだろうな?
 これまでの[卒業の試練]系は、自身が持つその職業の使うのが条件。
 そして、その反動と危険性も思い知ったばかり。
 そう、特に『魔法使い見習い』は魔力切れになると生死に関わる。
『剣士見習い』ならば[身体強化]と[魔力]を用いた技だろう。
 あんな大量の魔獣の群れのど真ん中でそれをやって、ベヒーモスがそれでも倒れなかったら——。

「一人では——!」
「安心しろよな、アタシも行くからな」
「あ、ベリアーヌさん!」
「まったく仕方ねぇ。サポートは任せろ。とにかく出鼻を挫く。ベヒーモスがヤれたなら御の字だが、お前の全力で以ってもあのデカブツは無理だろう。順番でかましていく。まずはシシリィ。そのあと儂が行く」
「いやいや、次はアタシだよな? エド、お前はギルドマスター……指揮官だよな? 自覚しろよな」
「えっ、ええ?」

 シャクティアが「ごめーん、起こしたらすでに[見習い卒業の試練]のこと知ってたー」とエルンの隣に着地した。
 アンジェリィのところにも寄って、様子を確認してきたギルマスが、エルンの提案したアンジェリィの[魔法使い見習い卒業の試練]を用いた[広範囲転移]の詳細などを聞き、自分たちのステータスを確認した結果、自分たちにも[見習い卒業の試練]が出ていることに気づいたという。
 そして、それの効果も。
 あれは破格の効果だ。
 他の職業にも出るというのなら、誰もが[卒業の試練]を使うに決まっている。
 代償も危険性も大きいが、得るものはもっと大きい。
 こんな状況でなければ積極的に[卒業]してほしい。
 だが、指揮系統の上の方が軒並みアンジェリィや[魔法使い見習い卒業の試練]を使った直後のエルンのように倒れて使い物にならなくなるのはいかがなものたろう?

「ではこうしましょう。出鼻を挫くのはわたしの役目。わたしかアンジェリィさんが復活したら折を見てお父さんとベリアーヌさんが[卒業の試練]を使ってみる、という感じで」
「ま、とりあえずはそれしかないだろう。町の住民が一気に王都に転移したことで、ことのヤバさは王都にも知れ渡る。さすがにあれだけやらかせば、騎士団も自分たちの顔のために動かんわけにはいかない。騎士団が来るまでの辛抱だな」
「どれぐらいかかるだろうな?」
「五時間は必要だろう。アンジェリィ並みの魔法使いは騎士団にはいないからな、騎士団の魔法使いをかき集めて集団転移が可能なほどの魔法陣を生成するとなると——」
「そうですね」
「そうだな」

 なるほど、とエルンとしても納得した。
 そしておそらく、そうなると騎士団の魔法使いは軒並み休息を要する形となる。
 だが、騎士団の戦力が入るのは願ってもない。
 冒険者と違って騎士の実力は一定以上に保たれている。
 国家に属する以上、冒険者で言えば金級かそれ以上の実力が必須だからだ。
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